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第2部 6章
25 キトラへ②
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ジェーンに会いにキトラへ行く。
そう決まってからは早かった。
人に知られないよう密かに行く為、日程は週末と決められた。
1日掛けてキトラへ移動し、着いたその日は侯爵家の邸に泊まる。体調のこともあるので次の日は侯爵家でゆっくり過ごしてまた一泊。翌朝早く邸を発って夕方頃王宮へ戻ってくる。
つまりレイヴンは3日、アリシアの不在を誤魔化さなくてはならない。
この計画を知るのは僅かな者だけに絞られた。
人払いをした部屋にレイヴンとアリシア、レオナルドがいる。
そこに呼び出されたのはエレノアとドナ、ジーナ、それにケイトの4人だった。4人にはアリシアがいない間、アリシアがいるように振舞ってもらわなければならない。
レイヴンは前準備としてルトビア公爵家の者に王太子宮の馬車止まりまで馬車で乗り入れる許可を出した。
これでレオナルドやオレリアは王太子宮まで馬車で入れることになる。
土曜日の朝、レオナルドがアリシアの元を訪れる。これは最近よくあることなので誰も疑わないだろう。
少し話をした後、レオナルドは馬車に乗って帰っていく。この馬車にアリシアが同乗して王太子宮を出るのだ。
レオナルドとアリシアが王太子宮を出た後は、レイヴンは自分の部屋に籠る。
積極的に広める必要はないが、誰かに何か訊かれた時に「2人が寝室に籠って出てこない」と答えるのが4人の役目だ。
「僕たちが寝室に籠って過ごすのもそんなに珍しいことじゃないし、難しいことではないと思う。ただ食事の運び入れやシーツの交換、そういったことをいつものように行って欲しい」
それとは別にアリシアとレイヴンの部屋の掃除や片付けもある。
実際のレイヴンは寝室よりも自室にいることが多いだろう。
他の人間を部屋に入れることはできないので、4人だけで2人の部屋と寝室を整え、レイヴンの世話をすることになる。
3日目が一番大変かもしれない。
休日を終え、レイヴンは執務室へ行く。レイヴンが部屋を出た後、アリシアが1人で部屋にいるよう装わなくてはならないのだ。
エレノアたちはアリシアが遠出をするのに同行できないことに不満そうな表情をした。
だけど今のアリシアに心の支えとなる人物が必要なのは痛い程感じている。
王家に仕える者として、アリシアが軽々しく外出できないことも理解している。
密かに動く為には侍女を連れて行けないと、それはわかるつもりだ。
だから仕方なく受け入れた。
「……かしこまりました」
「私たちを信用して下さり、ありがとうございます」
4人が揃って頭を下げる。
普段レイヴンの世話を中心に行うケイトとエレノアたちはこれまであまり交流がなかった。だけど同じ侍女として知らない仲ではない。協力して上手くやれるだろう。
「ルトビア公爵子息様、妃殿下を宜しくお願い致します」
頭を下げるエレノアたちにレオナルドが頷いた。
レイヴンと同じくらい、いや、時にはレイヴン以上にアリシアを大切にしているレオナルドなら、アリシアを危険に遭わせることはないだろう。
侯爵邸への先触れはレオナルドが出してくれることになった。
ルトビア公爵家が侯爵家の後見をしているので頻繁に文のやり取りがある。少しでも疑念を持たれないようアリシアから文を書くのは止められた。
「大好きだよ、アリシア」
優しく微笑むレイヴンの手がアリシアの頬を撫でる。
ゆっくり近づく唇をアリシアは受け入れた。
週末にキトラへ行く。
アリシアが望んだことだが、気に掛かるのは閨がなくなることだ。
その気持ちを汲んで、今日はレイヴンが抱いてくれる。
込み上げる様々な思いを飲み込んで、アリシアは与えられた熱に身を任せた。
そう決まってからは早かった。
人に知られないよう密かに行く為、日程は週末と決められた。
1日掛けてキトラへ移動し、着いたその日は侯爵家の邸に泊まる。体調のこともあるので次の日は侯爵家でゆっくり過ごしてまた一泊。翌朝早く邸を発って夕方頃王宮へ戻ってくる。
つまりレイヴンは3日、アリシアの不在を誤魔化さなくてはならない。
この計画を知るのは僅かな者だけに絞られた。
人払いをした部屋にレイヴンとアリシア、レオナルドがいる。
そこに呼び出されたのはエレノアとドナ、ジーナ、それにケイトの4人だった。4人にはアリシアがいない間、アリシアがいるように振舞ってもらわなければならない。
レイヴンは前準備としてルトビア公爵家の者に王太子宮の馬車止まりまで馬車で乗り入れる許可を出した。
これでレオナルドやオレリアは王太子宮まで馬車で入れることになる。
土曜日の朝、レオナルドがアリシアの元を訪れる。これは最近よくあることなので誰も疑わないだろう。
少し話をした後、レオナルドは馬車に乗って帰っていく。この馬車にアリシアが同乗して王太子宮を出るのだ。
レオナルドとアリシアが王太子宮を出た後は、レイヴンは自分の部屋に籠る。
積極的に広める必要はないが、誰かに何か訊かれた時に「2人が寝室に籠って出てこない」と答えるのが4人の役目だ。
「僕たちが寝室に籠って過ごすのもそんなに珍しいことじゃないし、難しいことではないと思う。ただ食事の運び入れやシーツの交換、そういったことをいつものように行って欲しい」
それとは別にアリシアとレイヴンの部屋の掃除や片付けもある。
実際のレイヴンは寝室よりも自室にいることが多いだろう。
他の人間を部屋に入れることはできないので、4人だけで2人の部屋と寝室を整え、レイヴンの世話をすることになる。
3日目が一番大変かもしれない。
休日を終え、レイヴンは執務室へ行く。レイヴンが部屋を出た後、アリシアが1人で部屋にいるよう装わなくてはならないのだ。
エレノアたちはアリシアが遠出をするのに同行できないことに不満そうな表情をした。
だけど今のアリシアに心の支えとなる人物が必要なのは痛い程感じている。
王家に仕える者として、アリシアが軽々しく外出できないことも理解している。
密かに動く為には侍女を連れて行けないと、それはわかるつもりだ。
だから仕方なく受け入れた。
「……かしこまりました」
「私たちを信用して下さり、ありがとうございます」
4人が揃って頭を下げる。
普段レイヴンの世話を中心に行うケイトとエレノアたちはこれまであまり交流がなかった。だけど同じ侍女として知らない仲ではない。協力して上手くやれるだろう。
「ルトビア公爵子息様、妃殿下を宜しくお願い致します」
頭を下げるエレノアたちにレオナルドが頷いた。
レイヴンと同じくらい、いや、時にはレイヴン以上にアリシアを大切にしているレオナルドなら、アリシアを危険に遭わせることはないだろう。
侯爵邸への先触れはレオナルドが出してくれることになった。
ルトビア公爵家が侯爵家の後見をしているので頻繁に文のやり取りがある。少しでも疑念を持たれないようアリシアから文を書くのは止められた。
「大好きだよ、アリシア」
優しく微笑むレイヴンの手がアリシアの頬を撫でる。
ゆっくり近づく唇をアリシアは受け入れた。
週末にキトラへ行く。
アリシアが望んだことだが、気に掛かるのは閨がなくなることだ。
その気持ちを汲んで、今日はレイヴンが抱いてくれる。
込み上げる様々な思いを飲み込んで、アリシアは与えられた熱に身を任せた。
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