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第2部 5章
23 ノティスの様子②
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「ノティスは討論が苦手でね。克服しようと熱心に取り組んでいるよ」
「私も討論は苦手なので、お気持ちは良くわかります」
ディアナはノティスのように討論だけが極端に苦手、ということはない。
だけど伯爵家の次女として安穏と暮らしていたディアナには、それ程熱心に学ぶ必要もなかった。勉学も討論もそれなりにできればそれで良かったのだ。
だけど公爵夫人、ましてや宰相の夫人ともなればそうはいかない。高位貴族の夫人方とやり合うこともあれば、他国の大使と交流を持つこともある。
そんな時に自身の考えをきちんと相手に伝えられること。感情的にならず、相手の考えから取り入れられるところは取り入れ、受け入れられないところは切り捨てられる能力が必要になる。
ディアナもエイムズ子爵夫人やレオナルドの協力の元、弁論能力の強化に取り組んでいた。
「そうだね。力を伸ばすには色んな人と討論をしてみるのが良い。それがノティスの状況に上手くはまったらしい」
苦手を克服する為、ノティスは放課後も学園に残って友人と学習室で討論会を開くようになっていた。数か月経った今は少しずつ改善されてきている。
最初は数人の友人と始めた討論会だったが、最近では参加希望者が増え、多くの生徒が参加しているという。
その為、必然的に多くのクラスメイトと話すことになり、友人の輪が広がった。
「ノティスが入学してからまだ数か月だけど、学園長からは周りに良い影響を与えていると報告を受けたよ。討論会に参加しようと皆が必死に取り組むから、クラス全体の実力が上がったらしい。ノティスが討論を苦手にしているのも良い様に作用したようだ。苦手を克服しようと必死に取り組んでいるから、皆もそれに倣うんだ」
もしレイヴンやカナリーが討論会を開いても、ついて来れるだけの実力者しか集まらなかっただろう。
レイヴンやカナリーは人の上に君臨し、憧れられる存在である。
だけどノティスは違う。
明確に苦手なものがあるノティスはもっと近しく、親しみのある存在なのだろう。
そのノティスが必死に努力しているから、自分も頑張ろうと思える。
「……私もそう思います。お話を聞いていて、私ももっと頑張ろうと思いました。討論会に参加されるクラスメイトの方が羨ましいですわ」
「ディアナ嬢が参加できないことはないと思うよ。参加者のクラスや学年を区切っているわけではないからね」
「ですが、それは……」
悪目立ちする。
これまで1学年のBクラスからしか参加者がいないのだ。
レオナルドの婚約者に選ばれたことを笠に着て、王子に取り入ろうとしていると言われるかもしれない。
「そうだね……。もう少し輪が広がるのを待ったほうが良いかもしれないね」
「ですがディアナ嬢がカナリー殿下と親しいことは知られています。一度王宮でお茶会をしてみるのはいかがでしょうか」
「お茶会?」
「はい。討論会に参加するかは別としても、ディアナ嬢と私たちの繋がりを見せておくのも必要かと存じます」
「……そうだね。それじゃあお茶会を開こうか。人目につくところなら、中央庭園が良いかな」
人に見せることが目的なら、貴族の自由な出入りが許可されている中央庭園が一番良い。
頷き合うレイヴンとアリシアにディアナは動揺していた。
レイヴンは、「カナリーとノティスを呼ぶならアイビスも来たがるだろうな。それならジェイも呼ばないと、何かあると勘繰られるかもしれない」などと呟いている。
それにアリシアが、「パトリシア殿下をお招きするのはいかがでしょうか?殿下はディアナ嬢と同学年ですし」などと答えている。
出てくる名前はすべて王族だ。
「あ、あの……。王子殿下や王女殿下しか招かれないのですか……?」
「ああ、大丈夫。レオナルドは勿論招待するよ」
恐る恐る問い掛けたディアナに、レイヴンが綺麗な笑顔で答える。
だけどそういうことではない。
ディアナは不安そうな表情でレオナルドを見上げると、レオナルドは肩を竦めた。
「平たく言えば、身内だけのお茶会ということかな」
「……身内、ですか?」
「あら、だってディアナ嬢は私のお義姉様になるのでしょう?」
「っ!!」
当然、といった表情のアリシアに、ディアナは息を飲んだ。
王家と公爵家では立場が違う。公の場所で義姉妹として振舞うことはできない。
それでもディアナはアリシアの義姉となり、レイヴンを通じてカナリーやノティスも身内になるのだ。
やはり、とんでもない人と婚約してしまった。
しがない伯爵令嬢のディアナは微かに震えていた。
「私も討論は苦手なので、お気持ちは良くわかります」
ディアナはノティスのように討論だけが極端に苦手、ということはない。
だけど伯爵家の次女として安穏と暮らしていたディアナには、それ程熱心に学ぶ必要もなかった。勉学も討論もそれなりにできればそれで良かったのだ。
だけど公爵夫人、ましてや宰相の夫人ともなればそうはいかない。高位貴族の夫人方とやり合うこともあれば、他国の大使と交流を持つこともある。
そんな時に自身の考えをきちんと相手に伝えられること。感情的にならず、相手の考えから取り入れられるところは取り入れ、受け入れられないところは切り捨てられる能力が必要になる。
ディアナもエイムズ子爵夫人やレオナルドの協力の元、弁論能力の強化に取り組んでいた。
「そうだね。力を伸ばすには色んな人と討論をしてみるのが良い。それがノティスの状況に上手くはまったらしい」
苦手を克服する為、ノティスは放課後も学園に残って友人と学習室で討論会を開くようになっていた。数か月経った今は少しずつ改善されてきている。
最初は数人の友人と始めた討論会だったが、最近では参加希望者が増え、多くの生徒が参加しているという。
その為、必然的に多くのクラスメイトと話すことになり、友人の輪が広がった。
「ノティスが入学してからまだ数か月だけど、学園長からは周りに良い影響を与えていると報告を受けたよ。討論会に参加しようと皆が必死に取り組むから、クラス全体の実力が上がったらしい。ノティスが討論を苦手にしているのも良い様に作用したようだ。苦手を克服しようと必死に取り組んでいるから、皆もそれに倣うんだ」
もしレイヴンやカナリーが討論会を開いても、ついて来れるだけの実力者しか集まらなかっただろう。
レイヴンやカナリーは人の上に君臨し、憧れられる存在である。
だけどノティスは違う。
明確に苦手なものがあるノティスはもっと近しく、親しみのある存在なのだろう。
そのノティスが必死に努力しているから、自分も頑張ろうと思える。
「……私もそう思います。お話を聞いていて、私ももっと頑張ろうと思いました。討論会に参加されるクラスメイトの方が羨ましいですわ」
「ディアナ嬢が参加できないことはないと思うよ。参加者のクラスや学年を区切っているわけではないからね」
「ですが、それは……」
悪目立ちする。
これまで1学年のBクラスからしか参加者がいないのだ。
レオナルドの婚約者に選ばれたことを笠に着て、王子に取り入ろうとしていると言われるかもしれない。
「そうだね……。もう少し輪が広がるのを待ったほうが良いかもしれないね」
「ですがディアナ嬢がカナリー殿下と親しいことは知られています。一度王宮でお茶会をしてみるのはいかがでしょうか」
「お茶会?」
「はい。討論会に参加するかは別としても、ディアナ嬢と私たちの繋がりを見せておくのも必要かと存じます」
「……そうだね。それじゃあお茶会を開こうか。人目につくところなら、中央庭園が良いかな」
人に見せることが目的なら、貴族の自由な出入りが許可されている中央庭園が一番良い。
頷き合うレイヴンとアリシアにディアナは動揺していた。
レイヴンは、「カナリーとノティスを呼ぶならアイビスも来たがるだろうな。それならジェイも呼ばないと、何かあると勘繰られるかもしれない」などと呟いている。
それにアリシアが、「パトリシア殿下をお招きするのはいかがでしょうか?殿下はディアナ嬢と同学年ですし」などと答えている。
出てくる名前はすべて王族だ。
「あ、あの……。王子殿下や王女殿下しか招かれないのですか……?」
「ああ、大丈夫。レオナルドは勿論招待するよ」
恐る恐る問い掛けたディアナに、レイヴンが綺麗な笑顔で答える。
だけどそういうことではない。
ディアナは不安そうな表情でレオナルドを見上げると、レオナルドは肩を竦めた。
「平たく言えば、身内だけのお茶会ということかな」
「……身内、ですか?」
「あら、だってディアナ嬢は私のお義姉様になるのでしょう?」
「っ!!」
当然、といった表情のアリシアに、ディアナは息を飲んだ。
王家と公爵家では立場が違う。公の場所で義姉妹として振舞うことはできない。
それでもディアナはアリシアの義姉となり、レイヴンを通じてカナリーやノティスも身内になるのだ。
やはり、とんでもない人と婚約してしまった。
しがない伯爵令嬢のディアナは微かに震えていた。
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