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第2部 6章
42 恋文
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「今日は良いお天気ね」
寝室へ入ったオレリアは、ベッドに座って庭を眺める娘へ声を掛けた。
アリシアからの反応はない。視線は窓の外へ向いたままだ。
外からはワンワンッ!と犬の鳴き声がして、白い犬が何かを追いかけているのが見えた。
庭園に損害がでるかも…という懸念はあったが、昨日から犬を入れることを許可している。
犬を連れて来た使用人も仕事があるので1日中傍についていることはできないが、犬好きの者はそれなりにいるようで、絶えず誰かが相手をしているようだ。
そして嬉しいことにアリシアもその愛らしい姿に興味を引かれたようで、駆け回る犬を目で追っている。
オレリアはそんなアリシアの傍らに腰を下ろした。
今日、オレリアは新たな試みをしようとしている。
それはレイヴンの文を読み聞かせることだ。
レイヴンからの文は毎日届けられている。
だけどアリシアは読むことができない。
侍女たちもまさか使用人の立場で王太子からの文を開くことはできず、いつかアリシアが読める時が来たら…、とまとめて保管されていた。
オレリアも悩みに悩んだ。
だけどレオナルドは、アリシアが王太子宮を発つ時レイヴンの名を呼んで泣いていたと言う。
アリシアはすっかり心を閉ざしてしまっているが、レイヴンの言葉ならアリシアの気持ちを揺さぶれるのではないかと思うのだ。
ちょうど今は犬を媒体としてアリシアの気持ちが外界へ向いている。
まさかこの中に機密事項は書かれていないだろうと心を決めて、オレリアはレイヴンからの文を読むことにした。
「殿下から毎日文が届いているのよ、アリシア。勝手に覗いてしまって申し訳ないけれど、いくつか読んであげるわね」
そうしてオレリアはレイヴンからの文を読みだした。
レイヴンの文はアリシアの体調を気遣うところから始まっている。
それから日常的な出来事の報告が続き、アイビスやパトリシアなどアリシアと親交の深い王族がアリシアを案じる様子が綴られている。
文の中には読みづらい部分もあった。
『愛している、アリシア。早く会いたい』や、『大好きだよ、アリシア。アリシアがいないとすごく淋しい』なんて言葉はむず痒く、母親として複雑な気持ちになってしまう。
隅に控えていたマリアンなどは、オレリアが『愛している』と口にした途端、とんでもないものを見るような顔になっていた。
その気持ちはわかる。
マリアンは婚約者時代、アリシアを蔑ろにするレイヴンを嫌悪していた。
レオナルドから本当はレイヴンがずっとアリシアを想っていたことや、今は2人の想いが通じ合っていることを聞かされていても、現実的なことには思えず、半信半疑だったのだろう。
感情を表情に出すのは公爵家の侍女としていただけないが、今日ばかりは見逃すことにした。
「『愛しているよ、アリシア。良くなることを願ってる。また明日、文を書くね』」
1つ目の文を読み終えたオレリアはほぅ……と息を吐く。
「殿下は本当にアリシアを想って下さっているのねぇ……」
娘婿から娘へ宛てた恋文を読んでしまった後ろめたさと羞恥心からオレリアの頬はほのかに赤く染まっていた。
恥ずかしそうな笑みを浮かべながらアリシアへ視線を移したオレリアはぎょっとする。
アリシアは無表情のまま、ぽたぽたと涙を落としていた。
「アリシア?!どうしたの?!」
「……レイヴン、さま……っ」
アリシアはオレリアの呼びかけに応えない。
ただレイヴンの名を呼びながら涙を流し続けた。
寝室へ入ったオレリアは、ベッドに座って庭を眺める娘へ声を掛けた。
アリシアからの反応はない。視線は窓の外へ向いたままだ。
外からはワンワンッ!と犬の鳴き声がして、白い犬が何かを追いかけているのが見えた。
庭園に損害がでるかも…という懸念はあったが、昨日から犬を入れることを許可している。
犬を連れて来た使用人も仕事があるので1日中傍についていることはできないが、犬好きの者はそれなりにいるようで、絶えず誰かが相手をしているようだ。
そして嬉しいことにアリシアもその愛らしい姿に興味を引かれたようで、駆け回る犬を目で追っている。
オレリアはそんなアリシアの傍らに腰を下ろした。
今日、オレリアは新たな試みをしようとしている。
それはレイヴンの文を読み聞かせることだ。
レイヴンからの文は毎日届けられている。
だけどアリシアは読むことができない。
侍女たちもまさか使用人の立場で王太子からの文を開くことはできず、いつかアリシアが読める時が来たら…、とまとめて保管されていた。
オレリアも悩みに悩んだ。
だけどレオナルドは、アリシアが王太子宮を発つ時レイヴンの名を呼んで泣いていたと言う。
アリシアはすっかり心を閉ざしてしまっているが、レイヴンの言葉ならアリシアの気持ちを揺さぶれるのではないかと思うのだ。
ちょうど今は犬を媒体としてアリシアの気持ちが外界へ向いている。
まさかこの中に機密事項は書かれていないだろうと心を決めて、オレリアはレイヴンからの文を読むことにした。
「殿下から毎日文が届いているのよ、アリシア。勝手に覗いてしまって申し訳ないけれど、いくつか読んであげるわね」
そうしてオレリアはレイヴンからの文を読みだした。
レイヴンの文はアリシアの体調を気遣うところから始まっている。
それから日常的な出来事の報告が続き、アイビスやパトリシアなどアリシアと親交の深い王族がアリシアを案じる様子が綴られている。
文の中には読みづらい部分もあった。
『愛している、アリシア。早く会いたい』や、『大好きだよ、アリシア。アリシアがいないとすごく淋しい』なんて言葉はむず痒く、母親として複雑な気持ちになってしまう。
隅に控えていたマリアンなどは、オレリアが『愛している』と口にした途端、とんでもないものを見るような顔になっていた。
その気持ちはわかる。
マリアンは婚約者時代、アリシアを蔑ろにするレイヴンを嫌悪していた。
レオナルドから本当はレイヴンがずっとアリシアを想っていたことや、今は2人の想いが通じ合っていることを聞かされていても、現実的なことには思えず、半信半疑だったのだろう。
感情を表情に出すのは公爵家の侍女としていただけないが、今日ばかりは見逃すことにした。
「『愛しているよ、アリシア。良くなることを願ってる。また明日、文を書くね』」
1つ目の文を読み終えたオレリアはほぅ……と息を吐く。
「殿下は本当にアリシアを想って下さっているのねぇ……」
娘婿から娘へ宛てた恋文を読んでしまった後ろめたさと羞恥心からオレリアの頬はほのかに赤く染まっていた。
恥ずかしそうな笑みを浮かべながらアリシアへ視線を移したオレリアはぎょっとする。
アリシアは無表情のまま、ぽたぽたと涙を落としていた。
「アリシア?!どうしたの?!」
「……レイヴン、さま……っ」
アリシアはオレリアの呼びかけに応えない。
ただレイヴンの名を呼びながら涙を流し続けた。
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