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2章 ~過去 カールとエリザベート~
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ルイが魅了したのはカールとエリザベートだけではなかった。
乳母は元より、薔薇の宮で働く使用人たちは皆ルイの愛らしさに惹きつけられていく。
それはダシェンボード公爵家の者たちも皆同じだ。
公爵や2人の兄は王宮で職務に就いているので普段は中々顔を出せないが、休日になると妻と共にやってくる。公爵夫人と2人の義姉は普段から何かと理由をつけて来ているので、薔薇の宮にすっかり馴染んで使用人たちとも仲良くなっていた。
公爵夫人たちは、薔薇の宮を訪れるたびにルイへ手土産を持ってくる。公爵領で有名なのはレース編みだが、彼女たちは刺繍も縫い物も編み物も貴婦人が嗜むものは何でも得意なのだ。
日に日に増えていくベビー服や靴下、帽子や手袋、涎掛けにエリザベートは笑うしかない。
「しばらくルイちゃまのお買い物はしなくて良さそうね」
エリザベートがそう呼び掛けると、ルイは嬉しそうに声を上げた。
エリザベートの出産は貴族の間でも広まっていた。元々エリザベートの懐妊はお茶会に呼ばれた貴婦人たちから広められているのだ。
そのお茶会が開かれなくなり、「もしや」と思っているところに隙間時間を縫って薔薇の宮へ文字通り駆けていくカールの姿が見られるようになったのだ。これはもう間違いない。そうなると次に重要なのは生まれたのが王子か王女かである。
貴族たちはこぞって薔薇の宮を探らせ、下働きに金を掴ませて王子だと聞き出すと我先に贈り物を届けさせた。
第一王子の存在は王都の貴族を中心にして広く知られたのだ。
ルイの誕生から2月後、離宮へ移った前国王夫妻が薔薇の宮を訪れた。
勿論初孫に会う為だ。
カールはルイが生まれてすぐに離宮へ知らせていた。このタイミングで訪れたのは、体調を崩して寝込んだエリザベートを慮ったからである。前国王夫妻を迎えるのは精神的に重圧が掛かるとわかっているのだ。
そしてエリザベートはこの日に床上げをした。
寝室で横になったまま前国王夫妻を迎えるわけにはいかない。
長く休んだ公務に戻る良い切っ掛けとなった。
「まあまあまあ!可愛いわねぇ」
前王妃はルイを見るなり声を上げた。
今日ルイがいるのは子ども部屋のベッドの上だ。初めて見る知らない大人をきょとんとして見返している。
知らない大人でも父親に似たところがあるからだろうか。抱き上げられても少しも嫌がる素振りを見せなかった。
「まあ、可愛い。なんて良い子なのでしょう」
前王妃は嬉しそうにルイをあやす。涎のついた手でドレスを触られても気にならないようだ。
その隣から前国王が恐る恐る頭を撫でる。
「……赤子とはこんなに小さいのだな」
「まあ!あなたには3人も子がいるでしょう」
「……時間が経ち過ぎて忘れてしまったのだ」
そんな夫婦のやり取りに思わず笑ってしまう。
ルイは祖父も気に入った様子で「きゃ~あ!」と手を振り回した。
乳母は元より、薔薇の宮で働く使用人たちは皆ルイの愛らしさに惹きつけられていく。
それはダシェンボード公爵家の者たちも皆同じだ。
公爵や2人の兄は王宮で職務に就いているので普段は中々顔を出せないが、休日になると妻と共にやってくる。公爵夫人と2人の義姉は普段から何かと理由をつけて来ているので、薔薇の宮にすっかり馴染んで使用人たちとも仲良くなっていた。
公爵夫人たちは、薔薇の宮を訪れるたびにルイへ手土産を持ってくる。公爵領で有名なのはレース編みだが、彼女たちは刺繍も縫い物も編み物も貴婦人が嗜むものは何でも得意なのだ。
日に日に増えていくベビー服や靴下、帽子や手袋、涎掛けにエリザベートは笑うしかない。
「しばらくルイちゃまのお買い物はしなくて良さそうね」
エリザベートがそう呼び掛けると、ルイは嬉しそうに声を上げた。
エリザベートの出産は貴族の間でも広まっていた。元々エリザベートの懐妊はお茶会に呼ばれた貴婦人たちから広められているのだ。
そのお茶会が開かれなくなり、「もしや」と思っているところに隙間時間を縫って薔薇の宮へ文字通り駆けていくカールの姿が見られるようになったのだ。これはもう間違いない。そうなると次に重要なのは生まれたのが王子か王女かである。
貴族たちはこぞって薔薇の宮を探らせ、下働きに金を掴ませて王子だと聞き出すと我先に贈り物を届けさせた。
第一王子の存在は王都の貴族を中心にして広く知られたのだ。
ルイの誕生から2月後、離宮へ移った前国王夫妻が薔薇の宮を訪れた。
勿論初孫に会う為だ。
カールはルイが生まれてすぐに離宮へ知らせていた。このタイミングで訪れたのは、体調を崩して寝込んだエリザベートを慮ったからである。前国王夫妻を迎えるのは精神的に重圧が掛かるとわかっているのだ。
そしてエリザベートはこの日に床上げをした。
寝室で横になったまま前国王夫妻を迎えるわけにはいかない。
長く休んだ公務に戻る良い切っ掛けとなった。
「まあまあまあ!可愛いわねぇ」
前王妃はルイを見るなり声を上げた。
今日ルイがいるのは子ども部屋のベッドの上だ。初めて見る知らない大人をきょとんとして見返している。
知らない大人でも父親に似たところがあるからだろうか。抱き上げられても少しも嫌がる素振りを見せなかった。
「まあ、可愛い。なんて良い子なのでしょう」
前王妃は嬉しそうにルイをあやす。涎のついた手でドレスを触られても気にならないようだ。
その隣から前国王が恐る恐る頭を撫でる。
「……赤子とはこんなに小さいのだな」
「まあ!あなたには3人も子がいるでしょう」
「……時間が経ち過ぎて忘れてしまったのだ」
そんな夫婦のやり取りに思わず笑ってしまう。
ルイは祖父も気に入った様子で「きゃ~あ!」と手を振り回した。
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