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第3章 旅の始まりと穏やかな日常
第21話 商人のトラブルと、初めての報酬
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空は晴れ渡り、街道を吹き抜ける風が心地よかった。
あの村から旅に出て四日目、ガルドたちは緩やかな丘陵を越えて街道沿いの道を歩いていた。
「また、農業やってみたいですねー」
「ええ、面白かったです」
「……また今度、あの村に行けたらいいな」
「そうですね!」
楽しく会話をしながら歩いていた時だった。
遠くから誰かのうめき声が聞こえてきた。
「……ご主人様、今、誰か……」
「ああ、あっちの藪の影だ」
ガルドが指差した先に、荷車が横倒しになり地面にうずくまる中年の男がいた。
顔色は悪く、額には擦り傷。
服も埃にまみれ、疲労困憊といった様子だった。
「だ、大丈夫ですか!?」
ガルドは駆け寄り、男の脈を確認しながら声をかけた。
「……くそっ……盗賊……あいつらが……俺の……荷を……」
「盗賊……?」
男――商人は、息も絶え絶えに状況を語った。
街道を一人で荷車を引いていたところ、突然現れた三人組の盗賊に襲われ、積荷を奪われたという。
命までは取られなかったが、怪我を負って動けず助けを求めていたようだった。
「ご主人様……このままじゃ、荷物どころか、この人も危ないです……」
ルーナが心配そうに言うと、ルージュが前に出た。
「痕跡は残っている。盗賊の逃走経路、追跡可能です。ガルド様の判断を」
その冷静な声に、ガルドは頷いた。
「よし、ルーナはこの人を見ててくれ。俺とルージュで行ってくる」
「了解しました、主様。気をつけてくださいね……!」
盗賊の足跡は街道の脇道に続き、やがて小さな森の中へと消えていた。
ルージュが無言で手をかざし、空間にうっすらと魔力の波を走らせる。
「魔力感知、微弱な残留反応あり……間もなく追いつけます」
数分後――茂みの向こうに、小さな野営の気配。
男たちが荷車の中身を漁って笑い声をあげていた。
「おい、銀貨があったぞ! 田舎商人にしては上出来だな!」
「ははっ、やっぱり田舎道はカモばっかだなぁ!」
「……あいつらか」
ガルドは、小さく息を吐いた。
魔力はまだ安定せず、戦闘の自信はない。
けれど、助けを求める声を聞いて、放っておくわけにはいかなかった。
ルージュが無言で進もうとしたその時――
「待ってくれ。俺がやってみる」
「……ガルド様?」
ルージュが静かに止まる。
ガルドは深く息を吸い、手を前にかざした。
(あの時みたいに……力を流す。集中しろ……『つながる』感覚を信じろ)
霧のような魔力が、手のひらからじんわりと漏れ出し――やがて、地面を這うように盗賊たちへと伸びていく。
「な、なんだこれ!?足が……っ! 動かねぇ!?」
「魔法か!?誰だ、そこにいるのは!」
ガルドは一歩前へと踏み出し、はっきりと名乗った。
「盗賊ども、お前たちが奪った荷物……返してもらうぞ!」
「な……ふざけんなこの野郎!」
男たちは剣を抜いて突進しようとしたが、その足元にはルージュの影が滑るように忍び寄る。
「主に敵意を向けたことを後悔させて差し上げましょう……凍ってしまいなさい」
風もないのに、空気がひやりと冷え、盗賊たちの足元から氷の鎖が巻きつくように伸びた。
「う、うわっ!? な、なにこれ!? 氷がっ、動く!? ひいいいっ!」
鎖に囚われた盗賊たちは、情けない声を上げてあっという間にその場に倒れ込んだ。
「……確保完了です。主様」
「あ、ああ……うまくいった……!」
ガルドは胸を押さえ、ゆっくりと肩を落とした。
戦闘ではなかったが、魔力をうまく扱えた。
自分にもできることがあった――その事実が、何より嬉しかった。
後に捕らえた盗賊と共に荷車を押して戻ると、商人の男が目を見開いて立ち上がった。
「……まさか、ほんとに戻ってくるとは……!」
「荷物、無事だったよ。全部あるか、確認してくれ」
「お、おう……ああ……!本当に、助かった……!」
男は感激のあまり何度も頭を下げた後、腰に下げていた革袋をガルドに差し出した。
「少ないが……これ、お礼だ。銀貨十枚!本当にありがとう!」
「えっ……いいのか?」
「当たり前だろう。命も、荷も救ってくれたんだ。言葉だけじゃ足りねえさ」
ガルドは恐る恐るそれを受け取った。
それは初めての『報酬』――誰かを救ったことに対して、正式に受け取った価値だった。
「ご主人様っ! すごいです! 初報酬ですよっ!」
ルーナがぴょんぴょん跳ねて喜び、ルージュも静かに頷いた。
「……これより、ガルド様は『働く冒険者』として、正式に収入を得たことになりますね」
「なんだその妙な言い方……」
それでも、ガルドは自然と笑顔になっていた。
村の近くで見つけた、最初の困難。
けれど、それを乗り越えたことで、ガルドは自分の力を少しだけ信じられるようになった。
「これから、きっともっと色んな人に会って、いろんなことがあるんだろうな……」
「はいっ、ご主人様! そして全部、私たちで支えていきましょうね!」
「……ガルド様が命じるならば」
二人の魔王と共に歩む旅。
その先には、まだ知らない世界と――本当の自分が、待っている。
あの村から旅に出て四日目、ガルドたちは緩やかな丘陵を越えて街道沿いの道を歩いていた。
「また、農業やってみたいですねー」
「ええ、面白かったです」
「……また今度、あの村に行けたらいいな」
「そうですね!」
楽しく会話をしながら歩いていた時だった。
遠くから誰かのうめき声が聞こえてきた。
「……ご主人様、今、誰か……」
「ああ、あっちの藪の影だ」
ガルドが指差した先に、荷車が横倒しになり地面にうずくまる中年の男がいた。
顔色は悪く、額には擦り傷。
服も埃にまみれ、疲労困憊といった様子だった。
「だ、大丈夫ですか!?」
ガルドは駆け寄り、男の脈を確認しながら声をかけた。
「……くそっ……盗賊……あいつらが……俺の……荷を……」
「盗賊……?」
男――商人は、息も絶え絶えに状況を語った。
街道を一人で荷車を引いていたところ、突然現れた三人組の盗賊に襲われ、積荷を奪われたという。
命までは取られなかったが、怪我を負って動けず助けを求めていたようだった。
「ご主人様……このままじゃ、荷物どころか、この人も危ないです……」
ルーナが心配そうに言うと、ルージュが前に出た。
「痕跡は残っている。盗賊の逃走経路、追跡可能です。ガルド様の判断を」
その冷静な声に、ガルドは頷いた。
「よし、ルーナはこの人を見ててくれ。俺とルージュで行ってくる」
「了解しました、主様。気をつけてくださいね……!」
盗賊の足跡は街道の脇道に続き、やがて小さな森の中へと消えていた。
ルージュが無言で手をかざし、空間にうっすらと魔力の波を走らせる。
「魔力感知、微弱な残留反応あり……間もなく追いつけます」
数分後――茂みの向こうに、小さな野営の気配。
男たちが荷車の中身を漁って笑い声をあげていた。
「おい、銀貨があったぞ! 田舎商人にしては上出来だな!」
「ははっ、やっぱり田舎道はカモばっかだなぁ!」
「……あいつらか」
ガルドは、小さく息を吐いた。
魔力はまだ安定せず、戦闘の自信はない。
けれど、助けを求める声を聞いて、放っておくわけにはいかなかった。
ルージュが無言で進もうとしたその時――
「待ってくれ。俺がやってみる」
「……ガルド様?」
ルージュが静かに止まる。
ガルドは深く息を吸い、手を前にかざした。
(あの時みたいに……力を流す。集中しろ……『つながる』感覚を信じろ)
霧のような魔力が、手のひらからじんわりと漏れ出し――やがて、地面を這うように盗賊たちへと伸びていく。
「な、なんだこれ!?足が……っ! 動かねぇ!?」
「魔法か!?誰だ、そこにいるのは!」
ガルドは一歩前へと踏み出し、はっきりと名乗った。
「盗賊ども、お前たちが奪った荷物……返してもらうぞ!」
「な……ふざけんなこの野郎!」
男たちは剣を抜いて突進しようとしたが、その足元にはルージュの影が滑るように忍び寄る。
「主に敵意を向けたことを後悔させて差し上げましょう……凍ってしまいなさい」
風もないのに、空気がひやりと冷え、盗賊たちの足元から氷の鎖が巻きつくように伸びた。
「う、うわっ!? な、なにこれ!? 氷がっ、動く!? ひいいいっ!」
鎖に囚われた盗賊たちは、情けない声を上げてあっという間にその場に倒れ込んだ。
「……確保完了です。主様」
「あ、ああ……うまくいった……!」
ガルドは胸を押さえ、ゆっくりと肩を落とした。
戦闘ではなかったが、魔力をうまく扱えた。
自分にもできることがあった――その事実が、何より嬉しかった。
後に捕らえた盗賊と共に荷車を押して戻ると、商人の男が目を見開いて立ち上がった。
「……まさか、ほんとに戻ってくるとは……!」
「荷物、無事だったよ。全部あるか、確認してくれ」
「お、おう……ああ……!本当に、助かった……!」
男は感激のあまり何度も頭を下げた後、腰に下げていた革袋をガルドに差し出した。
「少ないが……これ、お礼だ。銀貨十枚!本当にありがとう!」
「えっ……いいのか?」
「当たり前だろう。命も、荷も救ってくれたんだ。言葉だけじゃ足りねえさ」
ガルドは恐る恐るそれを受け取った。
それは初めての『報酬』――誰かを救ったことに対して、正式に受け取った価値だった。
「ご主人様っ! すごいです! 初報酬ですよっ!」
ルーナがぴょんぴょん跳ねて喜び、ルージュも静かに頷いた。
「……これより、ガルド様は『働く冒険者』として、正式に収入を得たことになりますね」
「なんだその妙な言い方……」
それでも、ガルドは自然と笑顔になっていた。
村の近くで見つけた、最初の困難。
けれど、それを乗り越えたことで、ガルドは自分の力を少しだけ信じられるようになった。
「これから、きっともっと色んな人に会って、いろんなことがあるんだろうな……」
「はいっ、ご主人様! そして全部、私たちで支えていきましょうね!」
「……ガルド様が命じるならば」
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