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しおりを挟むキース義兄さんからの返事が返ってきた。「一応軽く調べても怪しい点は無い。けれど慎重になるに越した事はない。だから契約についてはもう少し待たせておけ。」だそうだ。まぁ、そうよね。簡単に判断できることでは無いもの。商人という生き物は怖いものね。
「お兄様はなんと?」
「取り敢えずまだ待たせておけばいいって。シェミー様の調査結果が出たらまた改めて考えようって。」
「…妥当な判断ですね。何か裏があるか分かりませんし。」
「そうね。私、カレルさんのこと何も知らないから信頼も何もないわ。」
「何かに巻き込まれてからでは遅いですからね。」
それにしても…どうしてそこまで私の作った物に執着しているのかしら。特に特別な所はない物なのに。どこがそんなに良くて私に契約を迫っているのか、本当にわからないわ…。
「判断がつくまでは、現状維持ですね。」
「ええ、今の所挨拶されているだけだものね。」
「はい、もし何かあれば私も盾になります。」
「それは駄目!危険なことはしないでほしいわ。」
「でもウェンディ様は、もし私が危険な目にあったら…身を挺してでも守ろうとするのでは無いですか?」
「それは…そうかもしれないわね。」
「なら、私だってウェンディ様に何かあれば守ります。」
「でも…私はほら、剣術だってやっているし!」
「なら私は頭を使います。それでどうですか?」
「ええ、分かったわ。でもやっぱり自分の身を1番に考えてね!」
「はい。」
何を手を打つことも出来ないまま時間だけが過ぎ、何も言わない私に痺れを切らしたのか、カレルさんの方から例の話を持ち出してきた。
「ポーティス伯爵令嬢…契約の件、考えて頂けましたか?」
「え、ええ…そうね…考えてはいるのよ?けれど…まだ決めきれなくて…」
「…そうですか。わかりました。出来れば来週中くらいには返事を頂きたいと考えております。」
「…分かったわ。」
「良い返事を頂けることを期待しております。それでは失礼致します。」
話してみてもそんなに悪い子には思えないのよね。ただし、裏がありそうな雰囲気もあるから難しいのだけれど。
「ウェンディは居るかしら?」
「シェミー様!」
「ウェンディ、少しお時間よろしくて?」
「はい、大丈夫です。」
シェミー様が教室にまでやってくるなんて珍しい。何かあったのかしら?
「調査結果が出たから急ぎ知らせようと思ってね。詳しくはこの紙に書かれているけれど、特に問題は無い、というのが私の見解よ。今回のことについては怪しい点は無いわ。」
「そう、ですか。ありがとうございます!シェミー様。」
「ええ。」
「あ!そうだ、少しだけお待ち頂けますか?すぐに戻ります。」
「ええ、構わないけれど…」
一度シェミー様の前を失礼して、教室にある自分のカバンから一つの小包を取り出す。中にはレース編みで作ったコースターと刺繍をしたハンカチが入っている。
「お待たせ致しました。よろしければこちらを…お礼になるか分かりませんが、精一杯作らせていただきました。」
「ウェンディが作ってくれたの?」
「はい、簡単なものですが…」
「見てもいいかしら?」
「はい、少し恥ずかしいですが。」
「…わぁ!とても素敵ね!ありがとう!大切にさせてもらうわ!」
「ふふっ喜んでいただけたなら、私もとても嬉しいです。」
「ウェンディ、良ければなのだけれど、商品を売ることになったら、辺境伯家でも買わせてくれるかしら?」
「ええと…まだどうなるか分かりませんが、もし売ることになれば是非。」
「ふふっ楽しみにしているわ。」
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