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第2部 5章
6 香水②
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それからレイヴンは話し続けた。
メトワで調香師のところへ行ったこと。
そこで交わした会話。
アリシアが一緒に選んでくれるというので、季節ごとに変えられるよう4種類の香水を作ったこともすべて話した。
レイヴンに令嬢を牽制するようなつもりはない。ただ、アリシアとの楽しい思い出を話せることが嬉しいのである。
レイヴンの喜ぶ話題に触れたこと。それだけは令嬢の狙い通りだった。
「まあ……。4種類ともベースは柑橘系なのですか?柑橘系の香りがお好きなのですね」
令嬢が顔を引き攣らせながら言葉を挟む。
まさかアリシアとの惚気話を聞かされるとは思っていなかったが、自分から話を始めた以上、興味がないような顔もできないのだ。
アリシアからはそんな令嬢の様子が良く見て取れたけれど、レイヴンは気がつかずに笑顔で応じる。
「アリシアが柑橘系の香りが好きなんだよ。だから僕も好きになったんだ」
これに驚いたのはアリシアだ。
レイヴンを見上げ、「ご存知だったのですか?」と呟く。
アリシアと目を合わせたレイヴンは苦笑した。
「さすがに気がつくよ。アリシアはいつも柑橘系の香水を使っているし、僕に贈ってくれた香水やアロマオイルも柑橘系の香りだった。あれはアリシアが僕に身につけて欲しい香りでしょ?」
アリシアの顔がカッと赤くなった。
アリシアは当時その年代で流行っていて、レイヴンが使っていてもおかしくないような香りを選んだだけである。
だけど流行っていた香りは1つだけではない。いくつもある香りの中からあの香りを選んだのは、無意識に自分の好きな香りを選んでいたのだ。
「可愛いなあ……」
呟いてレイヴンがアリシアを抱き締める。
顔を赤らめたアリシアを他の誰にも見せたくない。アリシアの顔を胸に隠しながら、その耳元で話し掛ける。
「レオも柑橘系の香りしか使わないよね。レオも柑橘系の香りが好きなのかな?それともアリシアの為なのか……」
好きな人には好ましい香りだと思われたいものだ。
それと同じように、アリシアを溺愛しているレオナルドなら、アリシアの好みに合わせていてもおかしくない。
そうは思っても少し妬ける。
「お兄様の香りは……、私のせいですわ。私たちがまだ幼い頃、母が甘い香りを使っていたのですが、子どもの頃は不躾でしたから……」
「ああ。アリシアは薔薇とか桃の香りのような、甘い香りは苦手だよね」
アリシアが小さく頷く。
子どもの頃のアリシアが甘い香りを纏った母を見て、あの香りは嫌だと言ったのだろう。
だからレオナルドは甘い香りを使わない。
レイヴンも絶対使わないと、心に決めた。
「あの……。妃殿下が贈られたというのは、以前使われていた香水ですか?あれは、妃殿下が……?」
すっかり存在を忘れられた令嬢が言葉を挟む。
その声を聞いて令嬢のことを思い出したレイヴンは、嬉しそうな笑顔を向けた。
「そうだよ。アリシアが僕の誕生日に贈ってくれたんだ」
「そうですか。妃殿下が……」
またロング・ギャラリーが大きく騒めく。
レイヴンが長年香りを変えなかったのは、アリシアに贈られたものだからなのだと、次の日には社交界中に広まっていた。
メトワで調香師のところへ行ったこと。
そこで交わした会話。
アリシアが一緒に選んでくれるというので、季節ごとに変えられるよう4種類の香水を作ったこともすべて話した。
レイヴンに令嬢を牽制するようなつもりはない。ただ、アリシアとの楽しい思い出を話せることが嬉しいのである。
レイヴンの喜ぶ話題に触れたこと。それだけは令嬢の狙い通りだった。
「まあ……。4種類ともベースは柑橘系なのですか?柑橘系の香りがお好きなのですね」
令嬢が顔を引き攣らせながら言葉を挟む。
まさかアリシアとの惚気話を聞かされるとは思っていなかったが、自分から話を始めた以上、興味がないような顔もできないのだ。
アリシアからはそんな令嬢の様子が良く見て取れたけれど、レイヴンは気がつかずに笑顔で応じる。
「アリシアが柑橘系の香りが好きなんだよ。だから僕も好きになったんだ」
これに驚いたのはアリシアだ。
レイヴンを見上げ、「ご存知だったのですか?」と呟く。
アリシアと目を合わせたレイヴンは苦笑した。
「さすがに気がつくよ。アリシアはいつも柑橘系の香水を使っているし、僕に贈ってくれた香水やアロマオイルも柑橘系の香りだった。あれはアリシアが僕に身につけて欲しい香りでしょ?」
アリシアの顔がカッと赤くなった。
アリシアは当時その年代で流行っていて、レイヴンが使っていてもおかしくないような香りを選んだだけである。
だけど流行っていた香りは1つだけではない。いくつもある香りの中からあの香りを選んだのは、無意識に自分の好きな香りを選んでいたのだ。
「可愛いなあ……」
呟いてレイヴンがアリシアを抱き締める。
顔を赤らめたアリシアを他の誰にも見せたくない。アリシアの顔を胸に隠しながら、その耳元で話し掛ける。
「レオも柑橘系の香りしか使わないよね。レオも柑橘系の香りが好きなのかな?それともアリシアの為なのか……」
好きな人には好ましい香りだと思われたいものだ。
それと同じように、アリシアを溺愛しているレオナルドなら、アリシアの好みに合わせていてもおかしくない。
そうは思っても少し妬ける。
「お兄様の香りは……、私のせいですわ。私たちがまだ幼い頃、母が甘い香りを使っていたのですが、子どもの頃は不躾でしたから……」
「ああ。アリシアは薔薇とか桃の香りのような、甘い香りは苦手だよね」
アリシアが小さく頷く。
子どもの頃のアリシアが甘い香りを纏った母を見て、あの香りは嫌だと言ったのだろう。
だからレオナルドは甘い香りを使わない。
レイヴンも絶対使わないと、心に決めた。
「あの……。妃殿下が贈られたというのは、以前使われていた香水ですか?あれは、妃殿下が……?」
すっかり存在を忘れられた令嬢が言葉を挟む。
その声を聞いて令嬢のことを思い出したレイヴンは、嬉しそうな笑顔を向けた。
「そうだよ。アリシアが僕の誕生日に贈ってくれたんだ」
「そうですか。妃殿下が……」
またロング・ギャラリーが大きく騒めく。
レイヴンが長年香りを変えなかったのは、アリシアに贈られたものだからなのだと、次の日には社交界中に広まっていた。
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