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第二章
彼女の未来は僕の使命
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翌日登校する途中、昨夜時間を共にした紳士とはかけ離れているが、優しく少し荒っぽいおじさん達が挨拶をしてくれた。「昨夜は楽しかった」「いい夜を過ごしたよ、気をつけて」という内容ばかりだったがその恩は貰って損はないと思い、これからの近所付き合いもそれなりにしようと考えた。
学校に着くと岩崎が欠伸をして「昨日はおじさん達に付き合わされたでしょ?皆我を主張してるから疲れたと思うけど、あの人たち怒らせたら危ないから気をつけてね」と忠告を貰った。本当に活気のある、年齢を知らぬ人たちだった。「うん、分かってるよ。あと、昨夜のことなんだけれど……」と岩崎の時間を頂戴し、中庭のベンチに呼び出した。佐城さんと事件の事を何か聞いていないかと思い、町の人気者である父を持つ彼女に頼めば何もかもが通るのではないかと、自分でも大変浅はかな考えをしたと思う。
岩崎は寒そうに「私のお父さんが何を言っているかっていう事?そりゃ、散々言ってるわよ。言ってない訳がないじゃない。そう、その事なんだけれど、佐城さんの情報。仕入れたよ」と喜怒哀楽をはっきりとさせて白い息を出した。僕はその情報というのを知るべきか知らずにいるべきか分からずにいたが、知るという欲望には勝てず聞く事にした。我ながら単純と思いつつも、彼女の全てを知り、事件に何の関わりも無いと証明して見せたいと思うのだ。
「まず、彼女の経歴が噂で伝っていたの。あくまで噂なだけだからそれが本当か否かだなんて本人しか知りやしない。信じすぎないこと。佐城さんは幼少期、ここの町に住んでいたらしい。 私の親戚が彼女のこと可愛がってたって言ってたわ。でも父の仕事の都合上でもっと遠くの田舎の方に引っ越す事になった。その後、彼女が十七歳くらいにまたこの町に来たらしいんだけど彼女が酷い状態だったってこと。」
「酷い状態って?」
「今話すわよ、焦らないで。親が離婚して母の方に付いて帰ってきたの。酷い状態っていうのは無一文に近い状態だったっていうこと。そのまま遠い田舎で過ごそうと思ってたらしいんだけど仕事が無くてこっちに来たと。母からの愛は尽きる事なくお金の問題以外は全てが完璧な家族だった。そして母がこの町の店で働いて、それを見て佐城さんも母の役に立ちたいとバイトや工芸品を売ったりし始めていた。まあそれほどの金を得られない訳で彼女が二十歳になるあたりで母が亡くなられる。やはり栄養失調で。取り残された彼女は身を削って得たお金で都心部に仕事を求めていった。それでなんとか生きる事も出来ていたみたい。その中で、図書館や本屋に居座る事が多かったらしく、美術に惹かれたんだと。話していて稀に美術言語や哲学、偉人の言葉を口にしていること無かった?」
「ああ、知識は無駄にあったと思う。心に残るものも多かった。」
「でしょう?それで彼女が今となってここに帰って来たんだって。骨や死に関して興味を持ったのはその都心部の図書館か、もしくは母の死の時に悲しみを感じたからより身近に死を感じたい。それで母と一緒になれる気がするとか……もうよく分からないわ。皆言っていることがバラバラなんだもの。でも神酒が好きと思ってるのなら好きでいいじゃない。好きな事には忠実にだよ。彼女が骨を愛しているのと同じく、神酒も好きな事を大切に生きていけばいいのよ。」
岩崎の放つ言葉の中に本当が混じっているのならば、やはり僕は佐城さんを愛したいんだと思う。悲しい思いをしてきた人に対し、父親譲りの僕がそれを見捨てる訳にはいかない。それが彼女という存在であると更に。僕は心に決め「僕は彼女が好きだ。でも父もここの人もそれを望んでいないんだ。自分の好きに忠実になれと言うが、僕にはそれがいけない事だと思う。殺人を楽しんでいる人が好きだからしていると言っても反感を買うだろう?それと一緒な気がするんだ」と正直な心を言葉に表し、僕の奥底にある“それ”という何かを、冷たい風と共に乗せた。空は見事に曇り。それは僕の心の迷い、そのものであった。
岩崎は「確かにそうかもしれない。でもあなたのその好きは決して悪くないと思うの。支離減裂な気がしたきた……もう終わりにしようか。なんだか朝から重い空気にはなりたくないな」と手をひらひらと揺らしてその場を去った。かつての佐城さんのように残された僕は、どうしようもなく立ち尽くす。少しの霜柱を踏みつけ、音を鳴らす。風が吹く度に鼻が痛みに耐えようとしている。僕も教室に戻ろうと思い、足を動かした。佐城さんが望むもの。それは一体何なのだろうか。彼女は果たして僕を必要としてくれるのだろうか。その答えはきっと否だ。僕が骨になるまでは愛してくれない。いや、骨になっても愛してくれないだろうか。ただの気散じに過ぎないのではないか?
しかし、僕は彼女からの好意を生きている僕自身で受け取りたいのだ。それは彼女の中では今までにない事であろう。ならば彼女の心に僕が改革を起こさねばいけないのだ!
それが僕の使命である!
学校に着くと岩崎が欠伸をして「昨日はおじさん達に付き合わされたでしょ?皆我を主張してるから疲れたと思うけど、あの人たち怒らせたら危ないから気をつけてね」と忠告を貰った。本当に活気のある、年齢を知らぬ人たちだった。「うん、分かってるよ。あと、昨夜のことなんだけれど……」と岩崎の時間を頂戴し、中庭のベンチに呼び出した。佐城さんと事件の事を何か聞いていないかと思い、町の人気者である父を持つ彼女に頼めば何もかもが通るのではないかと、自分でも大変浅はかな考えをしたと思う。
岩崎は寒そうに「私のお父さんが何を言っているかっていう事?そりゃ、散々言ってるわよ。言ってない訳がないじゃない。そう、その事なんだけれど、佐城さんの情報。仕入れたよ」と喜怒哀楽をはっきりとさせて白い息を出した。僕はその情報というのを知るべきか知らずにいるべきか分からずにいたが、知るという欲望には勝てず聞く事にした。我ながら単純と思いつつも、彼女の全てを知り、事件に何の関わりも無いと証明して見せたいと思うのだ。
「まず、彼女の経歴が噂で伝っていたの。あくまで噂なだけだからそれが本当か否かだなんて本人しか知りやしない。信じすぎないこと。佐城さんは幼少期、ここの町に住んでいたらしい。 私の親戚が彼女のこと可愛がってたって言ってたわ。でも父の仕事の都合上でもっと遠くの田舎の方に引っ越す事になった。その後、彼女が十七歳くらいにまたこの町に来たらしいんだけど彼女が酷い状態だったってこと。」
「酷い状態って?」
「今話すわよ、焦らないで。親が離婚して母の方に付いて帰ってきたの。酷い状態っていうのは無一文に近い状態だったっていうこと。そのまま遠い田舎で過ごそうと思ってたらしいんだけど仕事が無くてこっちに来たと。母からの愛は尽きる事なくお金の問題以外は全てが完璧な家族だった。そして母がこの町の店で働いて、それを見て佐城さんも母の役に立ちたいとバイトや工芸品を売ったりし始めていた。まあそれほどの金を得られない訳で彼女が二十歳になるあたりで母が亡くなられる。やはり栄養失調で。取り残された彼女は身を削って得たお金で都心部に仕事を求めていった。それでなんとか生きる事も出来ていたみたい。その中で、図書館や本屋に居座る事が多かったらしく、美術に惹かれたんだと。話していて稀に美術言語や哲学、偉人の言葉を口にしていること無かった?」
「ああ、知識は無駄にあったと思う。心に残るものも多かった。」
「でしょう?それで彼女が今となってここに帰って来たんだって。骨や死に関して興味を持ったのはその都心部の図書館か、もしくは母の死の時に悲しみを感じたからより身近に死を感じたい。それで母と一緒になれる気がするとか……もうよく分からないわ。皆言っていることがバラバラなんだもの。でも神酒が好きと思ってるのなら好きでいいじゃない。好きな事には忠実にだよ。彼女が骨を愛しているのと同じく、神酒も好きな事を大切に生きていけばいいのよ。」
岩崎の放つ言葉の中に本当が混じっているのならば、やはり僕は佐城さんを愛したいんだと思う。悲しい思いをしてきた人に対し、父親譲りの僕がそれを見捨てる訳にはいかない。それが彼女という存在であると更に。僕は心に決め「僕は彼女が好きだ。でも父もここの人もそれを望んでいないんだ。自分の好きに忠実になれと言うが、僕にはそれがいけない事だと思う。殺人を楽しんでいる人が好きだからしていると言っても反感を買うだろう?それと一緒な気がするんだ」と正直な心を言葉に表し、僕の奥底にある“それ”という何かを、冷たい風と共に乗せた。空は見事に曇り。それは僕の心の迷い、そのものであった。
岩崎は「確かにそうかもしれない。でもあなたのその好きは決して悪くないと思うの。支離減裂な気がしたきた……もう終わりにしようか。なんだか朝から重い空気にはなりたくないな」と手をひらひらと揺らしてその場を去った。かつての佐城さんのように残された僕は、どうしようもなく立ち尽くす。少しの霜柱を踏みつけ、音を鳴らす。風が吹く度に鼻が痛みに耐えようとしている。僕も教室に戻ろうと思い、足を動かした。佐城さんが望むもの。それは一体何なのだろうか。彼女は果たして僕を必要としてくれるのだろうか。その答えはきっと否だ。僕が骨になるまでは愛してくれない。いや、骨になっても愛してくれないだろうか。ただの気散じに過ぎないのではないか?
しかし、僕は彼女からの好意を生きている僕自身で受け取りたいのだ。それは彼女の中では今までにない事であろう。ならば彼女の心に僕が改革を起こさねばいけないのだ!
それが僕の使命である!
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