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しおりを挟むエーガー商会の店舗に着いたけれど、建物は見上げる程大きい。その造りはバロック建築に近いもので、複雑で芸術的なデザインの建物だ。様々な要素が盛り込まれていて、見る者を惹き付ける。
とても美しく、センスの良い建物だわ。曲線を描くドーム型の天井が特徴的ね。そしてこの秀逸なデザインを作り上げる技術力は素晴らしいものね。
カレルの商会…エーガー商会はシェミー様のお家とも取引のある商会だと聞いていたから、大きな商会なのだろうと思っていた。けれど、こうして実際に店舗を見ると改めてその大きさがわかるわね。地価も高い王都でこれ程の店を構えられるのは1流の商会だけだもの。
「凄いわね…。」
「そうですね…。」
私達が店舗の前に立っているのを見兼ねたのか、中から店員さんが出てきて私達を中へ招いてくれる。すごく愛嬌よく接してくれる辺りプロよね。
「いらっしゃいませ、お客様。是非、中へお入りください。」
「え、ええ…。」
促されるがままに私達は店の中へと足を踏み入れる。街の主婦から貴族家の使用人、商人など様々な人々が商品を見て回っている様子が見て取れた。客層が広い、ということはそれだけ様々な人が必要とするものが揃っているということだわ。相当な品揃えなのね。
「ポーティス伯爵令嬢様、レイラ様、何か商品をご覧になりますか?」
「いえ、大丈夫よ。というか、わかっていたのね。」
「はい、カレル様より伺っておりましたので。」
「…流石ね、カレルも抜かりないわね。」
「ふふっあの方は仕事が出来過ぎる方ですから。」
「取り敢えずエーガー商会の頭取にご挨拶出来るかしら?」
「もちろんでございます。」
エーガー商会の頭取、カレルの父君にはしっかりと挨拶とお礼をしなくてはと思っていたので、会えるのなら良かったわ。私達は貴賓室のような所に案内されて、お茶も出された。少し待っているように告げられ、フカフカとした室のいいソファに座って待つ。
隣にいるレイラはこの様な特別扱いに至極動揺しているらしく、緊張を隠せない面持ちをしていた。
「レイラ、大丈夫よ。礼儀作法だってきちんと出来るようになったじゃない!」
「そそそ、そうで…すよね?大丈夫…大丈夫…あぁ、あの小物一つで私の一生分の給料が飛ぶ…絶対に触らないようにしなくちゃ…待って…このソファも…とても手触りがいいしふかふか…汚す訳には…けれどお茶を飲まないのも失礼だし…」
「レイラ、思っていることが全部口から出ているわ。」
「はっ!…はずかしい…もう…こういった場所は初めてで…どうすれば良いのか。」
「ふふっ大丈夫大丈夫。私がついているわ。」
「そう、ですね。すぅ…はぁ…すぅ…はぁ…。よし…あの、ウェンディ様少し手を握って頂けませんか?」
「ええ、もちろん。」
レイラの震える手をそっと握ると、少し落ち着いたようで緊張から来る震えも治まってきたみたいだわ。そしてタイミングを伺っていたかのように、頭取がカレルと共に部屋にやってきた。
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