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第2部 6章
54 朝
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レイヴンが目を覚ますと、アリシアが優しい表情でレイヴンを見つめていた。
横になっているレイヴンとは違ってアリシアはクッションを背に座っている。優しい手つきでレイヴンの髪を撫でてくれていた。
これは夢だ。
アリシアはアシェントへ行ってしまって王太子宮にいない。いや、王太子宮にいる時も、感情を見せなくなってしまっていた。もう何か月もアリシアの笑顔を見ていない……。
「えっ?!夢っ?!」
レイヴンが跳ね起きるとアリシアは小さく声を上げ、驚いた顔をする。
その声も表情も、それに手の感触もとても夢とは思えなかった。
呆然とするレイヴンにアリシアが微笑む。
「夢ではありません。おはようございます。レイヴン様」
その声に改めて辺りを見渡すと、見覚えのない部屋の中だ。
見覚えのない部屋の中で、見覚えのない侍女が控えている。
いや、あれは……。
「……マリアン?」
「そうですわ。アシェントまで会いに来て下さったこと、忘れてしまわれたのですか?」
「っ!!」
そう言われてすべて思い出した。
王宮の執務室で執務を行っていた時にアダムが訪ねて来たこと、アリシアが懐妊したと聞いてそのまま王宮を飛び出したこと。無我夢中で駆けた王都からの道のり。アシェントの公爵邸に着いてアリシアの寝室へ駆け込んだこと……。
「えっ!!今、何時っ?!」
確かアリシアは昼寝をすると言っていたはずだ。
そしてレイヴンは一緒に横になった。
アリシアと一緒に眠れる喜びと確かに感じる温もりにすっかり安心して幸せな気持ちで目を閉じたことは覚えている。
だけど窓から差し込む陽の光は、とても夕方のものとは思えなかった。
「朝になりました。レイヴン様がいらっしゃったのは昨日の昼過ぎです。良く眠っておられましたので起こしませんでした。……お兄様より、最近あまり眠れていないようだと聞きましたので」
実際レイヴンをそのまま寝かせておくよう告げたのはレオナルドだった。レオナルドはアリシアが王都を出た後のレイヴンの様子をよく知っている。
食事が喉を通らず、酒を飲んで無理矢理眠っていたレイヴン。最近は酒を飲んでも眠れなくなっていた。その上で王都から昼夜駆けてきたのだから疲労が溜まっているだろう。
そのレイヴンが深く眠っているのだから、そのまま眠らせた方が良いと判断したのだ。
それにはアリシアも同感だった。
アリシアにもレイヴンを見ただけであまり眠れていないことがわかった。毎日顔を合わせていないだけ、その変貌ぶりが良くわかったとも言える。
濃い隈にこけた頬。顔色も良いとは言い難い。
少しでも休んで欲しいと思い、そのまま眠らせたのだ。
「そんな……。3日しかないのに、1日寝て過ごしたなんて……」
事態を把握したレイヴンが絶望的な表情になる。
レオナルドは5日後には王都へ戻るよう言っていた。
元からレイヴンに馬車で戻るつもりはない。普通に馬で駆けて2日。ぎりぎりまで急いでも1日半は掛かってしまう……。
「レイヴン様が元気でいて下さるのが一番ですわ。私、レイヴン様にどれだけ心配を掛けていたのか、身に沁みてわかりました」
眠っているレイヴンを見つめながら、アリシアは胸が締め付けられた。
顔色悪くすっかり痩せてしまったレイヴンが、疲れ切って眠っている。今、アリシアが感じている心の痛みを、レイヴンは何か月も抱えていたのだ。
「ご心配をお掛けして、本当に申し訳ありませんでした」
「アリシアが謝ることなんてないよ!!僕がもっとしっかりしていたら……」
頭を下げたアリシアにレイヴンが慌てて声を上げる。
そのままどちらともなく自然に抱き締め合っていた。
そんな2人に非情な声が掛けられたのは、割とすぐのことだ。
「殿下、湯浴みの用意を致しました。どうぞ浴室へお移り下さい」
「絶対嫌だっ!!アリシアと離れたくないっ!!」
レイヴンの抵抗する声が響いたのは言うまでもない。
横になっているレイヴンとは違ってアリシアはクッションを背に座っている。優しい手つきでレイヴンの髪を撫でてくれていた。
これは夢だ。
アリシアはアシェントへ行ってしまって王太子宮にいない。いや、王太子宮にいる時も、感情を見せなくなってしまっていた。もう何か月もアリシアの笑顔を見ていない……。
「えっ?!夢っ?!」
レイヴンが跳ね起きるとアリシアは小さく声を上げ、驚いた顔をする。
その声も表情も、それに手の感触もとても夢とは思えなかった。
呆然とするレイヴンにアリシアが微笑む。
「夢ではありません。おはようございます。レイヴン様」
その声に改めて辺りを見渡すと、見覚えのない部屋の中だ。
見覚えのない部屋の中で、見覚えのない侍女が控えている。
いや、あれは……。
「……マリアン?」
「そうですわ。アシェントまで会いに来て下さったこと、忘れてしまわれたのですか?」
「っ!!」
そう言われてすべて思い出した。
王宮の執務室で執務を行っていた時にアダムが訪ねて来たこと、アリシアが懐妊したと聞いてそのまま王宮を飛び出したこと。無我夢中で駆けた王都からの道のり。アシェントの公爵邸に着いてアリシアの寝室へ駆け込んだこと……。
「えっ!!今、何時っ?!」
確かアリシアは昼寝をすると言っていたはずだ。
そしてレイヴンは一緒に横になった。
アリシアと一緒に眠れる喜びと確かに感じる温もりにすっかり安心して幸せな気持ちで目を閉じたことは覚えている。
だけど窓から差し込む陽の光は、とても夕方のものとは思えなかった。
「朝になりました。レイヴン様がいらっしゃったのは昨日の昼過ぎです。良く眠っておられましたので起こしませんでした。……お兄様より、最近あまり眠れていないようだと聞きましたので」
実際レイヴンをそのまま寝かせておくよう告げたのはレオナルドだった。レオナルドはアリシアが王都を出た後のレイヴンの様子をよく知っている。
食事が喉を通らず、酒を飲んで無理矢理眠っていたレイヴン。最近は酒を飲んでも眠れなくなっていた。その上で王都から昼夜駆けてきたのだから疲労が溜まっているだろう。
そのレイヴンが深く眠っているのだから、そのまま眠らせた方が良いと判断したのだ。
それにはアリシアも同感だった。
アリシアにもレイヴンを見ただけであまり眠れていないことがわかった。毎日顔を合わせていないだけ、その変貌ぶりが良くわかったとも言える。
濃い隈にこけた頬。顔色も良いとは言い難い。
少しでも休んで欲しいと思い、そのまま眠らせたのだ。
「そんな……。3日しかないのに、1日寝て過ごしたなんて……」
事態を把握したレイヴンが絶望的な表情になる。
レオナルドは5日後には王都へ戻るよう言っていた。
元からレイヴンに馬車で戻るつもりはない。普通に馬で駆けて2日。ぎりぎりまで急いでも1日半は掛かってしまう……。
「レイヴン様が元気でいて下さるのが一番ですわ。私、レイヴン様にどれだけ心配を掛けていたのか、身に沁みてわかりました」
眠っているレイヴンを見つめながら、アリシアは胸が締め付けられた。
顔色悪くすっかり痩せてしまったレイヴンが、疲れ切って眠っている。今、アリシアが感じている心の痛みを、レイヴンは何か月も抱えていたのだ。
「ご心配をお掛けして、本当に申し訳ありませんでした」
「アリシアが謝ることなんてないよ!!僕がもっとしっかりしていたら……」
頭を下げたアリシアにレイヴンが慌てて声を上げる。
そのままどちらともなく自然に抱き締め合っていた。
そんな2人に非情な声が掛けられたのは、割とすぐのことだ。
「殿下、湯浴みの用意を致しました。どうぞ浴室へお移り下さい」
「絶対嫌だっ!!アリシアと離れたくないっ!!」
レイヴンの抵抗する声が響いたのは言うまでもない。
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