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ダンジョン
四天王
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「オンナダカラ、イチゲキデ、オワラセテヤルヨ!」
魔族は長剣を床に捨ててゆっくりと私のもとへ近づいてくる。
何故、他の魔族のように私たちに本物の殺意を向けてこないのか。
それは、この魔族にとっての役割があるからだ。
「じゃあ私も一撃で終わらせようかしら」
私は認識阻害のフードを脱ぎながらスキルを行使する。
「【殺戮の鉄鍋】!」
私がその言葉を放った瞬間、右手の中に漆黒のフライパンが発現する。
通常ならアレンのスキルを見た後だ。馬鹿にされてもおかしくないスキルである。
しかし、魔族は私を見た瞬間、固まった。
それはまるで銅像のように、無機物のように。
「ソ、ソ、ソノゾクセイハ! ア、アリエナイ! ソレハ、アノオカタノ!」
まるで信じられないものを見ているかのように叫んだ。
「あら? スキルの方で気づいたの? 私じゃなくて?」
「…………ワタシ? マ、マ、マサカ!」
私の言葉に更に魔族は驚愕をあらわにする。
目が見開きすぎているが大丈夫だろか。落ちるのでは? というレベルで目を開けていた。
しかし、わざわざ私もこの魔族の気持ちが整理されるまで待ってやる理由もない。
そもそも、三人の意識がない状態でないといけないのだから。
「久しぶりね。ハデス」
「え、え、ええええええええええええぇぇぇぇぇ!?」
ハデスは私を見ると、断末魔にひけを取らない叫び声をあげたのだった。
「その堅苦しい話し方は止めなさい。魔物みたいで気持ち悪いわ」
「なっ! 本物っぽいじゃないですか!」
「本物って…………貴方も本物の魔族じゃない」
ハデス曰く、三人は当分起きない程度の威力で殴ったため、意識が戻ることについては警戒しなくていいようだ。
ちなみに今の私たちは70階層でのんきにお茶をしてる。
テーブルとイスはハデスが使っていたものだ。
70階層になんて何百年も誰も来ない。
もちろん、暇にもなるだろう。私なら自我を保てる自信がない。
知恵のない魔物であれば暇などということは感じないだろうが。
「それにしても…………エリス様が来るとは」
「まぁ勇者パーティーとしてだけどね。どう? あの三人は」
「…………正直言うと弱すぎます。80階層に到達出来たらいいレベルです」
ハデスは少し残念そうに口にした。
70階層の守護者であるハデスに負ける程度の実力だ。
100層など到底攻略不可能である。
「しかし、一年程度で来るとはいやはや、予想外でした」
「まぁ世代に恵まれていたわね。ちなみにあなたが倒した二人目の冒険者はこの国の王族よ?」
「…………大丈夫です。うん。この三百年孤独に耐えた俺の屈強な精神ならそれぐらいのこと驚きません」
瞳孔がぐるぐる回っている状態で言われても説得力はない。
そんなハデスを見て私は苦笑いを漏らす。
「それにしても一年か…………時間が経つのは早いわね」
「ええ。あの頃のエリス様とは一風、今のエリス様の方が成長なされたように見えます」
ハデスも私を見ながら微笑む。
こうして魔族と人間が交流を深めているなどだれが想像できるだろうか。
誰も想像できまい。そもそも魔族がいること自体誰も信じていないのだから。
「そういえば一年前のエリス様は男、男って言ってましたけど。今はモテモテじゃないですか」
「そうね…………あの頃は一番焦ってたから…………ってモテモテじゃないわよ!」
反応が遅れた私は恥ずかしさを誤魔化すようにハデスをペシペシと叩く。
しかし、どうやら忘れていたようだ。
私の隣には【殺戮の鉄鍋】が視界に入る。
「痛いっ! 威力がおかしいんですよ! あぁ…………これは三日は痛むな」
モミジができた背中をさすりながらハデスは愚痴を吐く。
ちなみにハデスの背中のやけどはもう完治している。
魔族は自然治癒力が高いのだ。
そして、そんな魔族に三日間も痛むとなるとやはり私の攻撃力の高さがうかがえる。
「少し昔話でもする?」
「いいですね…………」
こうして私たちはダンジョンの中で過去を回想し始めた。
魔族は長剣を床に捨ててゆっくりと私のもとへ近づいてくる。
何故、他の魔族のように私たちに本物の殺意を向けてこないのか。
それは、この魔族にとっての役割があるからだ。
「じゃあ私も一撃で終わらせようかしら」
私は認識阻害のフードを脱ぎながらスキルを行使する。
「【殺戮の鉄鍋】!」
私がその言葉を放った瞬間、右手の中に漆黒のフライパンが発現する。
通常ならアレンのスキルを見た後だ。馬鹿にされてもおかしくないスキルである。
しかし、魔族は私を見た瞬間、固まった。
それはまるで銅像のように、無機物のように。
「ソ、ソ、ソノゾクセイハ! ア、アリエナイ! ソレハ、アノオカタノ!」
まるで信じられないものを見ているかのように叫んだ。
「あら? スキルの方で気づいたの? 私じゃなくて?」
「…………ワタシ? マ、マ、マサカ!」
私の言葉に更に魔族は驚愕をあらわにする。
目が見開きすぎているが大丈夫だろか。落ちるのでは? というレベルで目を開けていた。
しかし、わざわざ私もこの魔族の気持ちが整理されるまで待ってやる理由もない。
そもそも、三人の意識がない状態でないといけないのだから。
「久しぶりね。ハデス」
「え、え、ええええええええええええぇぇぇぇぇ!?」
ハデスは私を見ると、断末魔にひけを取らない叫び声をあげたのだった。
「その堅苦しい話し方は止めなさい。魔物みたいで気持ち悪いわ」
「なっ! 本物っぽいじゃないですか!」
「本物って…………貴方も本物の魔族じゃない」
ハデス曰く、三人は当分起きない程度の威力で殴ったため、意識が戻ることについては警戒しなくていいようだ。
ちなみに今の私たちは70階層でのんきにお茶をしてる。
テーブルとイスはハデスが使っていたものだ。
70階層になんて何百年も誰も来ない。
もちろん、暇にもなるだろう。私なら自我を保てる自信がない。
知恵のない魔物であれば暇などということは感じないだろうが。
「それにしても…………エリス様が来るとは」
「まぁ勇者パーティーとしてだけどね。どう? あの三人は」
「…………正直言うと弱すぎます。80階層に到達出来たらいいレベルです」
ハデスは少し残念そうに口にした。
70階層の守護者であるハデスに負ける程度の実力だ。
100層など到底攻略不可能である。
「しかし、一年程度で来るとはいやはや、予想外でした」
「まぁ世代に恵まれていたわね。ちなみにあなたが倒した二人目の冒険者はこの国の王族よ?」
「…………大丈夫です。うん。この三百年孤独に耐えた俺の屈強な精神ならそれぐらいのこと驚きません」
瞳孔がぐるぐる回っている状態で言われても説得力はない。
そんなハデスを見て私は苦笑いを漏らす。
「それにしても一年か…………時間が経つのは早いわね」
「ええ。あの頃のエリス様とは一風、今のエリス様の方が成長なされたように見えます」
ハデスも私を見ながら微笑む。
こうして魔族と人間が交流を深めているなどだれが想像できるだろうか。
誰も想像できまい。そもそも魔族がいること自体誰も信じていないのだから。
「そういえば一年前のエリス様は男、男って言ってましたけど。今はモテモテじゃないですか」
「そうね…………あの頃は一番焦ってたから…………ってモテモテじゃないわよ!」
反応が遅れた私は恥ずかしさを誤魔化すようにハデスをペシペシと叩く。
しかし、どうやら忘れていたようだ。
私の隣には【殺戮の鉄鍋】が視界に入る。
「痛いっ! 威力がおかしいんですよ! あぁ…………これは三日は痛むな」
モミジができた背中をさすりながらハデスは愚痴を吐く。
ちなみにハデスの背中のやけどはもう完治している。
魔族は自然治癒力が高いのだ。
そして、そんな魔族に三日間も痛むとなるとやはり私の攻撃力の高さがうかがえる。
「少し昔話でもする?」
「いいですね…………」
こうして私たちはダンジョンの中で過去を回想し始めた。
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