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第2部 5章
16 2人きりの時間を
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「おかえり、アリシア」
「レイヴン様」
部屋へ戻るとレイヴンが待っていた。
すぐにアリシアの傍へ来て、アリシアを抱き締める。
アリシアもレイヴンの背中に腕をまわしてぎゅっと抱き締めた。
「お日様の匂いがするね」
アリシアの肩口に顔を埋めたレイヴンが囁く。
それは庭園でお茶会をしていたからだ。
日に焼けない様にテーブルにはパラソルが差してあるけれど、日差しを完全に遮るのは難しい。今日は少しだけ日に焼けたと思う。
だけどアリシアは、初夏の日差しが嫌いではなかった。
レイヴンはそのままちゅっちゅっと耳元に口づける。
アリシアはくすぐったさに身を縮めながら、レイヴンの髪に指を絡めた。レイヴンからは爽やかな柑橘系の香りがしている。
レイヴンに想いを告げられ一緒に過ごすようになってから、出来る限り休日は2人きりで過ごしてきた。
だけど今日は友人と過ごしたいというアリシアの願いを聞いて、レイヴンは1人で過ごしていたのだ。
それを想うと申し訳ない気持ちになった。
レイヴンはひとしきりアリシアに口づけ、堪能するとアリシアを抱き寄せたままソファへ向かう。
ソファへ腰かけるとアリシアをひょいと抱き上げ膝の上に乗せた。そのままぎゅっと抱き締められる。
レイヴンの膝に乗せられたアリシアは、すぐにテーブルの書類に気がついた。
「お仕事をされていたのですか……?」
「報告書を読んでいただけだよ。時間がある時に目を通しておこうと思ったんだ」
「何か、私に手伝えることは?」
レイヴンはいつも忙しい。それなのに毎日決まった時間に仕事を終えて戻ってくるのだ。
レイヴンが無理をしていることはアリシアにもわかっていた。
だけどレイヴンはふっと笑うと首を振り、アリシアの頬へちゅっと口づける。
「別に急ぎの仕事じゃないんだ。アリシアが戻って来たんだから、もう仕事は終わりだよ。もっと楽しい話をしよう」
「……それでは、何の話を?」
「そうだね。お茶会は楽しかった?どんな話をしたのか教えてよ」
「まあ!……お茶会はとても楽しかったですわ」
アリシアは恥ずかしそうに視線を伏せると、お茶会のことを話しだした。
その頬は日に焼けたからではなく赤く染まっている。
初めてできた友人の話を興奮して話すアリシアは可愛い。
レイヴンはアリシアの柔らかい声を微笑ましく聞きながら、そっと書類へ視線を向けた。
あの報告書はレオナルドから届いたものだ。
レイヴンは王女の王位継承権について諦めたわけではない。だけど最近は紳士クラブへあまり顔を出さなくなっていた。
あの悪夢を見て以来、夜遅くまでアリシアの傍を離れているのが怖くなったからだ。
稀に行ったとしても、ほんのちょっとだけ顔を出してすぐに帰ってくる。
そんなレイヴンに代わって足繁く通っているのがレオナルドだ。
方針は以前と変わらないので、レオナルドが継承権について直接口にすることはない。
子飼いの貴族たちが話題を持ち出し、煽っていく。
権力で言うことを聞かせるのではなく、思想を植え付けていく。
賛同者が増えるまでに時間が掛かるので焦れったくはあるけれど、着実に増えているようだ。
「レイヴン様」
部屋へ戻るとレイヴンが待っていた。
すぐにアリシアの傍へ来て、アリシアを抱き締める。
アリシアもレイヴンの背中に腕をまわしてぎゅっと抱き締めた。
「お日様の匂いがするね」
アリシアの肩口に顔を埋めたレイヴンが囁く。
それは庭園でお茶会をしていたからだ。
日に焼けない様にテーブルにはパラソルが差してあるけれど、日差しを完全に遮るのは難しい。今日は少しだけ日に焼けたと思う。
だけどアリシアは、初夏の日差しが嫌いではなかった。
レイヴンはそのままちゅっちゅっと耳元に口づける。
アリシアはくすぐったさに身を縮めながら、レイヴンの髪に指を絡めた。レイヴンからは爽やかな柑橘系の香りがしている。
レイヴンに想いを告げられ一緒に過ごすようになってから、出来る限り休日は2人きりで過ごしてきた。
だけど今日は友人と過ごしたいというアリシアの願いを聞いて、レイヴンは1人で過ごしていたのだ。
それを想うと申し訳ない気持ちになった。
レイヴンはひとしきりアリシアに口づけ、堪能するとアリシアを抱き寄せたままソファへ向かう。
ソファへ腰かけるとアリシアをひょいと抱き上げ膝の上に乗せた。そのままぎゅっと抱き締められる。
レイヴンの膝に乗せられたアリシアは、すぐにテーブルの書類に気がついた。
「お仕事をされていたのですか……?」
「報告書を読んでいただけだよ。時間がある時に目を通しておこうと思ったんだ」
「何か、私に手伝えることは?」
レイヴンはいつも忙しい。それなのに毎日決まった時間に仕事を終えて戻ってくるのだ。
レイヴンが無理をしていることはアリシアにもわかっていた。
だけどレイヴンはふっと笑うと首を振り、アリシアの頬へちゅっと口づける。
「別に急ぎの仕事じゃないんだ。アリシアが戻って来たんだから、もう仕事は終わりだよ。もっと楽しい話をしよう」
「……それでは、何の話を?」
「そうだね。お茶会は楽しかった?どんな話をしたのか教えてよ」
「まあ!……お茶会はとても楽しかったですわ」
アリシアは恥ずかしそうに視線を伏せると、お茶会のことを話しだした。
その頬は日に焼けたからではなく赤く染まっている。
初めてできた友人の話を興奮して話すアリシアは可愛い。
レイヴンはアリシアの柔らかい声を微笑ましく聞きながら、そっと書類へ視線を向けた。
あの報告書はレオナルドから届いたものだ。
レイヴンは王女の王位継承権について諦めたわけではない。だけど最近は紳士クラブへあまり顔を出さなくなっていた。
あの悪夢を見て以来、夜遅くまでアリシアの傍を離れているのが怖くなったからだ。
稀に行ったとしても、ほんのちょっとだけ顔を出してすぐに帰ってくる。
そんなレイヴンに代わって足繁く通っているのがレオナルドだ。
方針は以前と変わらないので、レオナルドが継承権について直接口にすることはない。
子飼いの貴族たちが話題を持ち出し、煽っていく。
権力で言うことを聞かせるのではなく、思想を植え付けていく。
賛同者が増えるまでに時間が掛かるので焦れったくはあるけれど、着実に増えているようだ。
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