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(えー……なんだか凄い車が止まってる)
マンションの下、丁度この間黒川に送って貰った辺りだろうか。遠目から見てもわかる黒塗りの高級車が横付けされていた。
よくドラマや映画に出てきそうな高級車の外には、これまた期待を裏切らない黒いスーツに身を包んだ男が立っている。運転席にも同様に、同じ出で立ちの男が座っていた。
まるでそこだけが別世界のようで、住宅やマンションの立ち並ぶ周りの景観からはとても浮いて見える。
(絶対一般社会の人たちじゃないよね、アレ)
どうみてもその筋の人か、良くて要人のSPといったところだろうか? どちらも律の想像や憶測に過ぎないが、そう思わせる独特な雰囲気を醸し出していた。
触らぬ神に祟りなし。そのことわざに倣い、厄介事に巻き込まれないようにと平静を装いながら、黒塗りの車の横を通り抜けていく。
黒スーツの男とは視線を合わせないように、極力不自然さを出さないように普通を装って目の前を通り抜ける。
(どうしよう、何だかすっごく見られてる)
もしかすると顔に出ていたのだろうか? それとも何か気に障ることがあったのだろうか?
外に立っていた男から刺さるような視線を感じ、身体が縮こまりそうになってしまう。車内にいるもう一人の男に何やら耳打ちをしていたが、厄介事に巻き込まれる前にと律は足早にマンションの中へ逃げ込んだ。
「心臓に悪いよ、まったく……」
このマンションにその筋の人間でも住んでいるのかもしれないと、思わず身構えてしまう。そうだとすれば、ここに住まわせてもらっている間は関わりを持たないようにしたいと強く願ってしまう。
大きくため息を吐き出しながら、律はエレベーターに乗り込んでボタンを押す。壁に寄りかかりながら再度ため息を吐き出していると、ポケットの中で携帯が震えた。
相手は望で、先刻送ったメッセージの返信だった。そのお陰でいくらかほっこりと和み、そのままエレベーターを下りる。
(あれ……紫藤さん、帰ってきてる?)
ドアを開けようとしたところで、既に鍵が開いていることに気が付いた。予想以上に早い帰宅に嬉しい反面、久しぶりに会う紫藤に少し戸惑いもある。
(大丈夫、普通に接すれば良いんだ。普通に)
幸いまだ薬も効いているので、この時点で紫藤の匂いを感じ取ることは出来ない。きっと大丈夫だと言い聞かせ、律は玄関のドアを開いた。
「ただいま戻りまし――」
戻りましたと言おうとしたところで、玄関に靴が二足並んでいるのが目に入った。一足は紫藤の靴で間違いないが、もう一足の革靴は見覚えがないものだった。
(紫藤さんのお客さん?)
ここは紫藤の家なのだから、来客があったとしても不思議はない。リビングから話し声がするので間違いはないが、律もリビングのキッチンに用があるのでどうしたものかと悩んでしまう。
マンションの下、丁度この間黒川に送って貰った辺りだろうか。遠目から見てもわかる黒塗りの高級車が横付けされていた。
よくドラマや映画に出てきそうな高級車の外には、これまた期待を裏切らない黒いスーツに身を包んだ男が立っている。運転席にも同様に、同じ出で立ちの男が座っていた。
まるでそこだけが別世界のようで、住宅やマンションの立ち並ぶ周りの景観からはとても浮いて見える。
(絶対一般社会の人たちじゃないよね、アレ)
どうみてもその筋の人か、良くて要人のSPといったところだろうか? どちらも律の想像や憶測に過ぎないが、そう思わせる独特な雰囲気を醸し出していた。
触らぬ神に祟りなし。そのことわざに倣い、厄介事に巻き込まれないようにと平静を装いながら、黒塗りの車の横を通り抜けていく。
黒スーツの男とは視線を合わせないように、極力不自然さを出さないように普通を装って目の前を通り抜ける。
(どうしよう、何だかすっごく見られてる)
もしかすると顔に出ていたのだろうか? それとも何か気に障ることがあったのだろうか?
外に立っていた男から刺さるような視線を感じ、身体が縮こまりそうになってしまう。車内にいるもう一人の男に何やら耳打ちをしていたが、厄介事に巻き込まれる前にと律は足早にマンションの中へ逃げ込んだ。
「心臓に悪いよ、まったく……」
このマンションにその筋の人間でも住んでいるのかもしれないと、思わず身構えてしまう。そうだとすれば、ここに住まわせてもらっている間は関わりを持たないようにしたいと強く願ってしまう。
大きくため息を吐き出しながら、律はエレベーターに乗り込んでボタンを押す。壁に寄りかかりながら再度ため息を吐き出していると、ポケットの中で携帯が震えた。
相手は望で、先刻送ったメッセージの返信だった。そのお陰でいくらかほっこりと和み、そのままエレベーターを下りる。
(あれ……紫藤さん、帰ってきてる?)
ドアを開けようとしたところで、既に鍵が開いていることに気が付いた。予想以上に早い帰宅に嬉しい反面、久しぶりに会う紫藤に少し戸惑いもある。
(大丈夫、普通に接すれば良いんだ。普通に)
幸いまだ薬も効いているので、この時点で紫藤の匂いを感じ取ることは出来ない。きっと大丈夫だと言い聞かせ、律は玄関のドアを開いた。
「ただいま戻りまし――」
戻りましたと言おうとしたところで、玄関に靴が二足並んでいるのが目に入った。一足は紫藤の靴で間違いないが、もう一足の革靴は見覚えがないものだった。
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