【本編完結】幸福のかたち【R18】

朱里 麗華(reika2854)

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番外編2

小さな不和

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 王太子宮はマーレット王女が生まれてから何かと騒がしい。

 大量に届けられる貴族たちからの贈り物や誕生を祝う舞踏会、新たに雇われた王女の乳母や専属侍女たち…。
 だけどそれだけではなく、騒がしさの中心は間違いなくレイヴンだった。


「ふわ~ぁ」

「小さなアリシアがあくびしてる!可愛い!!」

「私ではありません、レイヴン様」



「はくちっ!」

「小さなアリシアがくしゃみしてるよ!可愛い~~~っ!!」

「ですから、私ではありません。レイヴン様」



 マーレットが生まれてから、レイヴンはすっかり虜になっている。
 アリシアをそのまま幼くしたような顔をしているので、見ることができなかったアリシアの幼い頃を見ているような気になるらしい。

 確かに完璧な貴婦人となったアリシアがレイヴンの前であくびをすることはない。気を許しているように見えてもそんなところは徹底している。くしゃみや咳は生理現象なので出てしまうこともあるが、それでも最低限で、扇などで上手く隠してしまうのだ。
 だからレイヴンは、アリシアの普段見れない姿をマーレットに求めてしまうのだろう。



「やれやれ。殿下は妻と娘の見分けもつかないようですね」

 呆れたように言うのはレオナルドだ。
 そんなことを言いながら、レオナルドもマーレットが生まれたばかりの頃はアリシアのようだと言って可愛がっていた。ただこちらはアリシアが、「お兄様の妹は私なのに……。忘れてしまわれたのね」と拗ねてみせたので早々に治まったのだ。

「淋しいなら殿下にも言えば良いでしょう。殿下なら喜びこそすれ、気分を害されることはありませんよ」

 ロバートが可笑しそうに笑う。
 だけどレイヴンに甘えるのはまだまだ不得手なアリシアなのだ。拗ねてみせたりしたら恥ずかしくてレイヴンの顔を見られなくなってしまう。
 顔を赤らめて俯くアリシアを「可愛いなぁ」と眺める兄バカ2人だった。




 ロバートが滞在していたシェルツから急いで戻ったのは、アリシアの出産を祝う為だ。
 本来ならマリアンも休暇を取って良いのだが、マリアンは普段通り働くことを希望していた。それはクロウの様子が気になったからである。

 妹が生まれたことで周りの関心を奪われたクロウは、情緒不安定になっていた。
 アリシアと離れるのを嫌がり、子ども部屋へ戻そうとすると泣き喚いて抵抗をする。アリシアが子ども部屋を訪れた時は、「かぁちゃま、かぁちゃま」と気を惹こうと一生懸命だ。

 アリシアもレイヴンも、クロウへの興味を失くしてしまったわけではない。マーレットもクロウもそれぞれ可愛いと思っている。だけどレイヴンはちょっとだけマーレットへの興味が強くなってしまっているのだ。
 そしてクロウは正確にそれを感じ取っている。
 
「本当に……。困ったおとうちゃまですね」

 ロバートは膝に抱いたクロウへそう語りかけると、そっと旋毛に口づけた。
 




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