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第2部 6章
83 宝物②
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「レイヴン様」
アリシアは優しく呼びかけるとレイヴンをそっと抱き締める。
アリシアが鞭で打たれて怪我をしていたと知った時から、レイヴンは過剰なほどアリシアの怪我や病気を心配するようになった。
薔薇の棘で指先を切っただけでも大騒ぎしていたレイヴンだ。この1年程の間のことは、レイヴンにとって悪夢としか言いようがなかっただろう。
どんどん痩せて生気を失っていくアリシアをどんな気持ちで見ていたのだろうか。
原因や理由はわかっていてもレイヴンにはどうすることもできない。レイヴンにどれ程心配をかけ、心労を与えていたのか、アシェントへ駆けつけて来たレイヴンを見て、胸が痛くなる程だった。
そして最後に出産である。
痛み苦しむアリシアを見てレイヴンは取り乱していた。アリシアに何かあればと、本当に怖い思いをしていたのだろう。
「心配をかけてしまい、申し訳ありませんでした。ですが、私は大丈夫です。確かに出産の時は痛い思いをしました。この苦しみから早く逃れたいと思いましたわ。ですが、その苦しみに耐えたからこそクロウに会うことができました。レイヴン様はクロウが可愛いと思われませんか?」
「クロウは勿論可愛いよ!大切に思ってる!!だけど……っ」
「私もクロウが可愛いですわ。レイヴン様のおかげで素晴らしい宝物を得ることができました。そしてこれから先も……。叶うことならば2人、3人と、宝を増やしたいと思っています。その為であれば、私はどんなに苦しくても耐えられるでしょう」
「あの痛みは、耐える甲斐のある痛みですわ」とアリシアは力強く言い切った。
それは誇り高い王太子妃の言葉ではなく、1人の女性としての言葉だ。
王家の血を繋ぐ者が欲しいのではなく、レイヴンとの子が欲しい。
「それに……。私は以前、この行為を子を作る為だけのものだと思っていました。ですがそうではなく、互いに愛し合う為のものだと教えて下さったのはレイヴン様です。私を……、もう愛して下さらないのですか?」
「そんな……っ!」
レイヴンは思わず声を上げていた。
レイヴンだってアリシアを二度と抱けないなんて嫌だ。
愛しているし、愛し合いたい。……愛していると、伝えて欲しい。
「……ごめん、アリシア。アリシアを苦しめることになるとわかっていても愛し合いたい。アリシアを抱きたいと思う。……そんな自分が嫌なんだ」
「それでよろしいのですわ、レイヴン様。私もレイヴン様と愛し合いたいのです。それで子ができたとしたら、それは幸運です」
レイヴンはアリシアを苦しめると言った。
だけどアリシアはレイヴンに宝物を貰ったと言う。
レイヴンがアリシアに与えているのは苦痛ではなく宝なのだとわかって欲しい。
「レイヴン様にとってもクロウは宝物でしょう?愛し合って宝物を得ることができるなんて、なんて幸せなことでしょう」
「ね?」と微笑まれて、レイヴンの目から涙が零れ落ちた。
「愛してる、アリシア。心から愛している……っ」
「私も愛してますわ、レイヴン様。心から愛しています」
レイヴンはアリシアの肩に顔を埋めたままむせび泣いた。
アリシアが優しく背中を撫でる。
この人をこんなにも愛しいと思えることが幸福だと思いながら。
アリシアは優しく呼びかけるとレイヴンをそっと抱き締める。
アリシアが鞭で打たれて怪我をしていたと知った時から、レイヴンは過剰なほどアリシアの怪我や病気を心配するようになった。
薔薇の棘で指先を切っただけでも大騒ぎしていたレイヴンだ。この1年程の間のことは、レイヴンにとって悪夢としか言いようがなかっただろう。
どんどん痩せて生気を失っていくアリシアをどんな気持ちで見ていたのだろうか。
原因や理由はわかっていてもレイヴンにはどうすることもできない。レイヴンにどれ程心配をかけ、心労を与えていたのか、アシェントへ駆けつけて来たレイヴンを見て、胸が痛くなる程だった。
そして最後に出産である。
痛み苦しむアリシアを見てレイヴンは取り乱していた。アリシアに何かあればと、本当に怖い思いをしていたのだろう。
「心配をかけてしまい、申し訳ありませんでした。ですが、私は大丈夫です。確かに出産の時は痛い思いをしました。この苦しみから早く逃れたいと思いましたわ。ですが、その苦しみに耐えたからこそクロウに会うことができました。レイヴン様はクロウが可愛いと思われませんか?」
「クロウは勿論可愛いよ!大切に思ってる!!だけど……っ」
「私もクロウが可愛いですわ。レイヴン様のおかげで素晴らしい宝物を得ることができました。そしてこれから先も……。叶うことならば2人、3人と、宝を増やしたいと思っています。その為であれば、私はどんなに苦しくても耐えられるでしょう」
「あの痛みは、耐える甲斐のある痛みですわ」とアリシアは力強く言い切った。
それは誇り高い王太子妃の言葉ではなく、1人の女性としての言葉だ。
王家の血を繋ぐ者が欲しいのではなく、レイヴンとの子が欲しい。
「それに……。私は以前、この行為を子を作る為だけのものだと思っていました。ですがそうではなく、互いに愛し合う為のものだと教えて下さったのはレイヴン様です。私を……、もう愛して下さらないのですか?」
「そんな……っ!」
レイヴンは思わず声を上げていた。
レイヴンだってアリシアを二度と抱けないなんて嫌だ。
愛しているし、愛し合いたい。……愛していると、伝えて欲しい。
「……ごめん、アリシア。アリシアを苦しめることになるとわかっていても愛し合いたい。アリシアを抱きたいと思う。……そんな自分が嫌なんだ」
「それでよろしいのですわ、レイヴン様。私もレイヴン様と愛し合いたいのです。それで子ができたとしたら、それは幸運です」
レイヴンはアリシアを苦しめると言った。
だけどアリシアはレイヴンに宝物を貰ったと言う。
レイヴンがアリシアに与えているのは苦痛ではなく宝なのだとわかって欲しい。
「レイヴン様にとってもクロウは宝物でしょう?愛し合って宝物を得ることができるなんて、なんて幸せなことでしょう」
「ね?」と微笑まれて、レイヴンの目から涙が零れ落ちた。
「愛してる、アリシア。心から愛している……っ」
「私も愛してますわ、レイヴン様。心から愛しています」
レイヴンはアリシアの肩に顔を埋めたままむせび泣いた。
アリシアが優しく背中を撫でる。
この人をこんなにも愛しいと思えることが幸福だと思いながら。
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