憧れのお嬢さまがうちにエロゲーしに来てますが、あくまで僕らは友達です

子狐モフる

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01 天道さんの一目惚れ 1

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 僕の当初のイメージでは、クラスメイトの天道ことみさんは『完璧』だった。
 
 さらさらの黒髪に大きくてぱっちりした目。すべすべの白い肌に柔らかそうな桜色の唇。

 いつもピシッと制服を着ていて化粧をしている様子もない。だけど全然野暮ったい感じはなくて、むしろ他の生徒にはない気品みたいなのがあって、いかにも深窓のご令嬢といった感じだ。

 その容姿は間違いなく学校内でもトップクラス。一目で彼女に心を奪われてしまった男子もきっと少なくないだろう。

 見た目だけでなく成績もいい。
 成績は常に学年上位をキープしているし授業態度も完璧。作文コンクールで入賞したこともある。

 おまけに多才で家庭科の調理実習ではプロ顔負けの腕前を披露してたし、音楽の授業で歌った時は先生が所属しているプロの合唱団に本気で勧誘していたほどだ。

 さらにさらに運動神経もいい。
 体力測定の時は男子を含めても上位だったし、体育の授業は男女別々なんであまり見る機会はないけど、スポーツをやるといつもエース級の大活躍をしているんだとか。

 この時点十二分におかしいのに家は世界でも有数の大企業で超が付くぐらいのお嬢さま。もはやチートだ。天は人に二物を与えないのではなかったのか。

 唯一の欠点と言えば、彼女に友達がいないことだろう。

 天道さんはよく言えば凜としているのだけど、悪く言えば周りに壁を作っていた。
 彼女とお近づきになろうとする人は多いけど、天道さんはいつもどこかそっけない対応をする。言ってしまえば塩対応だ。そんな感じなので天道さんはいつも一人だった。

 とはいえ、ああいうのはぼっちではなく孤高というんだろう。周りに迎合したりせず孤高を保ち続ける姿は、なおさら天道さんの『完璧』というイメージを補強していた。
 

 ――ただし、これらは全て過去形だ。

 今の僕は到底天道さんを『完璧』だとは思えない。

 色々と理由はあるけれど、最たる理由はその……なんというか……。
 
 天道さんは、僕と二人きりの時だけちょっと……おかしいんだ……。

 †

 ぴちゃり……ぴちゃり……と、静かな寝室では白い肌に舌を這わせるそのいやらしい音がよく聞こえた。

『ん……はあっ……んんっ……!』

 ベッドでボクに組み伏せられながら、彼女は切なげな声を上げる。

 感じやすい彼女はボクの行う愛撫に敏感に反応してくれる。
 涙目になりながらも必死に声を押し殺す姿がなんともいじらしい。きっと大きな声を上げるのをはしたないと思っているのだろう。

 そんな姿が可愛くて、ついつい嬌声を上げさせたいという嗜虐心が湧いてくる。

『あの、ご主人様……もう……』

 ぼんやりした表情で、何かをねだるようにボクを見つめてきた。

『ふふ、我慢できなくなっちゃった?』
『…………はい』

 顔を真っ赤にして、か細い声で返す彼女が愛おしくて思わずギュッと抱きしめた。それに対しておずおずと抱き返してくる。

『ご主人様……好きにしていただいて……構いませんから……』
『大丈夫? そんなこと言われたら、加減できなくなっちゃいそうだけど』
『だ、大丈夫です。その……』

 彼女は恥ずかしそうに目をそらせた。

『乱暴にされる方が……好きですので……』

 もう我慢できなかった。彼女の腕をベッドに押さえつけ、欲望のままに自分の――。

 † 

「はぁ……エッチな表情のシロちゃん……とってもかわいいです……」

 僕の隣ではぁはぁしながらそんなことを呟いたのは天道ことみさん。十六歳の女子高生で僕のクラスメイト。

 とろんととろけたような……なんというか……ちょっと子供には見せられないような表情でパソコンのモニターを食い入るように見つめている。

「え、えーと天道さん? よ、よだれ出てるよ?」
「……ふえ!? す、すいませんお見苦しいところを……」
「い、いえどうぞご遠慮なく……」

 よだれを拭くと天道さんはまたパソコンのモニターで繰り広げられている光景に没頭し始めた。

 ――えっとだ、現在の状況を端的にまとめると……。

 完璧美少女の天道さんが。

 僕んちに来てて。

 僕の部屋にいて。

 僕の隣でエロゲーやってはぁはぁしてる。

 なにこの状況。

 ついでに言うとパソコンの画面の中では狐耳と尻尾を生やしたケモ耳ヒロイン――シロちゃんが主人公にずっこんばっこんされてアンアン言ってる。超気まずい。

 あらためてちらりと天道さんの様子をうかがうと……切なげに自分の身体をぎゅっと抱きしめ、悩ましげに太ももをもじもじさせている。

 なんというか、見てるだけで理性が崩壊しそうなレベルで、エロい。

「て、天道さん? 大丈夫?」
「………………はっ!? だ、大丈夫です! 家に帰るまでは我慢しますから!」
「我慢するって何を!?」
「……あ!? ち、違うんです! 我慢するっていうのはそういうあれじゃなくて! その、あの、えっと、ええっと……」
「…………」
「…………」
「い、いーじゃないですか女の子だってえっちな気分になったってーーっ!」
「そこで開き直らないでよ!?」
「だってだって普段あんなにしっかりしててちっちゃくてクールでツンツンだけどご主人様と二人きりの時だけは甘えん坊で寂しがり屋で健気なシロちゃんが大好きなご主人様にあんなことやこんなことされてトロトロの表情でかわいい声でおねだりしてるんですよえっちな気分にならない方がおかしいでしょう!? むしろ家に帰るまでは我慢する私の忍耐力を褒めてください!」
「いやもう少し自重してよ慎みを持ってよ!? というか家でこういうゲームできない事情は知ってるけど同級生の男子の家まで来てエロゲーやるってのは流石にどうなの!? 僕だって天道さんの隣で理性保つの大変なんだよ!?」
「えっ」
「あ、いや、ごめん。今のは聞かなかったことにして……」

 気恥ずかしくなってお互いに顔を背ける。顔が熱い。

「その……さ。普通のシーンはともかく、やっぱりこういうシーンの時は僕はどこか行ってた方が……」
「だ、ダメですよ! シロちゃんの魅力を語る上で欠かせないのが普段のクールでしっかり者な姿とエッチしてる時に甘えん坊になるかわいさのギャップなんですから! 遠野くんもしっかり見ててくれないと!」

 天道さんは熱く語る。エロゲーのキャラのベッドシーンにここまで情熱を燃やす女子高生ってどうなんだ。……と思っていると、天道さんは小さくて柔らかい手で僕の手をきゅっと握ってきた。

「私、毎回このゲームをやるのを楽しみにしてるのは確かですけど、やった後で遠野くんと感想を語り合うのも同じくらい楽しみにしてるんです。だから、どこにもいかないでください」

 ――卑怯だと思う。捨てられた子犬みたいな目でそんなこと言われたら断れるはずがない。

「……わかった」
「ふふ、ありがとうございます。……あ、遠野くんこのシーン! 一回終わった後にトロ顔のままもう一回おねだりするシロちゃん、エモくないですか!?」
「そ、そうだねー……」

 どうしてこんなことになったんだろう。
 僕は苦笑いしながら、あの日のことを思い出した。



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