「陛下、子種を要求します!」~陛下に離縁され追放される七日の間にかなえたい、わたしのたったひとつの願い事。その五年後……~

ぽんた

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「それなのに、陛下はどうしてわたしと夫婦になったのかって? わたしを正妃にしたのかって? 答えは、人質であるわたしを守るため。ただの人質より、国王の正妃であった方がまだマシだから。とはいえ、それでも王宮での扱いはけっしていいものではなかったけれど」

 いいものではなかったどころか、悲惨だった。

 しかし、それはルーカスにいったところで仕方がない。

 というか、陛下はわたしを暗殺や誘拐などほんとうの意味での危険から守ろうとしてくれたのだ。

 日々のちょっとした虐めやいびりや蔑みや虐待などからではなく。

「陛下のやさしさだった。わたしはそう信じている」

 本人からそう言われたわけではない。あくまでもわたしの推測である。

 そのことに気がついたのは、ほんとうについ最近のこと。気がつかない可能性だってあった。

「よかった」
「え、なんですって?」

 ルーカスのつぶやきに、体ごと彼に向いていた。

 聞き間違えたかと思ったからである。

「マコ。おれは、きみのことがずっと気になっていた」
「なんですって?」

 バカみたいに同じ言葉を叫んでしまった。

「きみを人質としてわが国に送ることは、おれの考えだったんだ。きみの祖国とわが国との条約や同盟は、あくまでも一時的なもの。きみの祖国は、かならずや裏切り、牙をむいてくる。そのことは、おれたちみんなわかっていた。きみの両親やその家臣たちも含めてね。だからこそ、きみを助けたかった。なにがなんでもきみ助けたくなった。戦い一筋で頭のよくないおれが、あの場でとっさに思いついたのがきみを人質にすればいいということだ。そして、うまくいった。しかし、まさか国王がきみを正妃に迎えるとは思いもしなかった」

 ルーカスは、両肩をすくめた。

 彼の体が引き締まっていることは、こざっぱりした白いシャツとベスト、黒色のズボンの上からでもよくわかる。

「以降、つねにきみのことを気にしていた。気になりすぎて、負けそうになったこともあったほどだ。が、噂ではきみと国王との関係は冷え切っている。というか、国王はきみを遠ざけているとのことだった。だから、おれも国王がきみを正妃にした理由をなんとなく推測してはいた。そして、なにか理由をつけてはきみの様子を探りに帰国した」

 彼の美貌に苦笑が浮かんだ。

「今回のことは、国王の頼みだから引き受けたわけではない。きみだからだ。きみを守りたいから引き受けたのだ。というか、頼まれなくてもきみをみつけだしたけどね」
「な、なんですって?」

 耳を疑った。

(ルーカスっていったいどういうもの好きなわけ?)

 心から思った。

(同情しているのね。あるいは、わたしにかかわった責任感から? もしかしたら、興味本位かも)

 驚きよりも呆れの方がおおきい。唖然としてしまった。彼は、そんなわたしの両腿上の手を握りしめてきた。

 握り方が全力すぎて痛いほどである。

 しかし、あたたかくてやさしい。

 彼のゴツゴツした両手に握られると、なにか救われるような気がする。

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