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第2部 5章

12 気分転換③

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 特定の友人を作るのは反対されるかもしれない。そんな気持ちがアリシアにはあった。
 だけどレイヴンは穏やかな顔で、「良いと思うよ」と言ったのだ。
 
 ただ学生時代に比べて友人選びは格段に難しくなっていた。
 王太子妃のアリシアには誰もが良い顔をする。内心アリシアを嫌っている者も、取り入って甘い汁を吸おうとする者も、表面上は友好的だ。
 その中から本当に信頼できる相手を選ばなくてはならない。
 その導入部となるお茶会の招待客は、レイヴンが選んでくれた。

 レイヴンは招待客を慎重に選んだ。
 同窓生を中心に同学年の中から対象になるのは伯爵位以上の高位貴族だ。
 その中で過去にアリシアへ敵意を向けていた者、実家や婚家が財政難に陥っている者を省いていく。まだ結婚しておらず、婚約者のいない者も省いた。
 同級生のほとんどは既に結婚している。
 この年でまだ相手が決まっていないのは、余程本人に問題があるか、レイヴンの側妃を狙っているからだ。そんな女を近づけることはできない。
 
 他に選ぶ基準としては、学園でアリシアと関わりがあった者だ。
 学園内ではほとんどの時間をレイヴン、アリシア、ジェーン、マルセルの4人で過ごしていた。
 だけど日直や何かの係に当たるなど、他の生徒と関わりがなかったわけではない。他の者と討論することもあったし、学園祭や体育祭で力を合わせたこともあった。少しでも人柄を知っている者が良い、という判断だった。

 お茶会にはレイヴンも一緒に出席してくれた。
 出迎えるレイヴンとアリシアに、かつての学友たちは臣下として礼を取る。会話も学生時代のようにとはいかず、硬いままだ。
 初めの内は上手くいかずにアリシアが毎月開催している公務のお茶会のようになった。だけど招待客を少しずつ入れ替えながら何度かお茶会を開く内に、話していて楽しい、信用しても良いと思える相手を数人見つけられたのだ。

「あの方たちとお友達になれるかしら」

 アリシアがそう言うと、レイヴンの行動は早かった。それまでのお茶会は終わりになり、次に開かれたお茶会に招かれたのはアリシアが口にした数名だけだ。その1回だけレイヴンは同席し、次からは参加しなかった。
 彼女たちはそれでアリシアの友人として認められたと悟ったようだ。

 とはいえ、彼女たちに側妃や子どもの話はしていない。それはアリシアの弱味になることだ。
 彼女たちとは親しくなったばかりである。
 どこまで本音を見せて良いのか、まだ探っているところだった。
 


 歌劇オペラの話はお茶会で良い話題になる。
 次のお茶会で話してみよう。
 そう思ったアリシアは、自然に笑顔が浮かんでいた。



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