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第4章 錬金都市アラストと知り合いだと思いたくない知り合い
第31話 依頼ギルドでの拒絶
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活気にあふれたアラストの依頼ギルド。
大理石の床に壁一面を覆う依頼掲示板。
カウンターには数名のギルド員が忙しなく動き受付には冒険者や錬金師らしき者が列を作っていた。
「おー、なかなか立派なところですねぇ!」
ルーナが楽しげに口笛を吹く。
彼女の手には甘い焼き菓子があり、頬をふくらませながらきょろきょろと内部を見回している。
一方ガルドは少し緊張した面持ちで、受付へと歩み寄った。
(……ここに来るまでの間、結構お金使っちゃったからなぁ……俺でも出来る仕事、あるだろうか?)
これまでは偶然の人助けや突発的な事件に対応してきたが、今回は違う。
路銀を稼ぐ為でもあるが、それでも『冒険者』として、街の依頼を受ける――それは、彼にとって大きな一歩でもある。
カウンターの奥、愛想のない中年の受付員が目を細めて彼らを見た。
ガルドが一歩前に出る。
「すみません、依頼を探してまして……中級以下でいいんですが、何か受けられるものはありますか?一応冒険者をやっております」
ガルドはそのように言いながら、以前使っていたギルドカードを提示した。
だが――返ってきたのは、無言とあからさまな『値踏み』の視線だった。
受付員は一枚の紙をめくる仕草すらせず、ため息を吐く。
「……あんた、名前は?」
「ガルドです。一応登録はそちらの王都支部で済ませてます。こちらでも履歴は引き継がれてるはずです」
「……へぇ」
受付員はわざとらしく鼻を鳴らすと、背後の魔道端末に指を走らせた。
表示された情報を見た瞬間――彼の口角が軽く吊り上がる。
「……あー……なるほど。『例の』召喚士さんか」
「例の……?」
ガルドが眉をひそめる。
その隣で、ルーナの表情がスッと曇った。
「悪いけどね」
受付員が、あざけるように言葉を投げる。
「この街では、あんたみたいな『無能の召喚士』に回す依頼なんてないよ。王都じゃ有名だったんだろ?精霊も召喚できない落ちこぼれだって」
「っ……!」
ギルド内のざわめきが止まる。
周囲の冒険者や見物人の視線が、すっと集まってきた。
「誰でも歓迎、って言ってなかった?」
ガルドが静かに問い返す。
怒りではない。
ただ、その理不尽に、思わず確認せずにはいられなかった。
「たしかに。だが『例外』ってやつもある。評判が悪い奴はこっちも巻き込まれたくないんでね」
皮肉と悪意に満ちたその声に、ルーナが一歩前に出る。
「……さっきから、ご主人様に対して失礼ですよ」
その言葉に、受付員が嘲笑を浮かべた。
「なんだ? その『ご主人様』って呼び方。ペットのつもりか? あんたらの見た目も十分怪しいし……もしかして精霊のふりしてんじゃねぇの?」
「……なっ――!」
ルーナの紅い瞳が揺れ、手元に魔力が集まり始める。
だが、その瞬間――ズン……と空気が重くなる。
誰よりも静かだったルージュが、無言のまま一歩、受付に近づいた。
その足音だけで、空気が張り詰める。
周囲の冒険者たちが小さく息を呑み、無意識に後退する。
「っ……」
受付員も、思わず背筋を伸ばした。
ルージュの紅い瞳が、感情のないまま、受付員を見下ろす。
「――ガルド様を侮辱する行為は、我らに対する宣戦布告と見なされても構わないという理解でよろしいですね?」
「な、なに言って……」
受付員の額に、汗がにじむ。
「我が主の評価は、言葉や噂で決まるものではありません。行動で証明されます……下賤な罵倒で貴殿の命を絶つつもりはありませんが、これ以上の無礼は街の防衛結界が破綻するリスクすら想定されます」
「ちょ、ちょっと待て……何の話を――」
受付員の喉がひくついた。
「や、やめてよ、お兄ちゃん……こんなとこで魔力放ったら……お店、吹っ飛んじゃう……」
ルーナが小声でたしなめるが、まるで止まらない。
ルージュの気配は、淡々としているのに、確実に『危険』を放っていた。
ガルドが苦笑しながら、ルージュの肩を軽く叩いた。
「ルージュ、ストップだ。大丈夫、こんなの慣れてる」
「……しかし」
「……問題を起こすのは得策じゃない」
「……承知しました」
ルージュは一歩下がり、空気がすっと和らぐ。
ギルド内にいた冒険者たちは、誰もがホッと息を吐くように――無意識に胸をなでおろしていた。
ガルドは受付員に軽く頭を下げ、静かに告げる。
「わかった。別にここで無理に受ける必要もないしな……ただ一つ言っておく」
彼の声は、穏やかなままだった。
「俺が無能かどうかは、俺を見た人間が決めればいい。『噂』じゃなくてな」
そう言って、ガルドは背を向ける。
ルーナとルージュがその両脇に並び、三人は依頼掲示板を離れた。
その背中を、誰も追う者はいなかった。
――だが確かに、空気は変わったのである。
大理石の床に壁一面を覆う依頼掲示板。
カウンターには数名のギルド員が忙しなく動き受付には冒険者や錬金師らしき者が列を作っていた。
「おー、なかなか立派なところですねぇ!」
ルーナが楽しげに口笛を吹く。
彼女の手には甘い焼き菓子があり、頬をふくらませながらきょろきょろと内部を見回している。
一方ガルドは少し緊張した面持ちで、受付へと歩み寄った。
(……ここに来るまでの間、結構お金使っちゃったからなぁ……俺でも出来る仕事、あるだろうか?)
これまでは偶然の人助けや突発的な事件に対応してきたが、今回は違う。
路銀を稼ぐ為でもあるが、それでも『冒険者』として、街の依頼を受ける――それは、彼にとって大きな一歩でもある。
カウンターの奥、愛想のない中年の受付員が目を細めて彼らを見た。
ガルドが一歩前に出る。
「すみません、依頼を探してまして……中級以下でいいんですが、何か受けられるものはありますか?一応冒険者をやっております」
ガルドはそのように言いながら、以前使っていたギルドカードを提示した。
だが――返ってきたのは、無言とあからさまな『値踏み』の視線だった。
受付員は一枚の紙をめくる仕草すらせず、ため息を吐く。
「……あんた、名前は?」
「ガルドです。一応登録はそちらの王都支部で済ませてます。こちらでも履歴は引き継がれてるはずです」
「……へぇ」
受付員はわざとらしく鼻を鳴らすと、背後の魔道端末に指を走らせた。
表示された情報を見た瞬間――彼の口角が軽く吊り上がる。
「……あー……なるほど。『例の』召喚士さんか」
「例の……?」
ガルドが眉をひそめる。
その隣で、ルーナの表情がスッと曇った。
「悪いけどね」
受付員が、あざけるように言葉を投げる。
「この街では、あんたみたいな『無能の召喚士』に回す依頼なんてないよ。王都じゃ有名だったんだろ?精霊も召喚できない落ちこぼれだって」
「っ……!」
ギルド内のざわめきが止まる。
周囲の冒険者や見物人の視線が、すっと集まってきた。
「誰でも歓迎、って言ってなかった?」
ガルドが静かに問い返す。
怒りではない。
ただ、その理不尽に、思わず確認せずにはいられなかった。
「たしかに。だが『例外』ってやつもある。評判が悪い奴はこっちも巻き込まれたくないんでね」
皮肉と悪意に満ちたその声に、ルーナが一歩前に出る。
「……さっきから、ご主人様に対して失礼ですよ」
その言葉に、受付員が嘲笑を浮かべた。
「なんだ? その『ご主人様』って呼び方。ペットのつもりか? あんたらの見た目も十分怪しいし……もしかして精霊のふりしてんじゃねぇの?」
「……なっ――!」
ルーナの紅い瞳が揺れ、手元に魔力が集まり始める。
だが、その瞬間――ズン……と空気が重くなる。
誰よりも静かだったルージュが、無言のまま一歩、受付に近づいた。
その足音だけで、空気が張り詰める。
周囲の冒険者たちが小さく息を呑み、無意識に後退する。
「っ……」
受付員も、思わず背筋を伸ばした。
ルージュの紅い瞳が、感情のないまま、受付員を見下ろす。
「――ガルド様を侮辱する行為は、我らに対する宣戦布告と見なされても構わないという理解でよろしいですね?」
「な、なに言って……」
受付員の額に、汗がにじむ。
「我が主の評価は、言葉や噂で決まるものではありません。行動で証明されます……下賤な罵倒で貴殿の命を絶つつもりはありませんが、これ以上の無礼は街の防衛結界が破綻するリスクすら想定されます」
「ちょ、ちょっと待て……何の話を――」
受付員の喉がひくついた。
「や、やめてよ、お兄ちゃん……こんなとこで魔力放ったら……お店、吹っ飛んじゃう……」
ルーナが小声でたしなめるが、まるで止まらない。
ルージュの気配は、淡々としているのに、確実に『危険』を放っていた。
ガルドが苦笑しながら、ルージュの肩を軽く叩いた。
「ルージュ、ストップだ。大丈夫、こんなの慣れてる」
「……しかし」
「……問題を起こすのは得策じゃない」
「……承知しました」
ルージュは一歩下がり、空気がすっと和らぐ。
ギルド内にいた冒険者たちは、誰もがホッと息を吐くように――無意識に胸をなでおろしていた。
ガルドは受付員に軽く頭を下げ、静かに告げる。
「わかった。別にここで無理に受ける必要もないしな……ただ一つ言っておく」
彼の声は、穏やかなままだった。
「俺が無能かどうかは、俺を見た人間が決めればいい。『噂』じゃなくてな」
そう言って、ガルドは背を向ける。
ルーナとルージュがその両脇に並び、三人は依頼掲示板を離れた。
その背中を、誰も追う者はいなかった。
――だが確かに、空気は変わったのである。
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