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2章 ~過去 カールとエリザベート~
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こんな穏やかな日々が続いていくのだと思っていたエリザベートだったが、そうでもなかった。
ルイは体の弱い子どもで、すぐに熱を出す。
季節の変わり目には必ず風邪をひいて、夏の暑い時も肌寒くなった時も風邪をひく。風をこじらせて肺炎を起こすことも度々あった。
こんなに頻繁に風邪をひくなんてどこか悪いのではないかと侍医たちが熱心に調べてくれたが、特別な病名があるわけではなく虚弱体質であるようだ。
ルイが高熱を出して寝込む度にエリザベートは胸が潰れるような思いをする。
ルイの体が弱いのはエリザベートの体質を受け継いだからではないかと思うからだ。
「ごめんね、ルイ。ごめんね……」
エリザベートはいつも泣きながらルイの看病にあたった。
何より辛いのは苦しんでいるルイの傍にずっと付いていられないことだ。毎日公務へ行かなくてはならない。
「やぁ……、やっ」
母と離れたがらずに泣くルイをそっと抱き締める。
「ごめんね、ルイ……。執務が終わったらすぐに帰ってくるからね」
頭を撫で、背中を撫でて額に口づける。
母を求めて泣き叫ぶ声を振り切るようにして執務室へ向かった。
病気ばかりをしているからだろうか。ルイは同じ歳の子に比べて発育が遅かった。
1歳になっても自力で座ることができず、言葉も中々出てこない。1人で歩けるようになったのは2歳を過ぎてからだ。
だけどそれがなんだというのだろうか。
元気な時は良く動き、一生懸命おしゃべりをして良く笑う。
庭園で昆虫を見つけてはエリザベートに見せようとして、エリザベートが悲鳴を上げそうになることもあった。
そんな時はすぐにカールが間に入ってくれる。
「母様は虫が苦手なんだ。父様に見せてくれ」
「あいっ!」
ルイが歩くようになると、薔薇の宮の庭園は本当に子を育てる為の場所だと感じた。
子どもが触れて怪我をするような薔薇は遠い奥地にあり、子どもの姿を隠す生垣もない。離宮に沿った場所には花壇が作られているが、少し歩くと広い芝生になる。小さな子どもが駆けまわるには最高の場所だ。
薔薇の宮は子どもが育つべき離宮なのだ。
「日が傾いてきた。そろそろ戻ろうか」
カールに呼びかけられてエリザベートは頷いた。
木の陰にシートを敷いて、3人で食事を摂った後は芝生を駆けて遊ぶルイとカールを眺めていた。
ルイは時々エリザベートの元へ戻って来ては摘んだ花やどんぐりを渡してくれる。シートの上はルイが集めた花やどんぐりでいっぱいだ。
エリザベートが立ち上がると、侍女たちが花を束ねて渡してくれた。ルイの乳母はどんぐりを袋に詰めている。
「やぁなの!」
ルイの大きな声がしてそちらを見ると、抱き上げようとするカールに抵抗していた。
いやいやと体をねじり、腕から逃れようとする。
「なんだ、歩きたいのか?」
「あいっ!」
カールが呆れたように笑う。
そのまま好きにさせると決めたようでエリザベートへ振り向いた。
エリザベートが傍まで来ると腰を抱いて歩き出す。ルイは2人の前を先導するように歩いている。
だけどそれは長く続かなかった。元々芝生で駆けていたので疲れているのだ。
花壇の辺りまで来たところでぺたんと座り込む。
「だっこぉ」
涙目でカールを見上げるルイのなんて可愛いことか。
この子がこの世で一番可愛い。
エリザベートはその思いを新たにした。
ルイは体の弱い子どもで、すぐに熱を出す。
季節の変わり目には必ず風邪をひいて、夏の暑い時も肌寒くなった時も風邪をひく。風をこじらせて肺炎を起こすことも度々あった。
こんなに頻繁に風邪をひくなんてどこか悪いのではないかと侍医たちが熱心に調べてくれたが、特別な病名があるわけではなく虚弱体質であるようだ。
ルイが高熱を出して寝込む度にエリザベートは胸が潰れるような思いをする。
ルイの体が弱いのはエリザベートの体質を受け継いだからではないかと思うからだ。
「ごめんね、ルイ。ごめんね……」
エリザベートはいつも泣きながらルイの看病にあたった。
何より辛いのは苦しんでいるルイの傍にずっと付いていられないことだ。毎日公務へ行かなくてはならない。
「やぁ……、やっ」
母と離れたがらずに泣くルイをそっと抱き締める。
「ごめんね、ルイ……。執務が終わったらすぐに帰ってくるからね」
頭を撫で、背中を撫でて額に口づける。
母を求めて泣き叫ぶ声を振り切るようにして執務室へ向かった。
病気ばかりをしているからだろうか。ルイは同じ歳の子に比べて発育が遅かった。
1歳になっても自力で座ることができず、言葉も中々出てこない。1人で歩けるようになったのは2歳を過ぎてからだ。
だけどそれがなんだというのだろうか。
元気な時は良く動き、一生懸命おしゃべりをして良く笑う。
庭園で昆虫を見つけてはエリザベートに見せようとして、エリザベートが悲鳴を上げそうになることもあった。
そんな時はすぐにカールが間に入ってくれる。
「母様は虫が苦手なんだ。父様に見せてくれ」
「あいっ!」
ルイが歩くようになると、薔薇の宮の庭園は本当に子を育てる為の場所だと感じた。
子どもが触れて怪我をするような薔薇は遠い奥地にあり、子どもの姿を隠す生垣もない。離宮に沿った場所には花壇が作られているが、少し歩くと広い芝生になる。小さな子どもが駆けまわるには最高の場所だ。
薔薇の宮は子どもが育つべき離宮なのだ。
「日が傾いてきた。そろそろ戻ろうか」
カールに呼びかけられてエリザベートは頷いた。
木の陰にシートを敷いて、3人で食事を摂った後は芝生を駆けて遊ぶルイとカールを眺めていた。
ルイは時々エリザベートの元へ戻って来ては摘んだ花やどんぐりを渡してくれる。シートの上はルイが集めた花やどんぐりでいっぱいだ。
エリザベートが立ち上がると、侍女たちが花を束ねて渡してくれた。ルイの乳母はどんぐりを袋に詰めている。
「やぁなの!」
ルイの大きな声がしてそちらを見ると、抱き上げようとするカールに抵抗していた。
いやいやと体をねじり、腕から逃れようとする。
「なんだ、歩きたいのか?」
「あいっ!」
カールが呆れたように笑う。
そのまま好きにさせると決めたようでエリザベートへ振り向いた。
エリザベートが傍まで来ると腰を抱いて歩き出す。ルイは2人の前を先導するように歩いている。
だけどそれは長く続かなかった。元々芝生で駆けていたので疲れているのだ。
花壇の辺りまで来たところでぺたんと座り込む。
「だっこぉ」
涙目でカールを見上げるルイのなんて可愛いことか。
この子がこの世で一番可愛い。
エリザベートはその思いを新たにした。
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