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4章 〜過去 崩れゆく世界〜
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目を覚ましたエリザベートは何も覚えていなかった。
エリザベートとしてはただ眠っていただけのようで、心配そうに見つめるカールを不思議そうに見つめ返す。何故庭園に居たのかと聞いても、自分が庭園に居たことが信じられないようだった。
この件は夜が明けるとダシェンボード公爵家にも伝えられた。
ダシェンボード公爵家からルヴエル伯爵家にも伝わったようで、公爵家と伯爵家の大人たちが薔薇の宮を訪ねてくる。一日静養するよう言われたエリザベートはベッドの中で訪問を受けた。
「リズ、一体何があったの?!」
「体は大丈夫なのか?!」
「それが、よくわからないの。噴水のところに居たそうなんだけど……」
慌てた様子の両親や兄たちに申し訳なく思いながらエリザベートが応える。
カールにも何故そこへ行ったのか聞かれたけれど、エリザベートにもわからないのだ。だが目覚めた時には足が傷だらけで侍医に薬を塗られていた。今もヒリヒリしているので外へ出ていたのは事実なのだと受け止めている。
「私はルイと遊んでいたの。びっくりするくらい元気で、私を色んなところへ引っ張っていくのよ」
エリザベートはそれが夢の中の出来事だと今はわかっていた。
だけど夢の中にいる時はそれが現実のように思える。
ずっと夢の中にいられたら良いのに。
そんな思いが強くなっていることにこの時のエリザベートは気がついていなかった。
それからもエリザベートは夢の中であったルイとの思い出話を続けた。
ここではない何処かを見ているエリザベートは、話を聞く皆の顔が暗くなっていくのに気づかなかった。
その頃カールは執務室で頭を抱えていた。
処理しなければならない書類が積まれているのに全く集中できない。
頭を占めているのはエリザベートのことだ。
とうとうエリザベートは意識のないまま外へ出てしまった。
こんなことが続けばいずれ悲惨なことが起こるだろう。
何か、エリザベートの気持ちを慰められることがあれば良いが、思い浮かぶことはない。
エリザベートに子を与えてやることはできないのだ。
ーーー子を与える?
この時カールに頭に「養子」という言葉が浮かんだ。
だけど王妃が養子を迎えるとは、王位継承者を迎えるということだ。マクロイド公爵には既に断られている。
ギデオンも生まれているのに、継承権を持つ子を迎えれば混乱するだけだろう。そんなことは認められない。
ーーーーだけど継承権を持たない子どもなら?
王位を譲らないのであれば女の子でも良いのかもしれない。
いや、駄目だ。
カールは大きく頭を振った。
そんな子どもを何処から連れて来るというのか。
両親を亡くした遠縁の子を養育する貴族の話は聞いたことがある。
だけど王家に連なる者で両親を亡くした子どもの話を聞いたことがなかった。
エリザベートは孤児院の慰問を続けているが、王妃が平民の孤児を引き取るわけにもいかない。そんなことをしてもその子が偏見の中で辛い思いをするだけだ。
継承権を持たず、王妃に育てられても貴族たちに悪意を向けられないような血筋の子ーーーー。
カールの頭にダシェンボード公爵家の末子が浮かんだ。
エリザベートとしてはただ眠っていただけのようで、心配そうに見つめるカールを不思議そうに見つめ返す。何故庭園に居たのかと聞いても、自分が庭園に居たことが信じられないようだった。
この件は夜が明けるとダシェンボード公爵家にも伝えられた。
ダシェンボード公爵家からルヴエル伯爵家にも伝わったようで、公爵家と伯爵家の大人たちが薔薇の宮を訪ねてくる。一日静養するよう言われたエリザベートはベッドの中で訪問を受けた。
「リズ、一体何があったの?!」
「体は大丈夫なのか?!」
「それが、よくわからないの。噴水のところに居たそうなんだけど……」
慌てた様子の両親や兄たちに申し訳なく思いながらエリザベートが応える。
カールにも何故そこへ行ったのか聞かれたけれど、エリザベートにもわからないのだ。だが目覚めた時には足が傷だらけで侍医に薬を塗られていた。今もヒリヒリしているので外へ出ていたのは事実なのだと受け止めている。
「私はルイと遊んでいたの。びっくりするくらい元気で、私を色んなところへ引っ張っていくのよ」
エリザベートはそれが夢の中の出来事だと今はわかっていた。
だけど夢の中にいる時はそれが現実のように思える。
ずっと夢の中にいられたら良いのに。
そんな思いが強くなっていることにこの時のエリザベートは気がついていなかった。
それからもエリザベートは夢の中であったルイとの思い出話を続けた。
ここではない何処かを見ているエリザベートは、話を聞く皆の顔が暗くなっていくのに気づかなかった。
その頃カールは執務室で頭を抱えていた。
処理しなければならない書類が積まれているのに全く集中できない。
頭を占めているのはエリザベートのことだ。
とうとうエリザベートは意識のないまま外へ出てしまった。
こんなことが続けばいずれ悲惨なことが起こるだろう。
何か、エリザベートの気持ちを慰められることがあれば良いが、思い浮かぶことはない。
エリザベートに子を与えてやることはできないのだ。
ーーー子を与える?
この時カールに頭に「養子」という言葉が浮かんだ。
だけど王妃が養子を迎えるとは、王位継承者を迎えるということだ。マクロイド公爵には既に断られている。
ギデオンも生まれているのに、継承権を持つ子を迎えれば混乱するだけだろう。そんなことは認められない。
ーーーーだけど継承権を持たない子どもなら?
王位を譲らないのであれば女の子でも良いのかもしれない。
いや、駄目だ。
カールは大きく頭を振った。
そんな子どもを何処から連れて来るというのか。
両親を亡くした遠縁の子を養育する貴族の話は聞いたことがある。
だけど王家に連なる者で両親を亡くした子どもの話を聞いたことがなかった。
エリザベートは孤児院の慰問を続けているが、王妃が平民の孤児を引き取るわけにもいかない。そんなことをしてもその子が偏見の中で辛い思いをするだけだ。
継承権を持たず、王妃に育てられても貴族たちに悪意を向けられないような血筋の子ーーーー。
カールの頭にダシェンボード公爵家の末子が浮かんだ。
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