王人

神田哲也(鉄骨)

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7-07

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 暗い暗い地の底で、とある存在が呟いた。
 存在は太く巨大なことが伺い知れる。

「ああー。もうすぐ。もうすぐお披露目ができるかもしれないなー」

 高いような、低いような。声の主は男だということはわかるが、それ以外は判別のつかないようだった。
 それは楽しげで、期待に満ちたものだった。

「でもでもー。あれとあれが足りないんだよー。あれとあれがないと動かない。動かなければ、単なる置物だー」

 一転、声は沈む。

「あれとあれを手に入れるのは大変そうだー。うーん……」

 それでも、その存在の動きは止まらない。
 小刻みに、時に大きく体が動き、手は休まずに何かを作り続けていた。
 そこにひとつの影が近寄っていく。
 もとからいた巨大な影と違って、比べたらとても小さな影だった。

「……」
「おっ! どうだいー。進捗のほうは?」
「滞りなく」
「そうかそうかー。入れ物はもう出来るし、霊力も結構溜まってきてるしー。あとは本当にあれだけなんだけどなー」

 思案をしていても、くちが動いていても、忙しなく腕は動いている。
 目の前の何かから線を引いたり、描いたり、削ったり、潰したり、くっつけたり。
 一切の光の無い中、迷う素振りはなかった。

「照明は必要ないでしょうか」
「うん。必要ないなー。上のほうで消費してるのでさえ勿体無いっていつも言ってるでしょー。というか、上のもやっぱり消しちゃダメー?」

 巨大な影は小さな影に問う。
 応えは簡潔なものだった。

「なりません」

 無礼ともとられるような物言いだったろう。
 だが巨大な影は気にした様子はなかった。

「融通がきかないなー。知ってたけどねー。でもなんで君の命令の優先度が書き換えられないんだろー? 何か知らない?」
「私にはわかりません」
「下手にいじると機能停止しちゃうっぽいしねー。まあ、しょうがないかー。僕のやることに逆らわないならいっかー」
「私はマスターの命令を守るのみですので」
「わかったわかった、知ってるよー。それにしても……はあー。後ちょっとなんだけどなー。どこかにいないかなー……って、おー?」

 その言葉の後、遂に巨大な影は動きを止める。
 暗闇の中に満ちたのは、歓喜だった。

「おー? おおー? おおおー!?」

 何かを感じ取っているのか、興奮した声は絶えない。

「いいね、いいね。いいんじゃない!? 何たる仕組み! 流れが来てるよー!」

 手を挙げて、手を叩いて喜びを表す。
 そして今にも立ち去ろうとしていた小さな影に命じた。

「あれをここに連れて来るんだ! 手段は問わないっ! まあでも多分、僕の名前を出せば着いてくると思うんだけどねー」

 小さな影は何かを言おうとして、飲み込んでから応えた。

「……承知しました」
「うん。頼んだよー。上のほうは調整しておくから、適当に行くといい。いやー、本当に嬉しいなー!」

 今度こそ小さな影は立ち去っていく。
 それに巨大な影は何の興味も示さなかった。

「これで目処がつきそうだなー! お披露目の日は近いかも!」

 それまでよりも巨大な影は大きく早く動き出す。
 暗い暗い地の底で、それはなおも喋り続けた。
 誰に聞かすわけでもなく。
 暗闇に、声を響かせて。

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感想 5

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みんなの感想(5件)

ねこねこパンチ

理想郷面白かった・・・
たった今1巻の無料3話読んで面白いと思いました
チケット買わず本屋行って5巻全部買います
お気に入りにも登録してます。
更新頑張ってください
応援してます

解除
ネア
2016.12.06 ネア

コノリは?

解除
kiya
2016.11.28 kiya

なろうの頃から楽しく読んでます。もっとラスの出番を・・・読みたいです。 更新楽しみに待っています。  

解除

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