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第2部 5章
33 少女の初恋③
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「ディアナ嬢、我々が招いたのにおかしなことになってしまって申し訳ない」
「いえ、とんでもございません!」
困惑した表情のレイヴンが謝罪をする。招待した客人に妹が失礼な態度を取ったのだから当然のことだ。
だけどディアナは慌ててそれを止めた。ディアナにとっては王太子に謝罪させるなどとんでもないことである。
それにディアナはアイビスに何かをされたわけではない。もしアイビスに無視をされたり、突っかかって来られたりしていたら困っていただろう。
だけどアイビスはディアナの挨拶にきちんと応えてくれていたし、嫌なことも言われていない。ただ落ち込んでいただけだ。
正直なところ話を聞いていても困惑するばかりで嫌な思いをすることは少しもなかった。
「寛大な言葉に感謝する」
レイヴンが軽く頭を下げるのをディアナは恐縮して受け入れた。
それから話題はカナリーの結婚式のことになった。
結婚式までもう1か月を切っている。ドレスや装飾品はすべて仕上がり、嫁入り調度品はリベラ侯爵家の別邸へ既に運び込まれた。
カナリーは降嫁するので国として近隣諸国の賓客を招くことはないが、カナリーと個人的な交流のある国の王女からは出席の返事が返って来ている。リベラ侯爵家も手広く交易をしているので外国との繋がりが強く、外国の貴族も多く招待されていた。
「お義姉様たちと学んでいたアルスタ語が早速役に立ちそうですわ」
カナリーが笑う。
カナリーはアリシアとジェーンのお茶会に参加し始めた時から流暢なアルスタ語を話していた。
例えお茶会に参加していなくても困ることはなかっただろうが、あのお茶会に参加して良かったと思ってくれるのなら嬉しい。
「カナリー殿下のウェディングドレス姿は美しいでしょうね。楽しみですわ」
まだドレスを見たことのないディアナとパトリシアは、カナリーのウェディングドレス姿を思い浮かべてうっとりしている。既にドレスを見ているアリシアも、あのドレスはカナリーの美しさを良く引き立てると思う。
やはり令嬢たちはウェディングドレスに興味があるようだ。
そんな中でアイビスは、カナリーの方へ視線を向けずに反対側に座ったジェイやノティスと話していた。
あまり褒められた態度ではないが、失恋のショックもあるだろう。
勝手に気持ちを告げてしまったカナリーに憤る気持ちもきっとある。
ここはそっとしておこう、とジェイは素知らぬふりでアイビスの相手をしていた。ジェイも幼い妹を可愛がっているのだ。
だけどそんなアイビスにカナリーが声を掛ける。
「アイビス。お姉様とはもうお話してくれないの?淋しいわ」
ジェイは思わず「うわっ!」と声を出しそうになった。
カナリーがリベラ侯爵邸へ移ってしまうまでもう1ヶ月もない。残り少ない時間を仲違いしたまま過ごすのは淋しいというのはわかる。
だけどその話は茶会が終わってからでも良いんじゃないか?!とジェイが心の中で叫んだ時、視線をジェイの方へ固定したままのアイビスが叫ぶように言った。
「だって、お姉様の方を見るとレオナルド殿が目に入るのだもの!レオナルド殿を諦めるのに、姿が見えたら諦められないでしょう?!」
「え?」
「まあ」
アイビスは口を引き結び、目元には涙が滲んでいる。
確かに席の位置的にカナリーの方を向けばレオナルドやディアナが視界に入る。ジェイの方を見ていれば入らない。
アイビスはもうレオナルドを諦める為の行動に移っていたのだ。
「いえ、とんでもございません!」
困惑した表情のレイヴンが謝罪をする。招待した客人に妹が失礼な態度を取ったのだから当然のことだ。
だけどディアナは慌ててそれを止めた。ディアナにとっては王太子に謝罪させるなどとんでもないことである。
それにディアナはアイビスに何かをされたわけではない。もしアイビスに無視をされたり、突っかかって来られたりしていたら困っていただろう。
だけどアイビスはディアナの挨拶にきちんと応えてくれていたし、嫌なことも言われていない。ただ落ち込んでいただけだ。
正直なところ話を聞いていても困惑するばかりで嫌な思いをすることは少しもなかった。
「寛大な言葉に感謝する」
レイヴンが軽く頭を下げるのをディアナは恐縮して受け入れた。
それから話題はカナリーの結婚式のことになった。
結婚式までもう1か月を切っている。ドレスや装飾品はすべて仕上がり、嫁入り調度品はリベラ侯爵家の別邸へ既に運び込まれた。
カナリーは降嫁するので国として近隣諸国の賓客を招くことはないが、カナリーと個人的な交流のある国の王女からは出席の返事が返って来ている。リベラ侯爵家も手広く交易をしているので外国との繋がりが強く、外国の貴族も多く招待されていた。
「お義姉様たちと学んでいたアルスタ語が早速役に立ちそうですわ」
カナリーが笑う。
カナリーはアリシアとジェーンのお茶会に参加し始めた時から流暢なアルスタ語を話していた。
例えお茶会に参加していなくても困ることはなかっただろうが、あのお茶会に参加して良かったと思ってくれるのなら嬉しい。
「カナリー殿下のウェディングドレス姿は美しいでしょうね。楽しみですわ」
まだドレスを見たことのないディアナとパトリシアは、カナリーのウェディングドレス姿を思い浮かべてうっとりしている。既にドレスを見ているアリシアも、あのドレスはカナリーの美しさを良く引き立てると思う。
やはり令嬢たちはウェディングドレスに興味があるようだ。
そんな中でアイビスは、カナリーの方へ視線を向けずに反対側に座ったジェイやノティスと話していた。
あまり褒められた態度ではないが、失恋のショックもあるだろう。
勝手に気持ちを告げてしまったカナリーに憤る気持ちもきっとある。
ここはそっとしておこう、とジェイは素知らぬふりでアイビスの相手をしていた。ジェイも幼い妹を可愛がっているのだ。
だけどそんなアイビスにカナリーが声を掛ける。
「アイビス。お姉様とはもうお話してくれないの?淋しいわ」
ジェイは思わず「うわっ!」と声を出しそうになった。
カナリーがリベラ侯爵邸へ移ってしまうまでもう1ヶ月もない。残り少ない時間を仲違いしたまま過ごすのは淋しいというのはわかる。
だけどその話は茶会が終わってからでも良いんじゃないか?!とジェイが心の中で叫んだ時、視線をジェイの方へ固定したままのアイビスが叫ぶように言った。
「だって、お姉様の方を見るとレオナルド殿が目に入るのだもの!レオナルド殿を諦めるのに、姿が見えたら諦められないでしょう?!」
「え?」
「まあ」
アイビスは口を引き結び、目元には涙が滲んでいる。
確かに席の位置的にカナリーの方を向けばレオナルドやディアナが視界に入る。ジェイの方を見ていれば入らない。
アイビスはもうレオナルドを諦める為の行動に移っていたのだ。
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