107 / 114
閑話
閑話 「理想郷」
しおりを挟む
非常に腐った表現があります。閲覧には十二分にご注意ください。
********************************************
~side 目撃した女性
私は、信じられないものを目撃した。
はじめは妄想が見せた幻かとも思った。
私はいつも妄想にふけってばかりいたから、遂にそのときが来たのかって戦慄したの。
でも、それだけ、素敵な光景だったの。
だって、だって……。
漆黒の貴公子として名高いアラン選手と、優美な簒奪者と言われているカサシス選手が、暗い廊下で情熱的に抱き合っている光景が、そこにあったんですから!
……え? そんな通り名は知らないですって?
それはそうね。これは私達の間でだけでつけられている名前。
一般人が知らないのは当然だわ。
とにかく開会式の時、あの二人を見て、私達の妄想は止まらなくなった。
だって、むさ苦しい男達の中に、美しい宝石が混じっていたのだから。
めくるめく愛と憎しみのドラマが、頭の中で浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
それほどの存在。
それほどの逸材だったの。
試合も本当に良かった。
技のアランに力のカサシスっていう感じかしら。
飛び散る汗、踊る肉体……。苦悶の表情を浮かべるアラン選手ときたら……もう!
残念ながらアラン選手とカサシス選手、二人が試合するのはまだ先の話だったのだけれど、私達の中では、既に何十という試合が行われていた。
そして早くそんなことが起きないかと願いながら、私はやきもきしながらスタッフとしての仕事をこなしていた。
そんな矢先のことだった。
本当に、本当にこの仕事をしていてよかった。
心の底から、そう思った。
壁を背に、アラン選手が顔を赤くしてカサシス選手を見つめている。
カサシス選手は強引に、アラン選手に迫っていた。「そういう関係になってくれ!」って。
真剣な雰囲気だった。
私はそれを見て、思わず我を忘れた。
桃源郷? 天国? 楽園? 理想郷?
いつまでも見ていたい。そんな光景。
でも、それは許されないこと。
あの美しい光景を、私なんかの存在で汚すことは許されることじゃない。
だから、私はその光景を目に焼き付けて、すぐにその場をあとにした。
そのあとは、そうね。同士の下に急いだ。全力で。
あんなに早く走ったのは、多分生まれて初めてっていうくらい。
……いざとなれば、私の足はあんなにも動いてくれるのね。
同士達に見た光景を伝えれば、同氏たちは発狂するんじゃないかってくらい騒いだ。……今考えれば、ちょっと近所迷惑だったかもしれない。
それから寝る間も惜しんで、描き続けたの。
あの美しい光景を。そして、その先に広がっている、未来を。
色々な未来を思い描いたわ。
アラン×カサシスなら――。
「カサシス、さっきのはどういう了見なんだ?」
「いや……俺は……くあっ!」
カサシスの首に巻きついている鎖をアランが引く。
鎖は音を立ててカサシスの首を締め付けた。
カサシスの両手両足には同じように銀に輝く鎖が巻き付いている。身に着けているものといえば、肌蹴た白のチュニックと、黒のパンツ。そしてその銀の鎖だけ。
アランの目には仄暗い色が点り、口は愉悦に歪んでいる。
口付けができそうな距離までカサシスに顔を近づけると、目を覗き込んでアランは言った。
「……お前が俺に逆らえるはずがないだろう? ……お前は俺のものなんだから」
手はカサシスの胸に這い、果実を弄ぶ。
身をよじり、抗うカサシスだったが、あの夜に植えつけられてしまった快楽を思い出し、体は敏感に反応してしまっていた。
「やめ……!」
「……本当に、やめていいのか?」
「……くっ! あっ!?」
そしてアランは見せ付けるように、服を捲り、言う。
「お前に打たれたここが痛むんだ。舐めて治してくれよ」
見詰め合うアランとカサシス。
そしてカサシスの舌がアランの胸に……。
……ふぅ。
わかったかしら? この世界の理想郷というものが。
ちなみに別の未来。
カサシス×アランなら――。
「……約束やったな。俺が試合で勝ったら、なんでも言うこときくっていう」
「……」
ベッドに押し倒されたアランは、上目遣いにカサシスを睨む。
暗闇の中、暖炉の消えそうな炎が、彼らの姿を怪しく浮き上がらせていた。
「そないに睨んでも、約束は約束やで?」
「くっ」
アランの柔らかな髪を撫で、カサシスは恍惚の表情で言った。
カサシスの指はアランの頬を撫で、唇に、首筋へとのびていく。
「この綺麗な黒髪も、瞳も、全部俺のものなんやな……」
「や、やめろっ!」
アランは抗う。
目の前の男に飲まれないように……。
しかし、両腕を頭の上で押さえられたアランは、もはや抵抗することはできなかった。いや、しなかったというほうが正しい。
本気で抵抗すれば、カサシスを退けることもできるはずなのに、それをしなかったのだから。
それを見て、カサシスは小さく笑みをこぼす。
「……期待してるんか?」
「なっ! だ、誰が!」
「まあええわ。すぐにわかる」
「な、何を……!?」
カサシスの手がアランの胸に、その唇が首筋を濡らしていく。
アランはきつく目を閉じて、その刺激に小さく声をあげた……。
…………ふぅ。
私達は、この理想郷を描いているの。
決して。……そう、決して邪な思いなんて抱いていない。
これはそう、天が私に与えた使命。
使命なんです!
私達は描き続けた。夜を徹して。
そのあとカサシス選手に作品の一部を見られたときは生きた心地がしなかったけれど……。
でも喜んでたってことは、本当にそういう関係だっていうことよね……!?
……でも。
でも、まさか。
でもまさか、あの二人がレイナルと、サージカントだったなんて!
わわわ私、あんな絵を描いて、だだだ大丈夫かしら……!?
私の心配をよそに、黒い服を着た強面の男も、鋭い目をした執事も、誰も来ることはなかった。
それどころか、本人が絵を欲しがる始末。
……喜んでらしたから、きっと大丈夫よね?
渡した絵も、ちょっと上半身が裸で、ちょっと鎖が巻き付いているだけだもの。
直接的な表現がされたものは渡してないから。
初心者用の、柔らかい表現のものを渡したのだから。
……大丈夫よね、きっと。
私達はこれからも描き続ける。
理想郷を求める、全ての同志達の為に……!
************************************************
よくわからないテンションで書いてしまいました。
こんなことを考える自分はもう駄目かもしれない……。
********************************************
~side 目撃した女性
私は、信じられないものを目撃した。
はじめは妄想が見せた幻かとも思った。
私はいつも妄想にふけってばかりいたから、遂にそのときが来たのかって戦慄したの。
でも、それだけ、素敵な光景だったの。
だって、だって……。
漆黒の貴公子として名高いアラン選手と、優美な簒奪者と言われているカサシス選手が、暗い廊下で情熱的に抱き合っている光景が、そこにあったんですから!
……え? そんな通り名は知らないですって?
それはそうね。これは私達の間でだけでつけられている名前。
一般人が知らないのは当然だわ。
とにかく開会式の時、あの二人を見て、私達の妄想は止まらなくなった。
だって、むさ苦しい男達の中に、美しい宝石が混じっていたのだから。
めくるめく愛と憎しみのドラマが、頭の中で浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
それほどの存在。
それほどの逸材だったの。
試合も本当に良かった。
技のアランに力のカサシスっていう感じかしら。
飛び散る汗、踊る肉体……。苦悶の表情を浮かべるアラン選手ときたら……もう!
残念ながらアラン選手とカサシス選手、二人が試合するのはまだ先の話だったのだけれど、私達の中では、既に何十という試合が行われていた。
そして早くそんなことが起きないかと願いながら、私はやきもきしながらスタッフとしての仕事をこなしていた。
そんな矢先のことだった。
本当に、本当にこの仕事をしていてよかった。
心の底から、そう思った。
壁を背に、アラン選手が顔を赤くしてカサシス選手を見つめている。
カサシス選手は強引に、アラン選手に迫っていた。「そういう関係になってくれ!」って。
真剣な雰囲気だった。
私はそれを見て、思わず我を忘れた。
桃源郷? 天国? 楽園? 理想郷?
いつまでも見ていたい。そんな光景。
でも、それは許されないこと。
あの美しい光景を、私なんかの存在で汚すことは許されることじゃない。
だから、私はその光景を目に焼き付けて、すぐにその場をあとにした。
そのあとは、そうね。同士の下に急いだ。全力で。
あんなに早く走ったのは、多分生まれて初めてっていうくらい。
……いざとなれば、私の足はあんなにも動いてくれるのね。
同士達に見た光景を伝えれば、同氏たちは発狂するんじゃないかってくらい騒いだ。……今考えれば、ちょっと近所迷惑だったかもしれない。
それから寝る間も惜しんで、描き続けたの。
あの美しい光景を。そして、その先に広がっている、未来を。
色々な未来を思い描いたわ。
アラン×カサシスなら――。
「カサシス、さっきのはどういう了見なんだ?」
「いや……俺は……くあっ!」
カサシスの首に巻きついている鎖をアランが引く。
鎖は音を立ててカサシスの首を締め付けた。
カサシスの両手両足には同じように銀に輝く鎖が巻き付いている。身に着けているものといえば、肌蹴た白のチュニックと、黒のパンツ。そしてその銀の鎖だけ。
アランの目には仄暗い色が点り、口は愉悦に歪んでいる。
口付けができそうな距離までカサシスに顔を近づけると、目を覗き込んでアランは言った。
「……お前が俺に逆らえるはずがないだろう? ……お前は俺のものなんだから」
手はカサシスの胸に這い、果実を弄ぶ。
身をよじり、抗うカサシスだったが、あの夜に植えつけられてしまった快楽を思い出し、体は敏感に反応してしまっていた。
「やめ……!」
「……本当に、やめていいのか?」
「……くっ! あっ!?」
そしてアランは見せ付けるように、服を捲り、言う。
「お前に打たれたここが痛むんだ。舐めて治してくれよ」
見詰め合うアランとカサシス。
そしてカサシスの舌がアランの胸に……。
……ふぅ。
わかったかしら? この世界の理想郷というものが。
ちなみに別の未来。
カサシス×アランなら――。
「……約束やったな。俺が試合で勝ったら、なんでも言うこときくっていう」
「……」
ベッドに押し倒されたアランは、上目遣いにカサシスを睨む。
暗闇の中、暖炉の消えそうな炎が、彼らの姿を怪しく浮き上がらせていた。
「そないに睨んでも、約束は約束やで?」
「くっ」
アランの柔らかな髪を撫で、カサシスは恍惚の表情で言った。
カサシスの指はアランの頬を撫で、唇に、首筋へとのびていく。
「この綺麗な黒髪も、瞳も、全部俺のものなんやな……」
「や、やめろっ!」
アランは抗う。
目の前の男に飲まれないように……。
しかし、両腕を頭の上で押さえられたアランは、もはや抵抗することはできなかった。いや、しなかったというほうが正しい。
本気で抵抗すれば、カサシスを退けることもできるはずなのに、それをしなかったのだから。
それを見て、カサシスは小さく笑みをこぼす。
「……期待してるんか?」
「なっ! だ、誰が!」
「まあええわ。すぐにわかる」
「な、何を……!?」
カサシスの手がアランの胸に、その唇が首筋を濡らしていく。
アランはきつく目を閉じて、その刺激に小さく声をあげた……。
…………ふぅ。
私達は、この理想郷を描いているの。
決して。……そう、決して邪な思いなんて抱いていない。
これはそう、天が私に与えた使命。
使命なんです!
私達は描き続けた。夜を徹して。
そのあとカサシス選手に作品の一部を見られたときは生きた心地がしなかったけれど……。
でも喜んでたってことは、本当にそういう関係だっていうことよね……!?
……でも。
でも、まさか。
でもまさか、あの二人がレイナルと、サージカントだったなんて!
わわわ私、あんな絵を描いて、だだだ大丈夫かしら……!?
私の心配をよそに、黒い服を着た強面の男も、鋭い目をした執事も、誰も来ることはなかった。
それどころか、本人が絵を欲しがる始末。
……喜んでらしたから、きっと大丈夫よね?
渡した絵も、ちょっと上半身が裸で、ちょっと鎖が巻き付いているだけだもの。
直接的な表現がされたものは渡してないから。
初心者用の、柔らかい表現のものを渡したのだから。
……大丈夫よね、きっと。
私達はこれからも描き続ける。
理想郷を求める、全ての同志達の為に……!
************************************************
よくわからないテンションで書いてしまいました。
こんなことを考える自分はもう駄目かもしれない……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。