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第2部 6章
58 クッキー
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医師との話を終えた後は部屋でゆっくり過ごすことにした。
アリシアはいつもこの時間を読書や刺繍をして過ごしているらしい。
だけどどちらも根を詰めれば疲れてしまう。だからどちらも程ほどに、作品の完成や読み切ることを目標とはせず、横になりたくなったらそのままソファで横になっていたそうだ。
礼儀に厳しい公爵家では眉を顰められてしまいそうだが、今は普通の体調ではない。
だから誰も何も言わずに受け入れているのだろう。
「王宮でも同じ様にして良いよ?」
レイヴンがそう言うと、アリシアは恥ずかしそうに目を伏せた。
アリシアにとってそんな隙のある姿を見られるのは恥ずかしいことなのだろう。今もレイヴンの目を気にしてソファで横になるなんて考えられないに違いない。
だけどレイヴンとしては、それくらいリラックスした姿を見せて欲しい。
恥ずかしいといえば、レイヴンたちが座るソファのテーブルにはそれそれ紅茶が用意されていた。
その紅茶と共に、ガラスの容器に入ったクッキーがさり気なく置かれている。お茶請けとして出されたものではなく、アリシアが読書や刺繍をしながら摘まめるよう置かれているのだ。
ここの所アリシアの食欲が増していると聞いていた。
妊娠しているのだから当然のことだ。今もアリシアはクッキーへちらちらと視線を向けている。
お腹が空いているのだろうに、朝食をたっぷり食べて昼食の時間も近づいているのでレイヴンの手前、手を伸ばせずにいるのだ。
可愛いなぁ……。
心の中で呟いた後、レイヴンはクッキーへ視線を向けた。
「アリシア、あのクッキー食べても良い?」
「えっ?!ええ、勿論ですわ。すぐに用意を……」
「このままで良いよ」
慌ててマリアンへ皿に出すよう命じようとするアリシアを制してレイヴンはガラスの蓋を開ける。
クッキーを1つ摘まむとそのまま口へ入れた。
「美味しい!」
クッキーは見た目よりサクサクで、口の中に入れるとほろほろととけていく。
程よい甘さにレイヴンは思わず声を上げていた。アリシアが顔を綻ばせる。
「そうなのです。とても美味しいでしょう?実はそのクッキー、ロイ兄様が届けて下さいましたの」
「ロバートが?」
ロバートはキャンベル侯爵家の領地について、ジェーンと引継ぎを済ませた後は商会の仕事に戻ったと聞いていた。以前のようにアナトリアを避けて国外で過ごすということは無くなったが、1年以上商会の仕事を離れていたので、その空白を取り戻すように業務に勤しんでいるという。
そうなると結果として国外に出ていることが増える。今も外国にいるはずだ。
「はい。これはシェルツから送ってくださいました」
アリシアの懐妊が伝わったのか?と僅かな疑いが浮かぶが、懐妊がわかってから期間が短すぎる。レオナルドやアダムが知ってからでもまだ数日しか経っていないのだ。
恐らくこれはアリシアが食べられなくなったと聞いて、少しでも食べやすいものを、と送ってきたのだろう。緑色のクッキーはほうれん草を、紅色のクッキーは人参を使ったものだろうか。
「それじゃあアリシアの為のクッキーだ。僕よりアリシアが食べなきゃね」
レイヴンはそう言うと、クッキーを摘まんでアリシアの口元へ差し出した。
アリシアは一瞬驚いた顔をして、恥ずかしそうにマリアンへ視線を向ける。マリアンがそっぽを向いて素知らぬふりをしているのを見て小さく口を開いた。
レイヴンとは違って一口で食べることはできず、半分ほどでサクッと噛み切る。
恥ずかしそうに伏せられた目も、小さく咀嚼する口も、すべてが可愛い。
衝動的に抱き締めそうになる自分を何とか抑えて、レイヴンは残りのクッキーをアリシアの口へ運ぶ。
1つ食べ終えたら次はレイヴンが食べさせてもらう番だ。
「美味しいね」
2人は目を合わせて微笑み合った。
アリシアはいつもこの時間を読書や刺繍をして過ごしているらしい。
だけどどちらも根を詰めれば疲れてしまう。だからどちらも程ほどに、作品の完成や読み切ることを目標とはせず、横になりたくなったらそのままソファで横になっていたそうだ。
礼儀に厳しい公爵家では眉を顰められてしまいそうだが、今は普通の体調ではない。
だから誰も何も言わずに受け入れているのだろう。
「王宮でも同じ様にして良いよ?」
レイヴンがそう言うと、アリシアは恥ずかしそうに目を伏せた。
アリシアにとってそんな隙のある姿を見られるのは恥ずかしいことなのだろう。今もレイヴンの目を気にしてソファで横になるなんて考えられないに違いない。
だけどレイヴンとしては、それくらいリラックスした姿を見せて欲しい。
恥ずかしいといえば、レイヴンたちが座るソファのテーブルにはそれそれ紅茶が用意されていた。
その紅茶と共に、ガラスの容器に入ったクッキーがさり気なく置かれている。お茶請けとして出されたものではなく、アリシアが読書や刺繍をしながら摘まめるよう置かれているのだ。
ここの所アリシアの食欲が増していると聞いていた。
妊娠しているのだから当然のことだ。今もアリシアはクッキーへちらちらと視線を向けている。
お腹が空いているのだろうに、朝食をたっぷり食べて昼食の時間も近づいているのでレイヴンの手前、手を伸ばせずにいるのだ。
可愛いなぁ……。
心の中で呟いた後、レイヴンはクッキーへ視線を向けた。
「アリシア、あのクッキー食べても良い?」
「えっ?!ええ、勿論ですわ。すぐに用意を……」
「このままで良いよ」
慌ててマリアンへ皿に出すよう命じようとするアリシアを制してレイヴンはガラスの蓋を開ける。
クッキーを1つ摘まむとそのまま口へ入れた。
「美味しい!」
クッキーは見た目よりサクサクで、口の中に入れるとほろほろととけていく。
程よい甘さにレイヴンは思わず声を上げていた。アリシアが顔を綻ばせる。
「そうなのです。とても美味しいでしょう?実はそのクッキー、ロイ兄様が届けて下さいましたの」
「ロバートが?」
ロバートはキャンベル侯爵家の領地について、ジェーンと引継ぎを済ませた後は商会の仕事に戻ったと聞いていた。以前のようにアナトリアを避けて国外で過ごすということは無くなったが、1年以上商会の仕事を離れていたので、その空白を取り戻すように業務に勤しんでいるという。
そうなると結果として国外に出ていることが増える。今も外国にいるはずだ。
「はい。これはシェルツから送ってくださいました」
アリシアの懐妊が伝わったのか?と僅かな疑いが浮かぶが、懐妊がわかってから期間が短すぎる。レオナルドやアダムが知ってからでもまだ数日しか経っていないのだ。
恐らくこれはアリシアが食べられなくなったと聞いて、少しでも食べやすいものを、と送ってきたのだろう。緑色のクッキーはほうれん草を、紅色のクッキーは人参を使ったものだろうか。
「それじゃあアリシアの為のクッキーだ。僕よりアリシアが食べなきゃね」
レイヴンはそう言うと、クッキーを摘まんでアリシアの口元へ差し出した。
アリシアは一瞬驚いた顔をして、恥ずかしそうにマリアンへ視線を向ける。マリアンがそっぽを向いて素知らぬふりをしているのを見て小さく口を開いた。
レイヴンとは違って一口で食べることはできず、半分ほどでサクッと噛み切る。
恥ずかしそうに伏せられた目も、小さく咀嚼する口も、すべてが可愛い。
衝動的に抱き締めそうになる自分を何とか抑えて、レイヴンは残りのクッキーをアリシアの口へ運ぶ。
1つ食べ終えたら次はレイヴンが食べさせてもらう番だ。
「美味しいね」
2人は目を合わせて微笑み合った。
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