【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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番外編2

鐘の音が告げるもの

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少し時間を遡ります!

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 カランカラン…… カランカラン……

 遠くから鐘の音が聞こえてくる。
 あれは隣町にある教会の鐘の音だ。毎日聞いているので覚えてしまった。

 だけどこんな時間に鐘の音?

 そう思った瞬間、この村にある教会の鐘が鳴り出した。

「あ!ちょっと、キャロル?!」 

 鐘の音を聞いたキャロルは反射的に走り出す。
 それまで話をしていたベンが驚いて声を上げたけれど、キャロルには聞こえていなかった。



 これは祝福の鐘の音だ。
 この国では王室の慶事と弔事が鐘の音で国中に伝えられる。
 だけど弔事の時はあんな軽やかな音はしない。これは王太子成婚の時に聞いた鐘と同じ音だった。
 そして今伝えられる王室の慶事といえば、王太子妃の出産しかない。 

 嫌だ!嫌だ!!嫌だっ!!!

 キャロルは走りながら心の中で叫ぶ。
 王都から遠く離れたこの村には、王都の噂が数ヶ月遅れて届く。つい最近王太子妃の懐妊を知ったばかりだ。
 その時も衝撃を受けたけれど、ここまで胸は痛まなかった。
 だから失恋の傷は癒えたのだと、この村で新しい人生を始められるのだと、ホッとしていたのに。 
 レイヴンへの想いは過去ではないと思い知らされた。





 キャロルは王都のグーリッド伯爵邸を出されてから、初めの1年くらいは領地にあるマナーハウスで暮らしていた。中央で権力ちからを持つルトビア公爵家の怒りを買ったといっても法的に処罰されるようなことをしたわけではない。領地でほとぼりが冷めるのを待ち、頃合いを見て田舎貴族に嫁がされるのだと思っていたし、父親のグーリッド伯爵もそう思っていたはずだ。
 次に持ちかけられる縁談は絶対に拒否することができないとわかっていたから、それまでの間少し退屈で、だけど自由な時間をのんびりと過ごしているつもりだった。

 その風向きが変わったのは、妹のディアナがレオナルドの婚約者に選ばれてからだ。
 ディアナは姉が犯した失態を取り戻そうと必死に努めたのだろう。次第に公爵夫人やレオナルドに認められ、受け入れられていく。
 今ではアリシアにも気に入られ、王太子宮に出入りしているという。兄のエディもレオナルドの推薦で宮廷で職を得ることができた。
 グーリッド伯爵家もいずれ公爵家の縁戚として高い地位に就けるのではないか……グーリッド伯爵がそんな夢を見始めた時に、引っかかったのがキャロルだった。

 レオナルドはディアナと良い関係を築いている。一緒に伯爵領を訪れることがあるかもしれない。
 そんな時にマナーハウスで悠々と過ごすキャロルを見たらどう思うのか。折角上手くいっている関係が壊れてしまうかもしれない。
 それを恐れた伯爵は、キャロルを領地の端にある村へ移すことに決めた。

 この村へ移されてからキャロルは放って置かれている。
 小さな邸にいるのは数人の侍女と護衛だけで、料理人すら通いの者だ。
 キャロルの将来はこの村の邸で嫁かず後家としてひっそり暮らすか、村の青年と結婚して伯爵家とは関係のない者になるか、それしかない。キャロルはそんな将来を受け入れている。





 キャロルは王太子妃出産の報せに浮かれている村人たちの間を抜けて小高い丘に出た。
 人気のない雑木林に背中を預けて乱れた息を吐く。
 鼓動が激しく打っているのは走ったからだけではない。ひとりでに涙が溢れ出すのも走ったからではなかった。
 


 キャロルは自分の将来を受け入れていた。
 いずれこの村の青年と結婚して伯爵家とは関係ない者になる。
 最近ベンとは良い雰囲気になってきていた。自きっとベンと結ばれて、それなりに幸せになれるだろう。
 そう思っていたのに。

 涙が次から次へと溢れてくる。
 例えアリシアが子を産まなかったとしても、自分が選ばれる未来はなかった。
 そうわかっているのに、突き刺すような胸の痛みは治まらない。

 キャロルはそのまま声を上げて泣いた。
 ベンと暮らす将来なんて、もう頭から消えていた。





 その後、キャロルは小さな邸に籠って過ごすようになった。
 心配したベンが何度も訪ねてきていたけれど、キャロルが顔を見せることはなかった。
 そして数年後、ベンが同じ村の女性と結婚したという噂を聞いた――。





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以前『夢が叶うとき』の後に書こうとして挫折したお話です!
書いても書いても駄目な時は最初からやり直したら書けるのだ!

という訳で元々書いてたものと同じあらすじなのに、以前のまま残っているのは「カランカラン…… カランカラン……」と「嫌だ!嫌だ!!嫌だっ!!!」の2行だけ……(笑)





 
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