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第2部 6章
55 支度※微
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「絶対嫌だ!アリシアと離れたくない!!」
心のままに叫んだレイヴンだったが、残念ながらここは王太子宮ではなく公爵家の邸である。
いつも呆れた顔をしながらレイヴンからアリシアを引き離すエレノアはおらず、侍女たちは困惑した表情で顔を見合わせている。王太子がまさかそんな反応をするとは思わず、反論することもできないのだ。
公爵邸でレイヴンに強く言えるのはアリシアだけである。
「レイヴン様、私も朝の支度をしてきますから。レイヴン様も湯浴みをなさって下さいませ」
そう言われるとレイヴンも弱い。
なんせ昼夜問わず馬を飛ばしてきたのだ。昨日は他に気持ちをまわすことができずにそのまま眠ってしまったが、汗や土埃に塗れているだろうことは容易に想像がついた。アリシアに近づくのは衛生的に不味かったかもしれない。
アリシアも湯浴みをするなら一緒に…、と言いたいところだが、それも不味い。
アリシアと一緒に湯浴みをすれば、いつものようにあれこれしてしまいそうだが、まだ大事にしなければならない時期だろう。それに時間を掛けて体を冷やしてしまったら大変である。
「う~~~~っ!」
レイヴンはひと唸りすると渋々アリシアを離した。
「……行ってくる。すぐに戻ってくるからね」
「はい。私もすぐに戻ります」
にこっと笑うアリシアが可愛い。
レイヴンはアリシアを抱き締めたくなる衝動を堪えて浴室へ向かった。
浴室では世話をしようとする侍女を断り、1人でシャワーを浴びる。
以前は王太子宮でも侍女に体を洗わせるなど世話をさせていたが、アリシアがエレノアに肌を見せたと悋気を起こしてから入浴の世話はさせなくなっていた。
学園でも剣術の授業の後でシャワーを浴びることがあったので、1人で入浴や簡単な着替えはできるのだ。
それにしても正直なものだな、とレイヴンは苦笑を漏らす。
アリシアが寝付いてから傍にいない間、催すことは一度もなかったのに、アリシアと言葉を交わし、その温かさを抱き締めただけで元気になってしまった。
こんなところをアリシアに知られるわけにはいかない。
レイヴンは熱くなった自身に手を伸ばすと、欲望を吐き出す為に素早く擦り上げた。
「朝食は妃殿下のお部屋で用意しています」
結局レイヴンは湯浴みの後、侍女の手を借りずに着替えを済ませた。
着替えを持参していなかったのでレオナルドの服を用意してくれたようだ。袖も裾も折らなくてはならず納得がいかなかったが、身長が違うのだから仕方がない。
オイルも香水もレオナルドからの借り物になってしまった。レオナルドが使っているものなのだから、アリシアが嫌いな香りということはないだろう。
レイヴンが案内された浴室は客間のものだった。その客間自体がレイヴンの為に用意されていたようだ。
だけどレイヴンは客間を使うつもりはない。
「今夜も絶対アリシアと一緒に寝る!」とレイヴンは決めていた。
「待たせてごめんね」
レイヴンが部屋へ入るとアリシアは既に待っていた。
軽く抱き締め、頬に口づける。僅かに触れる腹の膨らみが愛おしい。
「朝食を用意したのですが……、食べられるでしょうか」
用意された食事は豪華なものだった。
焼きたてのパンが数種類あり、スクランブルエッグ、ハムとソーセージを焼いたもの、きのこのマリネ、野菜のピクルスがワンプレートに乗っている。それとは別にサラダとヨーグルトも用意されていた。
アリシアはレイヴンが最近あまり食べていないことを聞いて心配しているのだろう。
だけどこちらも現金なもので、アリシアと再会したことですっかり食欲が戻っていた。美味しそうな香りにお腹が鳴りそうだ。
「大丈夫。全部食べられるよ」
レイヴンがそう言うと、アリシアがホッとした顔をする。
アリシアはわからないだろうが、これをアリシアが食べられるのだと思うとレイヴンの方が嬉しかった。アリシアが王太子宮を出た時は、流動食を少ししか食べられなかったのだ。
2人はテーブルにつくと食事を始めた。
一緒に食べられることの幸福を噛みしめながら。
心のままに叫んだレイヴンだったが、残念ながらここは王太子宮ではなく公爵家の邸である。
いつも呆れた顔をしながらレイヴンからアリシアを引き離すエレノアはおらず、侍女たちは困惑した表情で顔を見合わせている。王太子がまさかそんな反応をするとは思わず、反論することもできないのだ。
公爵邸でレイヴンに強く言えるのはアリシアだけである。
「レイヴン様、私も朝の支度をしてきますから。レイヴン様も湯浴みをなさって下さいませ」
そう言われるとレイヴンも弱い。
なんせ昼夜問わず馬を飛ばしてきたのだ。昨日は他に気持ちをまわすことができずにそのまま眠ってしまったが、汗や土埃に塗れているだろうことは容易に想像がついた。アリシアに近づくのは衛生的に不味かったかもしれない。
アリシアも湯浴みをするなら一緒に…、と言いたいところだが、それも不味い。
アリシアと一緒に湯浴みをすれば、いつものようにあれこれしてしまいそうだが、まだ大事にしなければならない時期だろう。それに時間を掛けて体を冷やしてしまったら大変である。
「う~~~~っ!」
レイヴンはひと唸りすると渋々アリシアを離した。
「……行ってくる。すぐに戻ってくるからね」
「はい。私もすぐに戻ります」
にこっと笑うアリシアが可愛い。
レイヴンはアリシアを抱き締めたくなる衝動を堪えて浴室へ向かった。
浴室では世話をしようとする侍女を断り、1人でシャワーを浴びる。
以前は王太子宮でも侍女に体を洗わせるなど世話をさせていたが、アリシアがエレノアに肌を見せたと悋気を起こしてから入浴の世話はさせなくなっていた。
学園でも剣術の授業の後でシャワーを浴びることがあったので、1人で入浴や簡単な着替えはできるのだ。
それにしても正直なものだな、とレイヴンは苦笑を漏らす。
アリシアが寝付いてから傍にいない間、催すことは一度もなかったのに、アリシアと言葉を交わし、その温かさを抱き締めただけで元気になってしまった。
こんなところをアリシアに知られるわけにはいかない。
レイヴンは熱くなった自身に手を伸ばすと、欲望を吐き出す為に素早く擦り上げた。
「朝食は妃殿下のお部屋で用意しています」
結局レイヴンは湯浴みの後、侍女の手を借りずに着替えを済ませた。
着替えを持参していなかったのでレオナルドの服を用意してくれたようだ。袖も裾も折らなくてはならず納得がいかなかったが、身長が違うのだから仕方がない。
オイルも香水もレオナルドからの借り物になってしまった。レオナルドが使っているものなのだから、アリシアが嫌いな香りということはないだろう。
レイヴンが案内された浴室は客間のものだった。その客間自体がレイヴンの為に用意されていたようだ。
だけどレイヴンは客間を使うつもりはない。
「今夜も絶対アリシアと一緒に寝る!」とレイヴンは決めていた。
「待たせてごめんね」
レイヴンが部屋へ入るとアリシアは既に待っていた。
軽く抱き締め、頬に口づける。僅かに触れる腹の膨らみが愛おしい。
「朝食を用意したのですが……、食べられるでしょうか」
用意された食事は豪華なものだった。
焼きたてのパンが数種類あり、スクランブルエッグ、ハムとソーセージを焼いたもの、きのこのマリネ、野菜のピクルスがワンプレートに乗っている。それとは別にサラダとヨーグルトも用意されていた。
アリシアはレイヴンが最近あまり食べていないことを聞いて心配しているのだろう。
だけどこちらも現金なもので、アリシアと再会したことですっかり食欲が戻っていた。美味しそうな香りにお腹が鳴りそうだ。
「大丈夫。全部食べられるよ」
レイヴンがそう言うと、アリシアがホッとした顔をする。
アリシアはわからないだろうが、これをアリシアが食べられるのだと思うとレイヴンの方が嬉しかった。アリシアが王太子宮を出た時は、流動食を少ししか食べられなかったのだ。
2人はテーブルにつくと食事を始めた。
一緒に食べられることの幸福を噛みしめながら。
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