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4章 〜過去 崩れゆく世界〜
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一方その頃、ルイザは浮かれていた。
一般的に見て月に一度か二度の訪問というのは決して多い数ではないが、懐妊がわかってから出産まで一度も来なかったことを思えば飛躍的に増えている。
やはり子どもの存在は大きいのだ。
「今日は陛下はいらっしゃるかしら?きっといらっしゃるわよね?」
「そうですね……。いらっしゃると良いですね」
最近毎朝ルイザは同じ事を言う。
ミザリーは慎重に答えを選ばなければならない。
以前より良く来るようになったといっても月に一度か二度なのだ。ルイザの期待は大抵外れることになる。
夜遅くなるまで待って待って、そろそろ湯浴みをするよう声を掛けるミザリーに「なんで来ないのよ?!」と爆発する……そんな日の方が多い。
「陛下はギデオンを愛して下さっているわ。そうでしょう?」
毎日朝食後と夕方の二度子ども部屋を訪れるルイザは、夕方ギデオンの様子を見ながらマクレガー伯爵夫人とお茶をするようになっていた。
ルイザの話はいつもカールの愛情を確認するようなことばかりだ。
だけどマクレガー伯爵夫人もカールのギデオンへ向けた愛情を疑っていなかった。だからこれには確信を持って応える。
「ええ、勿論ですわ。陛下はギデオン様を愛しておられます」
その応えにルイザは満足そうに頷いた。
マクレガー伯爵夫人はルイザにとって姉のような存在だ。ルイザの話を良く聞き、安心させてくれる。
ギデオンが熱を出して、カールが何度も来るのを喜んでいた時は、「殿下がご病気なのですから不謹慎ですよ」と窘めてくれた。
確かに我が子が苦しんでいるのに喜んだのは悪かった。
熱で赤い顔のギデオンは苦しそうで申し訳なくなった。
それにカールは本当にギデオンを心配していた。もし喜んでいるルイザを見られていたら、余計に嫌われていただろう。そうなる前に注意してくれた伯爵夫人にルイザは感謝していた。
ルイザは今でもカールの愛情を諦めていない。
今はギデオンのことばかりだが、何度も会っていればその内ルイザのことも見てくれると信じて起きられるようになってから勉強を再開していた。
カールが百合の宮に来るようになっても、ギデオンに関する話合いばかりでルイザとの時間はなかった。
だけどギデオンに関することはルイザにも聞く権利がある。
だからルイザはいつもカールの隣に座って話を聞いていた。
ルイザに意見を求められることはなかったが、 それでもルイザは満足していた。その内隣を見て、「お茶を飲もうか」と誘ってくれると信じているからだ。
「今日は隣国で人気という詩集を読みましたの。聞いて下さいな」
そしてルイザは美しい詩を諳んじてみせた。
カールに披露する時の練習というように。
一般的に見て月に一度か二度の訪問というのは決して多い数ではないが、懐妊がわかってから出産まで一度も来なかったことを思えば飛躍的に増えている。
やはり子どもの存在は大きいのだ。
「今日は陛下はいらっしゃるかしら?きっといらっしゃるわよね?」
「そうですね……。いらっしゃると良いですね」
最近毎朝ルイザは同じ事を言う。
ミザリーは慎重に答えを選ばなければならない。
以前より良く来るようになったといっても月に一度か二度なのだ。ルイザの期待は大抵外れることになる。
夜遅くなるまで待って待って、そろそろ湯浴みをするよう声を掛けるミザリーに「なんで来ないのよ?!」と爆発する……そんな日の方が多い。
「陛下はギデオンを愛して下さっているわ。そうでしょう?」
毎日朝食後と夕方の二度子ども部屋を訪れるルイザは、夕方ギデオンの様子を見ながらマクレガー伯爵夫人とお茶をするようになっていた。
ルイザの話はいつもカールの愛情を確認するようなことばかりだ。
だけどマクレガー伯爵夫人もカールのギデオンへ向けた愛情を疑っていなかった。だからこれには確信を持って応える。
「ええ、勿論ですわ。陛下はギデオン様を愛しておられます」
その応えにルイザは満足そうに頷いた。
マクレガー伯爵夫人はルイザにとって姉のような存在だ。ルイザの話を良く聞き、安心させてくれる。
ギデオンが熱を出して、カールが何度も来るのを喜んでいた時は、「殿下がご病気なのですから不謹慎ですよ」と窘めてくれた。
確かに我が子が苦しんでいるのに喜んだのは悪かった。
熱で赤い顔のギデオンは苦しそうで申し訳なくなった。
それにカールは本当にギデオンを心配していた。もし喜んでいるルイザを見られていたら、余計に嫌われていただろう。そうなる前に注意してくれた伯爵夫人にルイザは感謝していた。
ルイザは今でもカールの愛情を諦めていない。
今はギデオンのことばかりだが、何度も会っていればその内ルイザのことも見てくれると信じて起きられるようになってから勉強を再開していた。
カールが百合の宮に来るようになっても、ギデオンに関する話合いばかりでルイザとの時間はなかった。
だけどギデオンに関することはルイザにも聞く権利がある。
だからルイザはいつもカールの隣に座って話を聞いていた。
ルイザに意見を求められることはなかったが、 それでもルイザは満足していた。その内隣を見て、「お茶を飲もうか」と誘ってくれると信じているからだ。
「今日は隣国で人気という詩集を読みましたの。聞いて下さいな」
そしてルイザは美しい詩を諳んじてみせた。
カールに披露する時の練習というように。
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