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第2部 6章
45 報せ①
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オレリアから話を聞いた後、アリシアが1人になりたいと告げるとオレリアは部屋を出ていった。
アリシアが正気を取り戻したと急いでレイヴンに報せを出すという。
本当はその文はアリシアが書くべきだろう。心配を掛け、多大な配慮を受けているのだ。
だけどアリシアはそれをオレリアに任せることにした。
文が書けるほどまだ回復していない。
もうしばらくそう思われていたかった。
アリシアが回復すれば、また状況は元に戻る。
アリシアはレイヴンに側妃を迎えるよう薦めなければならないのだ。
それが自身に課せられた務めだとわかっているけれど、もう少しだけ眼を逸らしていたかった。
ベッドサイドへ視線を向けると、サイドテーブルに沢山の文が置かれている。
レイヴンはアリシアがここへ移ってから毎日文を送ってくれていたのだ。アリシアが正気を取り戻したのも、オレリアがレイヴンからの文を読み聞かせてくれたことが切っ掛けだった。
レイヴンの名を呼びながら涙を流したアリシアは、泣き疲れて眠ったらしい。そのまま昏々と眠り続け、目を覚ました時には正気に戻っていたというわけだ。
アリシアが心を閉ざしたのは、現実を受け入れたくなかったからだろう。
アダムがレイヴンにユニファを薦めると決めた。アリシアはそれを後押ししなければならない。
だけどユニファを娶るよう説得するのも、ユニファと並ぶレイヴンを見るのも嫌だ。
嫌だから逃げたのだ。
それなら正気を取り戻したのは……。
アリシアを想うレイヴンの強い気持ちに、例え側妃を迎え入れても乗り越えられると心が判断したのかもしれない。
そう、マルグリットも歴代の妃たちも、乗り越えてきたのだから。
それなのにまだ足掻こうとしている自分がいる。
それが酷く滑稽に思えた。
扉を叩く音がして、アリシアは扉へ目を向けた。
1人になりたいと告げたけれど、文を読まなくて良い口実をくれるのなら大歓迎である。
文を読んだらレイヴンに会いたくなる。
レイヴンに会ったら務めを果たさなければならない。
会いたいけど会いたくない。
複雑な気持ちだった。
「お嬢様、お食事をお持ちしました。すぐに支度を致しますね」
寝室へ入って来たのはマリアンだった。
ベッドの上でも食べられるようにテキパキと用意していく。
そういえば、マリアンはずっとアリシアを「お嬢様」と呼んでいる。
本来なら許されることではないが、その響きが心地良くて気づかないふりをすることにした。
「……美味しいわ」
食事を口にした途端、アリシアは思わず呟いていた。
最後に記憶している食事は、味を感じることより「何とか飲み込まなければ」という使命感ばかりだった。それなのに今日はとても美味しく感じられる。
ただ嫁ぐまでいつも食べていた食事よりも随分とさっぱりした味付けだ。きっと寝込んでいるアリシアが食べやすい様にと考えてくれたのだろう。
「もっと食べられそうなら仰って下さいね」
「ええ、ありがとう」
美味しい食事だが、用意された量は少なかった。
1度に沢山食べられないのなら、食べる回数を増やせば良いのだ。そんな考えからアリシアの食事は1日6回とされていた。規律を守ることを第一とする王宮では考えられない方策だ。
おかげでアシェントへ来た時よりも少しだけ体に肉がついてきていた。
アリシアが正気を取り戻したと急いでレイヴンに報せを出すという。
本当はその文はアリシアが書くべきだろう。心配を掛け、多大な配慮を受けているのだ。
だけどアリシアはそれをオレリアに任せることにした。
文が書けるほどまだ回復していない。
もうしばらくそう思われていたかった。
アリシアが回復すれば、また状況は元に戻る。
アリシアはレイヴンに側妃を迎えるよう薦めなければならないのだ。
それが自身に課せられた務めだとわかっているけれど、もう少しだけ眼を逸らしていたかった。
ベッドサイドへ視線を向けると、サイドテーブルに沢山の文が置かれている。
レイヴンはアリシアがここへ移ってから毎日文を送ってくれていたのだ。アリシアが正気を取り戻したのも、オレリアがレイヴンからの文を読み聞かせてくれたことが切っ掛けだった。
レイヴンの名を呼びながら涙を流したアリシアは、泣き疲れて眠ったらしい。そのまま昏々と眠り続け、目を覚ました時には正気に戻っていたというわけだ。
アリシアが心を閉ざしたのは、現実を受け入れたくなかったからだろう。
アダムがレイヴンにユニファを薦めると決めた。アリシアはそれを後押ししなければならない。
だけどユニファを娶るよう説得するのも、ユニファと並ぶレイヴンを見るのも嫌だ。
嫌だから逃げたのだ。
それなら正気を取り戻したのは……。
アリシアを想うレイヴンの強い気持ちに、例え側妃を迎え入れても乗り越えられると心が判断したのかもしれない。
そう、マルグリットも歴代の妃たちも、乗り越えてきたのだから。
それなのにまだ足掻こうとしている自分がいる。
それが酷く滑稽に思えた。
扉を叩く音がして、アリシアは扉へ目を向けた。
1人になりたいと告げたけれど、文を読まなくて良い口実をくれるのなら大歓迎である。
文を読んだらレイヴンに会いたくなる。
レイヴンに会ったら務めを果たさなければならない。
会いたいけど会いたくない。
複雑な気持ちだった。
「お嬢様、お食事をお持ちしました。すぐに支度を致しますね」
寝室へ入って来たのはマリアンだった。
ベッドの上でも食べられるようにテキパキと用意していく。
そういえば、マリアンはずっとアリシアを「お嬢様」と呼んでいる。
本来なら許されることではないが、その響きが心地良くて気づかないふりをすることにした。
「……美味しいわ」
食事を口にした途端、アリシアは思わず呟いていた。
最後に記憶している食事は、味を感じることより「何とか飲み込まなければ」という使命感ばかりだった。それなのに今日はとても美味しく感じられる。
ただ嫁ぐまでいつも食べていた食事よりも随分とさっぱりした味付けだ。きっと寝込んでいるアリシアが食べやすい様にと考えてくれたのだろう。
「もっと食べられそうなら仰って下さいね」
「ええ、ありがとう」
美味しい食事だが、用意された量は少なかった。
1度に沢山食べられないのなら、食べる回数を増やせば良いのだ。そんな考えからアリシアの食事は1日6回とされていた。規律を守ることを第一とする王宮では考えられない方策だ。
おかげでアシェントへ来た時よりも少しだけ体に肉がついてきていた。
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