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第2部 6章
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「レイヴン様は?」
「……執務中のお時間ですから、執務室にいらっしゃるのではないでしょうか。今日は来客の予定も聞いておりません」
「そう……。そうよね」
エレノアの返事を聞いたアリシアは恥ずかしくなって目を伏せた。
最近レイヴンが傍にいないと不安になって何度も所在を確認してしまう。
執務に集中している時間は良い。だけど執務中であっても、処理していた仕事が終わってほっと息をついた隙に嫌なことが思い浮かんでしまう。
あの日からアリシアの頭を占めているのは、ユニファを、側妃を娶らせてはいけないということだ。
側妃を迎えてしまえばレイヴンがどれだけアリシアを愛してくれていても、アリシアだけのレイヴンではなくなってしまう。
だけど輿入れを阻止する為にはレイヴンがユニファを受け入れるまでにアリシアが身籠らなくてはならない。
それが……、難しい。
アリシアはふるりと頭を振った。
また嫌な考えが浮かんでくる。
ルトビア公爵家の血筋は面白い様に皆栗色の髪と緑色の目をしている。
ユニファが生む子もきっと栗色の髪と緑色の目だ。アリシアが生んでもそうなるだろう。
そして栗色の髪と緑色の目の子を生める女性はもう1人いる。
グシャッと音を立ててアリシアは書類を握り潰した。
エレノアが驚いて駆けつけてくる。
「大丈夫ですか?!」とか「どうされたのですか?!」とか言うのを曖昧に躱してアリシアは席を立った。顔を見られないよう窓に向かい、カーテンを握り締める。
側妃を一度迎え入れてしまえば簡単に手放すことはできない。
世継ぎの生母となれば尚更である。
だけどジェーンだったら。
ジェーンはアリシアが頼めばきっとレイヴンの子を生んでくれる。
2人が密かに会えるようアリシアも最大限協力するつもりだ。
2人が抱き合う姿を思い浮かべれば胸が灼けるように痛むけれど、側妃を迎えるよりは良い。
ジェーンが身籠ればアリシアは腹に詰め物をして妊婦を装い、子が生まれればアリシアの子として貰い受ける。
ジェーンの子であってもアリシアはきっと愛せるはずだ。
自分の子として立派に育て上げてみせる。
だけどジェーンは。
アリシアは大きく頭を振ると窓に額を当てた。
窓ガラスはひんやりしていてアリシアの頭を冷やしてくれる。
そんなことをすればジェーンは未婚のまま子を生むことになる。万が一人に知られればとんどもない醜聞だ。
それに婿を迎えれば初夜の床で純潔ではないと知られてしまう。今のところ婚約者の第一候補はノティスなのだ。
ノティスはレイヴンとジェーンの噂を知っているし、2人が友人として親しいのも知っている。アリシアが抱く子を見て、何か疑惑を感じるかもしれない。
いいえ、いいえ!そうじゃないわ!!
アリシアは心の中で自分を叱った。
心配するべきなのは、出生の秘密を知られることではない。
ジェーンに貴族令嬢として大きな傷をつけてしまうし、ノティスも婚姻前に純潔を散らすような身持ちの悪い令嬢と結婚することになる。ノティスが婿に入るとはいえ、王家に対する侮辱と取られてもおかしくない。
ノティスがことを公にするとは思えないが、2人の仲はきっと上手くいかなくなるだろう。
ジェーンには幸せな結婚をして、今度こそ温かい家庭を手に入れて欲しい。
ああ、だけど。
打ち消しても打ち消しても同じ考えが浮かんできてしまう。
レイヴンに傍にいて何も考えなくても済むよう抱き締めて欲しい――。
「……執務中のお時間ですから、執務室にいらっしゃるのではないでしょうか。今日は来客の予定も聞いておりません」
「そう……。そうよね」
エレノアの返事を聞いたアリシアは恥ずかしくなって目を伏せた。
最近レイヴンが傍にいないと不安になって何度も所在を確認してしまう。
執務に集中している時間は良い。だけど執務中であっても、処理していた仕事が終わってほっと息をついた隙に嫌なことが思い浮かんでしまう。
あの日からアリシアの頭を占めているのは、ユニファを、側妃を娶らせてはいけないということだ。
側妃を迎えてしまえばレイヴンがどれだけアリシアを愛してくれていても、アリシアだけのレイヴンではなくなってしまう。
だけど輿入れを阻止する為にはレイヴンがユニファを受け入れるまでにアリシアが身籠らなくてはならない。
それが……、難しい。
アリシアはふるりと頭を振った。
また嫌な考えが浮かんでくる。
ルトビア公爵家の血筋は面白い様に皆栗色の髪と緑色の目をしている。
ユニファが生む子もきっと栗色の髪と緑色の目だ。アリシアが生んでもそうなるだろう。
そして栗色の髪と緑色の目の子を生める女性はもう1人いる。
グシャッと音を立ててアリシアは書類を握り潰した。
エレノアが驚いて駆けつけてくる。
「大丈夫ですか?!」とか「どうされたのですか?!」とか言うのを曖昧に躱してアリシアは席を立った。顔を見られないよう窓に向かい、カーテンを握り締める。
側妃を一度迎え入れてしまえば簡単に手放すことはできない。
世継ぎの生母となれば尚更である。
だけどジェーンだったら。
ジェーンはアリシアが頼めばきっとレイヴンの子を生んでくれる。
2人が密かに会えるようアリシアも最大限協力するつもりだ。
2人が抱き合う姿を思い浮かべれば胸が灼けるように痛むけれど、側妃を迎えるよりは良い。
ジェーンが身籠ればアリシアは腹に詰め物をして妊婦を装い、子が生まれればアリシアの子として貰い受ける。
ジェーンの子であってもアリシアはきっと愛せるはずだ。
自分の子として立派に育て上げてみせる。
だけどジェーンは。
アリシアは大きく頭を振ると窓に額を当てた。
窓ガラスはひんやりしていてアリシアの頭を冷やしてくれる。
そんなことをすればジェーンは未婚のまま子を生むことになる。万が一人に知られればとんどもない醜聞だ。
それに婿を迎えれば初夜の床で純潔ではないと知られてしまう。今のところ婚約者の第一候補はノティスなのだ。
ノティスはレイヴンとジェーンの噂を知っているし、2人が友人として親しいのも知っている。アリシアが抱く子を見て、何か疑惑を感じるかもしれない。
いいえ、いいえ!そうじゃないわ!!
アリシアは心の中で自分を叱った。
心配するべきなのは、出生の秘密を知られることではない。
ジェーンに貴族令嬢として大きな傷をつけてしまうし、ノティスも婚姻前に純潔を散らすような身持ちの悪い令嬢と結婚することになる。ノティスが婿に入るとはいえ、王家に対する侮辱と取られてもおかしくない。
ノティスがことを公にするとは思えないが、2人の仲はきっと上手くいかなくなるだろう。
ジェーンには幸せな結婚をして、今度こそ温かい家庭を手に入れて欲しい。
ああ、だけど。
打ち消しても打ち消しても同じ考えが浮かんできてしまう。
レイヴンに傍にいて何も考えなくても済むよう抱き締めて欲しい――。
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