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しおりを挟むコクヨウと小さな家でふたり暮らしを始めて早1ヶ月の時が流れていた。コクヨウは少しずつ成長して、爪や牙の鋭さも増しているように思う。まぁ相変わらず、俺から離れるのは極端に嫌がる甘ったれだが。
しかしそんなコクヨウに俺も絆されている。俺のことが大好きだと示すコクヨウが可愛くて、連れ回しているんだからな。そんなこんなで俺とべったりだ。
唯一少しだけ俺と離れることがある。それは森に入るときだ。俺は冒険者として魔物を倒したり、素材採取したりしている。その間、森に慣れてきたコクヨウが兎などの小さめの動物を狩りに行く。コクヨウは中々器用なようで、自分に倒せる小さめな獲物を見つけると走って行って、獲物を仕留めて俺のところに持ってくる。
そんな風に日々少しずつ成長しているコクヨウを見守りつつ、生活している。特に変化もないが幸せな生活だ、と思っていたが…朝目覚めれば、驚きに情けない声を上げることになった。
「うおおおおお!?」
「…んぅ…」
朝目覚めた俺の隣には、小さな男が裸で寝ていたのだ。黒髪で顔立ちは大変整っている。それがスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。普段ならそこにはコクヨウがいるはずの場所。状況が飲み込めない…。
寝起きで頭の働かない状態から段々と覚醒する。そして家の中を見回してコクヨウがいないことに気が付く。
「…は?…え?…こ…くよう…コクヨウは?あいつどこ行った!?探さねぇと!」
「…うるさい…タカミ…」
「…位置探索…」
「…ふあぁ…」
「は?位置情報はこの家の中?ってか隣…」
「何騒いでるの?タカミ」
「コクヨウが居ねぇんだ!慌てるだろ?!」
「何言ってんの?僕はここにいるよ。」
「いやお前じゃなくてコクヨウ…が…」
「だーかーら!僕がコクヨウだってば!」
コクヨウを名乗るその男の子を改めて見つめる。…確かに少し猫目で愛嬌があって…可愛くて格好いいその顔は、確かにどこかコクヨウの面影を残している。
そして…コクヨウと出会った時のことが脳をよぎる。コクヨウは…そう、獣人に守られていたのだ。それを考えれば、ある可能性が浮上する。コクヨウも獣人であるという可能性が。
「…本当に…コクヨウなのか?」
「うん、そうだよタカミ。いつも俺を撫でて幸せそうにしてるタカミと暮してたコクヨウだよ。ほら、これタカミがくれたんだよ」
そう言って示す首元には確かに俺の送ったネックレス。
「…確かに…お前獣人だったのか。」
「そうだよ、タカミ。育ててくれてありがとう。動物だと思ってたのに急に人になって嫌になった?もう…いらない?」
ありがとうと言いつつ、不安なのを押し殺して問うてくるコクヨウ。まるで捨てられる子猫のようで、見ているこちらが悲しくなるほどだ。股の間に収められた尻尾とぺたんとした耳が分かりやすい。
「いや、そんな訳無いだろ。吃驚はしたけどな。そうか、これからは話せるようになるんだな!楽しくなるな!ずっと意思疎通出来たらいいと思ってたんだぜ」
「えへへ、そっか。ありがとタカミ」
「まぁ、積もる話は後にして、朝飯にするか。騒いで腹減ったからな。」
「うん。手伝う」
「お?じゃあ少しずつ覚えような」
「うん」
頭が良かった訳だな。何はともあれコクヨウが無事でよかった。起きた時は物凄く混乱していたからな。これからは一方的に話しかけるだけでなく、会話出来るようになると思うと楽しみだ。
しかし…服、用意してやんねぇとな…。仕方なくデカ過ぎる俺の服を縛り付けるように無理矢理着せたけどよ。流石にな…
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