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1章 少年編
1話 追放
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「フィル、お前はもうこのクラスには必要ない」
「……っ!!」
放課後、教室から去ろうとした時、唐突にルーグに言い渡された。
本来なら驚いたり、信じられないといった反応をするのだろう。
けれど僕の場合はこの無力感に耐えるように、ただ歯を食いしばるだけ。
自分でもいつかこの日が来ると理解していたから。
「お前はあの『ニルヴァーナ家』の三男だ。だからこそ半年も俺のクラスに無能を置くことを我慢してやったんだ」
ここは国立魔術学院。その数あるクラスの中でもトップに君臨するAクラスの教室だ。
このクラスには’次期勇者候補’であったり、最年少で’レベル4’に至った魔術師など天才児たちが集まる。
そんな誉あるAクラスから僕は現在進行形で追放されようとしていた。
「でもお前は半年たっても一匹も魔物をテイム出来なかった。一匹もだ。そんな『テイマー』はAクラスにいる資格なんて存在しない。皆もそう思うだろ?」
ルーグは周りで様子を傍観していたクラスメイト達に話を振る。
すると待ってましたと言わんばかりに次々と鋭利な言葉が投げかけられた。
「こんなゴミと同じ空気を吸うだけで吐き気がしてたのよね」
「マジでこんな奴と同じクラスとかありえなかったからな。同じ目で見られるのがどれだけ苦痛だったか」
「雑魚のくせに家系が優秀だからって調子乗ってたのマジでキモかったわ~」
クラスメイト達は僕に敵意のある鋭い視線を向けてくる。
彼らがルーグに無理やり言わされているならどれだけ良かっただろうか。
彼らも心の底から僕が邪魔だと思っているのだろう。
でなければ、こんな表情出来るはずもない。
「私はフィルを追放するのは反対よ」
そんな中、一人だけ反対意見を示す者がいた。
艶やかな金髪に似合う整った顔立ち。
そして、このクラスの中で最も実力のある女性。
彼女の名はサーシャ。
勇者候補のルーグに次いでこのクラスで発言力を持つ人物である。
当然、ルーグとしてはこの展開は面白くないようで、不機嫌そうに尋ねる。
「なんだい、サーシャ。俺の意見に反対するのか?」
「えぇ、彼がいないとこのクラスの掃除だったり片付けだったりは誰がするの? 正直、彼がいれば雑用しなくて済むから楽で良いんだけど」
ちなみに僕とサーシャは幼馴染の関係にある。
昔はよく二人で遊んだりしたものだ。
まぁ今では見た通り、僕たちの仲は無いものと考えていい。
実際、三年以上も互いに口をきいてなかった。
この反対意見も庇ってくれているわけではなく、本気で雑用係がいなくなることを心配しているだけだろう。
「それならルーロッテに任せればいい」
「え、ええぇ!? 私ですか!?」
「何か文句でもあるのかい? フィルがいなければこのクラスで最弱なのは君だろう?」
「い、いえ。ありません……」
理不尽に仕事を押し付けられて驚くルーロッテだが、ルーグの前では何も言い返せなかい。
渋々と言った様子で首を縦に振った。
ルーロッテは先ほどまで他のクラスメイト達と一緒に僕に暴言を吐いていたのに、今では表情を曇らせて委縮している。
それも仕方ない。今までは僕という的がいたが、明日からはそのヘイトが全て自分に向けられると言われたようなものなのだから。
そんな二人の会話を聞いてサーシャは納得したのか、
「ふーん、それならいいわ。好きにしなさい」
「……ちっ、なんで君はいつもそう、上から目線なのかな」
ボソッと小さな声でルーグは愚痴を漏らす。
しかしサーシャの耳には届いていないようで、彼女はそのまま机に顔をうずめて眠りについた。
「フィル、お前の次のクラスは先に俺が手配してあげておいたよ」
「どこだ?」
「あっはっは、Xクラスさ! 君にはお似合いだろう?」
笑いながら告げるルーグ。
彼に続くようにドッと教室の中で笑いが巻き起こった。
「っ!」
彼らが笑う理由は一つ。
それはXクラスが異端児の集まる最弱クラスだからだ。
一学年にクラスは六つ存在する。
下からE、D、C、B、A。そして最底辺のXだ。
今日まで一番上にいた僕だが、明日からはXクラスと、底辺まで転落した。
そりゃあ笑い物にもされるだろうな。
「どうした? 何か言いたいことでもあるのか?」
ルーグは煽るように僕に問う。
ここで僕に言い返せるような力があれば、何かを変えられる才能があれば。
けれどそんなもの存在しない。今の僕は何かに縋ることさえ許されない弱者。
だから反論も出来ない。言い返してはならない。
そんな無力な自分自身に反吐が出そうになる。
「……何もない」
「だよな? じゃあさっさと出ていってくれるかな?」
すぐにでも追い出そうとするルーグに同調するよう、嘲笑をもらすクラスメイト達。
僕はそんな彼らを背にAクラスの教室を出た……いや、追放されたのだった。
「……っ!!」
放課後、教室から去ろうとした時、唐突にルーグに言い渡された。
本来なら驚いたり、信じられないといった反応をするのだろう。
けれど僕の場合はこの無力感に耐えるように、ただ歯を食いしばるだけ。
自分でもいつかこの日が来ると理解していたから。
「お前はあの『ニルヴァーナ家』の三男だ。だからこそ半年も俺のクラスに無能を置くことを我慢してやったんだ」
ここは国立魔術学院。その数あるクラスの中でもトップに君臨するAクラスの教室だ。
このクラスには’次期勇者候補’であったり、最年少で’レベル4’に至った魔術師など天才児たちが集まる。
そんな誉あるAクラスから僕は現在進行形で追放されようとしていた。
「でもお前は半年たっても一匹も魔物をテイム出来なかった。一匹もだ。そんな『テイマー』はAクラスにいる資格なんて存在しない。皆もそう思うだろ?」
ルーグは周りで様子を傍観していたクラスメイト達に話を振る。
すると待ってましたと言わんばかりに次々と鋭利な言葉が投げかけられた。
「こんなゴミと同じ空気を吸うだけで吐き気がしてたのよね」
「マジでこんな奴と同じクラスとかありえなかったからな。同じ目で見られるのがどれだけ苦痛だったか」
「雑魚のくせに家系が優秀だからって調子乗ってたのマジでキモかったわ~」
クラスメイト達は僕に敵意のある鋭い視線を向けてくる。
彼らがルーグに無理やり言わされているならどれだけ良かっただろうか。
彼らも心の底から僕が邪魔だと思っているのだろう。
でなければ、こんな表情出来るはずもない。
「私はフィルを追放するのは反対よ」
そんな中、一人だけ反対意見を示す者がいた。
艶やかな金髪に似合う整った顔立ち。
そして、このクラスの中で最も実力のある女性。
彼女の名はサーシャ。
勇者候補のルーグに次いでこのクラスで発言力を持つ人物である。
当然、ルーグとしてはこの展開は面白くないようで、不機嫌そうに尋ねる。
「なんだい、サーシャ。俺の意見に反対するのか?」
「えぇ、彼がいないとこのクラスの掃除だったり片付けだったりは誰がするの? 正直、彼がいれば雑用しなくて済むから楽で良いんだけど」
ちなみに僕とサーシャは幼馴染の関係にある。
昔はよく二人で遊んだりしたものだ。
まぁ今では見た通り、僕たちの仲は無いものと考えていい。
実際、三年以上も互いに口をきいてなかった。
この反対意見も庇ってくれているわけではなく、本気で雑用係がいなくなることを心配しているだけだろう。
「それならルーロッテに任せればいい」
「え、ええぇ!? 私ですか!?」
「何か文句でもあるのかい? フィルがいなければこのクラスで最弱なのは君だろう?」
「い、いえ。ありません……」
理不尽に仕事を押し付けられて驚くルーロッテだが、ルーグの前では何も言い返せなかい。
渋々と言った様子で首を縦に振った。
ルーロッテは先ほどまで他のクラスメイト達と一緒に僕に暴言を吐いていたのに、今では表情を曇らせて委縮している。
それも仕方ない。今までは僕という的がいたが、明日からはそのヘイトが全て自分に向けられると言われたようなものなのだから。
そんな二人の会話を聞いてサーシャは納得したのか、
「ふーん、それならいいわ。好きにしなさい」
「……ちっ、なんで君はいつもそう、上から目線なのかな」
ボソッと小さな声でルーグは愚痴を漏らす。
しかしサーシャの耳には届いていないようで、彼女はそのまま机に顔をうずめて眠りについた。
「フィル、お前の次のクラスは先に俺が手配してあげておいたよ」
「どこだ?」
「あっはっは、Xクラスさ! 君にはお似合いだろう?」
笑いながら告げるルーグ。
彼に続くようにドッと教室の中で笑いが巻き起こった。
「っ!」
彼らが笑う理由は一つ。
それはXクラスが異端児の集まる最弱クラスだからだ。
一学年にクラスは六つ存在する。
下からE、D、C、B、A。そして最底辺のXだ。
今日まで一番上にいた僕だが、明日からはXクラスと、底辺まで転落した。
そりゃあ笑い物にもされるだろうな。
「どうした? 何か言いたいことでもあるのか?」
ルーグは煽るように僕に問う。
ここで僕に言い返せるような力があれば、何かを変えられる才能があれば。
けれどそんなもの存在しない。今の僕は何かに縋ることさえ許されない弱者。
だから反論も出来ない。言い返してはならない。
そんな無力な自分自身に反吐が出そうになる。
「……何もない」
「だよな? じゃあさっさと出ていってくれるかな?」
すぐにでも追い出そうとするルーグに同調するよう、嘲笑をもらすクラスメイト達。
僕はそんな彼らを背にAクラスの教室を出た……いや、追放されたのだった。
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