【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 5章

18 婚約挨拶②

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 暫くは形式的な挨拶や問答が続いた。
 ディアナは伯爵令嬢とはいえこれまであまり社交界へ出ておらず、王族と関わることもなかったので固くなっているようだ。アリシアが話し掛けても硬い笑顔で二言三言ぎこちなく答えるだけである。
 レオナルドが終始会話をリードしているが、それはディアナを気遣ってのことだろう。


「堅苦しいのはそろそろもう良いんじゃないかな?」

 頃合いを見てレイヴンがそう切り出すと、レオナルドが呆れたような表情を見せた。

「今日は正式なご挨拶のはずですが?」

「挨拶はもう済んだだろう。ここからは普通に話そう」

 公的な会話は終わりにして、これからは私的に話そう。
 王太子にそう言われてしまえは従うしかない。

 レオナルドは肩を竦めると息を吐いた。僅かに姿勢が崩れたように見える。だけどディアナはそんなレオナルドの隣でもピシッと固まったままだ。
 アリシアが苦笑を漏らす。

「レイヴン様も、お兄様も。ディアナ嬢が驚いていますわ」

「いえ、そんなことは……」

 アリシアの言葉にディアナが瞳を揺らす。

 そんなに恐ろしいと思われているのかしら。
 アリシアは少しショックだった。


 だけどディアナが居心地の悪い思いをしているのもわかる。
 アリシアとレオナルドは仲の良い兄妹だ。そしてレイヴンとレオナルドは主従としても友人としても親しくしている。この中でディアナだけが新参者なのだ。
 
「まあ、初めから打ち解けるのは難しいよね。ゆっくりいこう」

「ありがとうございます」

 レイヴンが笑いかけるとディアナもホッとしたように笑顔を見せた。

 ディアナからしてみれば、ここはとんでもない空間である。
 グーリッド伯爵は宮廷で役職についているが、取り立てて優秀でも裕福でもない。目立った功績もないので王宮の舞踏会に出ていても王族や公爵から声を掛けられることもないのだ。
 ディアナにとって王太子夫妻や公爵子息のレオナルドは正に雲の上の存在だった。

 それが今、ディアナは王太子妃の私室にいて、すぐ近くで王太子夫妻とレオナルドが談笑している。
 特に王太子妃のアリシアは、ディアナを気遣うように何度も声を掛けてくれていた。

「ディアナ嬢、学園はどうかしら?」

 しばらく経ち、ようやくディアナの緊張が解けて来たところでアリシアに問い掛けられた。
 アリシアはディアナの様子を見ながらタイミングを見計らっていたようだ。
 ディアナはアリシアがどんな答えを求めているのか、探りながら答えを紡ぐ。

「……楽しく通っています。ただ来年はAクラスに入れるように、もう少し勉学に力を入れなければと思っています」

 アリシアたちはディアナがBクラスだと把握しているだろう。だからそれを隠そうとしても仕方がない。
 レオナルドの婚約者として、Bクラスなのは情けないと思われているかもしれないが、ディアナがレオナルドと婚約したのは年末である。そこから次期公爵夫人としての教育を受け始めたけれど、クラスを上げるには時間が足りなかった。
 
 ただディアナもそれで良いとは思っていない。
 婚約者に選ばれた以上は次期公爵夫人として恥ずかしくない結果を残したいと思っていた。




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