【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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第2部 6章

12 辛い選択②

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「………」

「………」

 執務室には重たい沈黙が落ちていた。
 
 一番の解決策はアリシアが望む通り同行させること。
 だけどその為にはもっと食事を摂り、体力をつけなければならない。

 レイヴンはアリシアが少しでも食べようと努力しているのを知っていた。その上でもっと・・・と要求するのは心苦しい。
 だけどそうするしかなかった。

「アリシアと話をしてみるよ」

 レイヴンがそう言うとレオナルドが頷いた。
 レオナルドもそれしかないとわかっているのだ。

 実際のところ今年の行き先は既に決まっていた。
 出発まであと2ヶ月程しかないのだからそれも当然である。
 アリシアが同行してもしなくてもあまり影響のないところ、今年も前回と同じ様にルトビア公爵派が集まる地域を選べれば良いのだが、ルトビア公爵派とばかり親交を結んでいればそれはそれで不満が出る。中々簡単にはいかないものだ。

 そんな中で選んだのは、対立派閥でありながらルトビア公爵家の恩恵を受けている者たちだ。
 ここ1年程でレオナルドやロバートから新たな取引先や嫁ぎ先を紹介されてレイヴンの側妃候補から辞退した者たちが集まる地域である。宿泊地に選ばれたのも恩恵の1つと言えるだろう。

 ただ側妃候補となっていた令嬢たちは既に嫁いでいるが、妹や縁戚の娘がいる。
 今のアリシアにとって安心できる状況とはいえなかった。
 

「……僕が王太子位を降りると言ったらどう思う?」

 レイヴンが低い声で言った。
 執務室は人払いがされていて他に聞いている者はいない。それでも簡単に言葉にしてはいけないことだ。
 案の定レオナルドに鋭い声で咎められた。

「殿下!滅多なことを仰られてはなりません!!」

「……わかっている。だけど最近考えてしまうんだ」

 国王に側妃を娶るよう促された。
 国王は側妃を娶りたくないというレイヴンの希望を叶える為にできる限りのことをしてくれている。それでももう限界が近い。何よりこのままではアリシアが耐えきれないだろう。 
 今のまま、側妃を娶らずにアリシアだけを愛する為には王太子位を降りるしかない。
 
 何か問題を起こして廃太子になるわけではないので公爵位くらいは貰えると思う。
 ただ問題なのは、王太子妃として相応しくあることを何よりの誇りとしているアリシアとレオナルドだ。

 アリシアは王太子妃の位を降りることを受け入れてくれるだろうか。
 それにレオナルドがレイヴンの側近なのは、レイヴンが王太子だからだ。レイヴンが王太子位を降りてしまえばレオナルドの功績も無駄になる。リカルドがいる今、次期宰相の地位も危ういかもしれない。

「……殿下。わたしはルトビア公爵家の嫡男です。わたしの立場では何も答えられません。聞かなかったことにさせていただきます」

 アリシアを溺愛する兄としては願ってもないことだ。今のアリシアは痛々しくて会う度に辛くなる。
 だけどルトビア公爵家の嫡男としては、次期王妃の兄という立場も、国王の外戚となる希望も簡単に捨てることはできないのだ。
 そしてそれはアリシアも同じである。

 アリシアはレイヴンの正妃としての誇りも、ルトビア公爵家の娘としての矜持も持っている。
 自分の為にレイヴンが王位を諦めたと知れば、また公爵家の希望を潰したと知れば気に病むはずだ。

「このことはまだアリシアに告げないようにお願い致します」

 レオナルドがそう言うと、レイヴンは頷いた。
 


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