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第2部 6章
30 異変
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「アリシア!アリシアっ?!どうしたの?!」
朝、起きる時間より少しだけ早い時間。
王太子夫妻の寝室にレイヴンの声が響いた。外で待機していたエレノアたちがすぐに飛び込んでくる。
ベッドに横たわるアリシアを見たエレノアたちも悲鳴上げた。
「妃殿下?!どうされたのですか?!」
ベッドの上ではアリシアがぐったりしていた。
これまでより格段に顔色が悪い。旅の疲れが出たにしても酷すぎる。
レイヴンの指示を受けた侍女が急いで侍医を呼びに走った。
「申し訳ありません、レイヴン様。なんだか、起き上がれなくて……」
アリシアは何度も起き上がろうと試みていた。
だけど起き上がろうとしても体に力が入らない。
レイヴンに背中を支えて起こして貰っても、酷い目昧と嘔吐感がして姿勢を保っていられなかった。
やがて駆け込んできた侍医たちがアリシアの診察を始める。
熱を測ったり脈を取ったり、忙しく動く侍医たちをレイヴンは見守ることしかできない。
診察を終えた侍医長が下した診断は、これまでと同じく極度のストレスと過労、それに栄養失調だった。
「栄養失調……」
ほとんど食事が摂れていないのだからその危険はあった。
アリシアは定期的に侍医長の診察を受け、処方された薬湯を飲んでいたけれど、それだけでは補いきれなかったのだろう。
呆然とするレイヴンだったが、にわかに部屋の外が騒がしくなり、国王とマルグリット、それにレオナルドが飛び込んできた。
「レオ?!」
レイヴンが驚いて声を上げる。
王太子妃の体に異変が起きたのだからマルグリットへ報告が行くのは当然だ。国王が一緒なのも、マルグリットと一緒に朝の時間を過ごしていたのだと想像できる。
だけど何故この時間にレオナルドがいるのか。レイヴンが驚くのも当然だった。
ただレオナルドの様子をよく見てみると、いつもパリッとしているレオナルドとは違ってシャツはよれているしジャケットもひっかけただけのようだ。髪型も整えられておらず、まだ朝の支度前に見える。
「……もしかして執務室に泊ったのか?」
レオナルドからの答えはない。アリシアのことで頭がいっぱいなので他のことに気をまわす余裕がないのだ。
やはりキトラで何かあったのだろう。
だからレオナルドは昨日アリシアを送り届けた後、邸に戻らず執務室にある仮眠用ベッドで休んでいた。そしてアリシアに何かあればすぐ呼びに来るよう侍女かメイドに言い含めていたのだ。
「侍医長、報告を」
国王が低い声で命じる。
国王も一瞬レオナルドを気にする素振りを見せたが、アリシアの実の兄だ。アリシアの病状を知っても悪いようにはしないだろうと同席を黙認することにしたらしい。
国王の命を受けた侍医長は軽く頷くと診断結果の説明を始めた。
侍医長の診断は極度のストレスと過労、それに栄養失調である。
侍医長によると、アリシアはもうずっと前からいつ倒れてもおかしくないような状態だったらしい。だけどアリシアは強い精神力でいつもと変わらない生活を続けていた。
それでもそんな気持ちだけで保っているような生活がいつまでも続けられるはずがない。
侍医長は遅かれ早かれこうなるだろうと思っていたそうだ。
「なんてことなの……っ」
侍医長の話を聞いていたマルグリットが青褪めて絶句する。
マルグリットも中々世継ぎに恵まれず辛い思いをした経験者だ。
アリシアが今、辛い思いをしていることは知っていたけれど、ここまで体を悪くするほど追い詰められているとは思っていなかった。
マルグリットと並ぶ国王も流石に顔色を悪くしている。
「それで治療法は?僕はどうすれば良い?!」
レイヴンが焦れたように問い掛けるが、侍医長は申し訳なさそうに首を振った。
「これまでと同じように栄養を補う薬湯を処方致します。妃殿下には1日3回、必ずそれをすべて飲み干していただかなくてはなりません。あとはもうひたすら休むことと、少しでも多く食べて頂くことです。ただ妃殿下の場合、お心が弱っておられますから、その原因を取り除かない限りはなんとも……」
「そんな!他になにか、できることはないのですか?!」
マルグリットが悲痛な声を上げる。
侍医長に詰め寄るマルグリットやレイヴンの声をレオナルドは遠く聞いていた。
侍医長はこれまで強い精神力がアリシアを支えていたと言った。
その気持ちが切れたのは、ジェーンの婚約を聞いたせいだ。
アリシアを支えていた希望をレオナルドは知っていて打ち砕いた。
「ごめん、アリシア……っ」
呟いた声を聞き咎める人はいない。
枕元で侍医長に詰め寄るレイヴンたちの声が聞こえていないのか、アリシアはいつの間にか眠りについていた。
朝、起きる時間より少しだけ早い時間。
王太子夫妻の寝室にレイヴンの声が響いた。外で待機していたエレノアたちがすぐに飛び込んでくる。
ベッドに横たわるアリシアを見たエレノアたちも悲鳴上げた。
「妃殿下?!どうされたのですか?!」
ベッドの上ではアリシアがぐったりしていた。
これまでより格段に顔色が悪い。旅の疲れが出たにしても酷すぎる。
レイヴンの指示を受けた侍女が急いで侍医を呼びに走った。
「申し訳ありません、レイヴン様。なんだか、起き上がれなくて……」
アリシアは何度も起き上がろうと試みていた。
だけど起き上がろうとしても体に力が入らない。
レイヴンに背中を支えて起こして貰っても、酷い目昧と嘔吐感がして姿勢を保っていられなかった。
やがて駆け込んできた侍医たちがアリシアの診察を始める。
熱を測ったり脈を取ったり、忙しく動く侍医たちをレイヴンは見守ることしかできない。
診察を終えた侍医長が下した診断は、これまでと同じく極度のストレスと過労、それに栄養失調だった。
「栄養失調……」
ほとんど食事が摂れていないのだからその危険はあった。
アリシアは定期的に侍医長の診察を受け、処方された薬湯を飲んでいたけれど、それだけでは補いきれなかったのだろう。
呆然とするレイヴンだったが、にわかに部屋の外が騒がしくなり、国王とマルグリット、それにレオナルドが飛び込んできた。
「レオ?!」
レイヴンが驚いて声を上げる。
王太子妃の体に異変が起きたのだからマルグリットへ報告が行くのは当然だ。国王が一緒なのも、マルグリットと一緒に朝の時間を過ごしていたのだと想像できる。
だけど何故この時間にレオナルドがいるのか。レイヴンが驚くのも当然だった。
ただレオナルドの様子をよく見てみると、いつもパリッとしているレオナルドとは違ってシャツはよれているしジャケットもひっかけただけのようだ。髪型も整えられておらず、まだ朝の支度前に見える。
「……もしかして執務室に泊ったのか?」
レオナルドからの答えはない。アリシアのことで頭がいっぱいなので他のことに気をまわす余裕がないのだ。
やはりキトラで何かあったのだろう。
だからレオナルドは昨日アリシアを送り届けた後、邸に戻らず執務室にある仮眠用ベッドで休んでいた。そしてアリシアに何かあればすぐ呼びに来るよう侍女かメイドに言い含めていたのだ。
「侍医長、報告を」
国王が低い声で命じる。
国王も一瞬レオナルドを気にする素振りを見せたが、アリシアの実の兄だ。アリシアの病状を知っても悪いようにはしないだろうと同席を黙認することにしたらしい。
国王の命を受けた侍医長は軽く頷くと診断結果の説明を始めた。
侍医長の診断は極度のストレスと過労、それに栄養失調である。
侍医長によると、アリシアはもうずっと前からいつ倒れてもおかしくないような状態だったらしい。だけどアリシアは強い精神力でいつもと変わらない生活を続けていた。
それでもそんな気持ちだけで保っているような生活がいつまでも続けられるはずがない。
侍医長は遅かれ早かれこうなるだろうと思っていたそうだ。
「なんてことなの……っ」
侍医長の話を聞いていたマルグリットが青褪めて絶句する。
マルグリットも中々世継ぎに恵まれず辛い思いをした経験者だ。
アリシアが今、辛い思いをしていることは知っていたけれど、ここまで体を悪くするほど追い詰められているとは思っていなかった。
マルグリットと並ぶ国王も流石に顔色を悪くしている。
「それで治療法は?僕はどうすれば良い?!」
レイヴンが焦れたように問い掛けるが、侍医長は申し訳なさそうに首を振った。
「これまでと同じように栄養を補う薬湯を処方致します。妃殿下には1日3回、必ずそれをすべて飲み干していただかなくてはなりません。あとはもうひたすら休むことと、少しでも多く食べて頂くことです。ただ妃殿下の場合、お心が弱っておられますから、その原因を取り除かない限りはなんとも……」
「そんな!他になにか、できることはないのですか?!」
マルグリットが悲痛な声を上げる。
侍医長に詰め寄るマルグリットやレイヴンの声をレオナルドは遠く聞いていた。
侍医長はこれまで強い精神力がアリシアを支えていたと言った。
その気持ちが切れたのは、ジェーンの婚約を聞いたせいだ。
アリシアを支えていた希望をレオナルドは知っていて打ち砕いた。
「ごめん、アリシア……っ」
呟いた声を聞き咎める人はいない。
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