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第2部 6章
57 移動計画②
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今後の流れとしてはこうだ。
頃合いを見てアリシアの懐妊を公表する。
アリシアの体調不良はつわりのせいで、程度が酷かったので環境を変える為に王都を出たことにするのだ。
つまり公表していないだけでアリシアの懐妊は王都を出る前から判明していて、国王やレイヴンはそれを承知の上で送り出したことにする。そして体調が落ち着いたアリシアは王太子宮へ戻り、慣例通り王太子宮の産室で出産をする。王太子宮で生まれたことを印象付ける為にも、出産までひと月ほどは王太子宮で過ごして欲しい。
「アリシアの体調次第ではあるけど、8ヶ月目くらいには戻ってきて欲しい」
「はい。私もそれまでには戻りたいと思っています」
この子が王子なのか王女なのかわからないけれど、どちらであっても出自を疑われるようなことには絶対にしない。
アリシアの表情にはその決意が滲み出ていた。
「それじゃあ王領へ移る時機だけど……」
アリシアの懐妊を世間へ向けて公表するということは、アリシアが王都へ戻る時には国民全てが懐妊を知っているということだ。アリシアの居場所や乗る馬車は民たちから注目を浴びることになる。そうなる前に王領へ移らなくてはならない。
長距離の移動を2度しないといけないのは気掛かりだが、こればかりはどうしようもないことだ。
ただ王都から王領、もしくはアシェントへ向かうには馬車で4日の道のりだが、幸いなことにアシェントと王領を直接繋ぐ街道がある。行商の馬車が行き交う主要路としてルトビア公爵家が力を入れて整備したので、その道を使えばアシェントから王領まで2日で行けるのだ。1日目の宿を公爵領で取るともできる。
「医師殿、アリシアを王領へ移せるのはいつ頃になる?」
「はい。恐れながら現在は妊娠4ヶ月目かと存じます。ただこれまでの体調のこともあり、妃殿下の体力が戻っておりません。せめてあとひと月はこちらで療養し、体力をつけて頂きたいと存じます」
「そうか……」
レイヴンは考え込んだ。
来月になれば暦の上では冬である。寒さが厳しくなるし、雪が降れば移動が難しくなる。それに一度雪が積もれば雪解けまで数か月必要だろう。
それならば雪が降る前に移動しておくべきか。
「レイヴン様。私、あと3週間でしっかり体調を整え、体力を取り戻しますわ。今月末には王領へ参ります」
「アリシア……」
アリシアに無理はさせたくない。
だけどアリシアは、こうと決めたら絶対に守り抜く。
「……月末までしっかり食事をして体力をつけること。だけど駄目だと思えば絶対に無理しないで、当日でも日を変えるんだ。いいね?」
「はい。必ずお言葉に従います」
「医師殿も、医師の立場から見て無理だと思う時は必ず止めてくれ。結果がどうなったとしても医師殿を咎めることはない」
例えアシェントで子を生むことになったとしても…、という言葉を言外に匂わせると、医師は「かしこまりました」と恭しく頭を下げた。
「あの、公表の時期は……」
「アリシアが王領の城へ入ってからと思っている。だから城に着いたらすぐに知らせて欲しい」
「はい。かしこまりました」
王領への移動の時は、またオレリアとレオナルドにここへ来てもらい、同行してもらえばいい。
公爵家の馬車がアリシアの過ごす王領へ見舞いに訪れてもおかしくないのだから。
頃合いを見てアリシアの懐妊を公表する。
アリシアの体調不良はつわりのせいで、程度が酷かったので環境を変える為に王都を出たことにするのだ。
つまり公表していないだけでアリシアの懐妊は王都を出る前から判明していて、国王やレイヴンはそれを承知の上で送り出したことにする。そして体調が落ち着いたアリシアは王太子宮へ戻り、慣例通り王太子宮の産室で出産をする。王太子宮で生まれたことを印象付ける為にも、出産までひと月ほどは王太子宮で過ごして欲しい。
「アリシアの体調次第ではあるけど、8ヶ月目くらいには戻ってきて欲しい」
「はい。私もそれまでには戻りたいと思っています」
この子が王子なのか王女なのかわからないけれど、どちらであっても出自を疑われるようなことには絶対にしない。
アリシアの表情にはその決意が滲み出ていた。
「それじゃあ王領へ移る時機だけど……」
アリシアの懐妊を世間へ向けて公表するということは、アリシアが王都へ戻る時には国民全てが懐妊を知っているということだ。アリシアの居場所や乗る馬車は民たちから注目を浴びることになる。そうなる前に王領へ移らなくてはならない。
長距離の移動を2度しないといけないのは気掛かりだが、こればかりはどうしようもないことだ。
ただ王都から王領、もしくはアシェントへ向かうには馬車で4日の道のりだが、幸いなことにアシェントと王領を直接繋ぐ街道がある。行商の馬車が行き交う主要路としてルトビア公爵家が力を入れて整備したので、その道を使えばアシェントから王領まで2日で行けるのだ。1日目の宿を公爵領で取るともできる。
「医師殿、アリシアを王領へ移せるのはいつ頃になる?」
「はい。恐れながら現在は妊娠4ヶ月目かと存じます。ただこれまでの体調のこともあり、妃殿下の体力が戻っておりません。せめてあとひと月はこちらで療養し、体力をつけて頂きたいと存じます」
「そうか……」
レイヴンは考え込んだ。
来月になれば暦の上では冬である。寒さが厳しくなるし、雪が降れば移動が難しくなる。それに一度雪が積もれば雪解けまで数か月必要だろう。
それならば雪が降る前に移動しておくべきか。
「レイヴン様。私、あと3週間でしっかり体調を整え、体力を取り戻しますわ。今月末には王領へ参ります」
「アリシア……」
アリシアに無理はさせたくない。
だけどアリシアは、こうと決めたら絶対に守り抜く。
「……月末までしっかり食事をして体力をつけること。だけど駄目だと思えば絶対に無理しないで、当日でも日を変えるんだ。いいね?」
「はい。必ずお言葉に従います」
「医師殿も、医師の立場から見て無理だと思う時は必ず止めてくれ。結果がどうなったとしても医師殿を咎めることはない」
例えアシェントで子を生むことになったとしても…、という言葉を言外に匂わせると、医師は「かしこまりました」と恭しく頭を下げた。
「あの、公表の時期は……」
「アリシアが王領の城へ入ってからと思っている。だから城に着いたらすぐに知らせて欲しい」
「はい。かしこまりました」
王領への移動の時は、またオレリアとレオナルドにここへ来てもらい、同行してもらえばいい。
公爵家の馬車がアリシアの過ごす王領へ見舞いに訪れてもおかしくないのだから。
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