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ダンジョン
秘めたる過去
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一年前の私は手本のような反抗期に陥っていた。
父の言葉は無視し、従者たちにも拒絶反応を見せる。
原因としてはやはり婚約ができなかったことが一番大きい。
もともと、幼少期から引きこもり体質だった私に異性との関係を持つ機会がなかったのだ。
一度だけ幼いころに異性と仲を深めれたものの、住む世界が違うらしく、父に無理やり離された。
「私は自由に生きるわ!」
そう言って屋敷を出たのが一年前。俗にいう家出である。
公爵令嬢として私は鎖に縛られて生きてきた。
屋敷の外に出るのは年に一度の舞踏会の日しか出ない。
そう。私はほぼ監獄のような場所で生きてきたのだ。
「…………ッ!」
そんな私にとって平民街は異世界であった。
見たことのない景色に見たことのない服装。見たことのない物に感じたことのない感情。
そう。私は新世界へと旅に出たのだ。
しかし、新世界もそう甘くなかった。
いや、私の知識不足原因である。
「ん? ここって何の施設なのかしら?」
私が平民街に降りて、一番最初に気になった物はダンジョンであった。
当初の私には実際に魔物などいるとは思ってもおらず、ましてや平民が毎日死を覚悟して戦っているとは思ってもいなかったのだ。
そんな私は…………
「まぁこれだけ大きければ寝るぐらいさせてくれるわよね」
今思えば、馬鹿にもほどがあるだろう。
私はダンジョンで一夜を過ごそうとしたのだ。
もちろん、入り口にはギルド職員はいた。
「ねぇ。一日だけここにいていいかしら?」
「…………ん? 子供はこんな時間にここに来ては…………え、エリス様!?」
「あれ? 私とあなたどこかで会ったことがあるの?」
「いいえ! まさか噂の秘匿視察…………ど、どうぞお入りください!」
何故、あの職員が入れてくれたかは私には分からない。
普通、十五歳の、しかも貴族の女の子を一人で入れさせるのはいかがなものかと思うが。
まぁ平民の中では十歳から冒険者として働いている者もいる。
そこは地位間の考え方の違いであろう。
「うわっ! なんなの!? このにおい!」
ダンジョンに入った瞬間、私は血と肉のにおいに鼻を押さえた。
しかし、そんなことはすぐに忘れた。
何故なら、
「何これ…………宝石?」
転移石に目を奪われたからだ。
今まで見てきたどの宝石よりも美しく感じた。
転移石から溢れる初めての魔力に興奮して美しく感じたのかもしれない。
だから私は触ってみた。
『血縁を確認。転移を開始します』
「…………うわっ!」
まるで脳内に直接語りかけてくるような言葉に私は反射的に飛び下がってしまう。
しかし、その時にはもう遅かった。
「…………あれ? 視界が…………」
転移石に触れた時点で転移が発動していたのだ。
すぐに立ち眩みのように視界が真っ暗に染まり始めた。
そして、徐々に視界が開け始める。
先ほどの血肉のにおいはなくなり、埃臭さだけが残っていた。
しかし、問題はそこではない。
「「「「…………あん?」」」」
「…………ん?」
私は素っ頓狂な声を上げてしまう。
それは私を囲むように立っている屈強な男たちが視界に入っているからだ。
しかも、
「なんでおじさんたちはコスプレしてるのかしら?」
「「「「……………………」」」」
目の前に現れた四人ほどのおじさんたちは全員角と尾を生やしていた。
それも皆が怖そうな顔をして。
「あ、勝手に家に侵入して悪かったわね。今日一日だけ寝させてもらえないかしら」
「おい、どうしたお前ら…………あん? 誰だ嬢ちゃん?」
「あなたもコスプレしてるのね。私はエリス・アルローゼ。こうしゃ…………いや、そこらの一般人よ」
奥からどすどすとやってきた筋骨隆々とした若者は私を固まってしまう。
ちなみにこの若者も大きな角が生えていた。漆黒の鋭く強靭そうな。
そして、その男は固まっている四人とは違って何処か嬉しそうな笑みを浮かべて口にした。
「我は魔王だ! よろしくなエリス!」
これが私とあいつ…………魔王との出会いだった。
父の言葉は無視し、従者たちにも拒絶反応を見せる。
原因としてはやはり婚約ができなかったことが一番大きい。
もともと、幼少期から引きこもり体質だった私に異性との関係を持つ機会がなかったのだ。
一度だけ幼いころに異性と仲を深めれたものの、住む世界が違うらしく、父に無理やり離された。
「私は自由に生きるわ!」
そう言って屋敷を出たのが一年前。俗にいう家出である。
公爵令嬢として私は鎖に縛られて生きてきた。
屋敷の外に出るのは年に一度の舞踏会の日しか出ない。
そう。私はほぼ監獄のような場所で生きてきたのだ。
「…………ッ!」
そんな私にとって平民街は異世界であった。
見たことのない景色に見たことのない服装。見たことのない物に感じたことのない感情。
そう。私は新世界へと旅に出たのだ。
しかし、新世界もそう甘くなかった。
いや、私の知識不足原因である。
「ん? ここって何の施設なのかしら?」
私が平民街に降りて、一番最初に気になった物はダンジョンであった。
当初の私には実際に魔物などいるとは思ってもおらず、ましてや平民が毎日死を覚悟して戦っているとは思ってもいなかったのだ。
そんな私は…………
「まぁこれだけ大きければ寝るぐらいさせてくれるわよね」
今思えば、馬鹿にもほどがあるだろう。
私はダンジョンで一夜を過ごそうとしたのだ。
もちろん、入り口にはギルド職員はいた。
「ねぇ。一日だけここにいていいかしら?」
「…………ん? 子供はこんな時間にここに来ては…………え、エリス様!?」
「あれ? 私とあなたどこかで会ったことがあるの?」
「いいえ! まさか噂の秘匿視察…………ど、どうぞお入りください!」
何故、あの職員が入れてくれたかは私には分からない。
普通、十五歳の、しかも貴族の女の子を一人で入れさせるのはいかがなものかと思うが。
まぁ平民の中では十歳から冒険者として働いている者もいる。
そこは地位間の考え方の違いであろう。
「うわっ! なんなの!? このにおい!」
ダンジョンに入った瞬間、私は血と肉のにおいに鼻を押さえた。
しかし、そんなことはすぐに忘れた。
何故なら、
「何これ…………宝石?」
転移石に目を奪われたからだ。
今まで見てきたどの宝石よりも美しく感じた。
転移石から溢れる初めての魔力に興奮して美しく感じたのかもしれない。
だから私は触ってみた。
『血縁を確認。転移を開始します』
「…………うわっ!」
まるで脳内に直接語りかけてくるような言葉に私は反射的に飛び下がってしまう。
しかし、その時にはもう遅かった。
「…………あれ? 視界が…………」
転移石に触れた時点で転移が発動していたのだ。
すぐに立ち眩みのように視界が真っ暗に染まり始めた。
そして、徐々に視界が開け始める。
先ほどの血肉のにおいはなくなり、埃臭さだけが残っていた。
しかし、問題はそこではない。
「「「「…………あん?」」」」
「…………ん?」
私は素っ頓狂な声を上げてしまう。
それは私を囲むように立っている屈強な男たちが視界に入っているからだ。
しかも、
「なんでおじさんたちはコスプレしてるのかしら?」
「「「「……………………」」」」
目の前に現れた四人ほどのおじさんたちは全員角と尾を生やしていた。
それも皆が怖そうな顔をして。
「あ、勝手に家に侵入して悪かったわね。今日一日だけ寝させてもらえないかしら」
「おい、どうしたお前ら…………あん? 誰だ嬢ちゃん?」
「あなたもコスプレしてるのね。私はエリス・アルローゼ。こうしゃ…………いや、そこらの一般人よ」
奥からどすどすとやってきた筋骨隆々とした若者は私を固まってしまう。
ちなみにこの若者も大きな角が生えていた。漆黒の鋭く強靭そうな。
そして、その男は固まっている四人とは違って何処か嬉しそうな笑みを浮かべて口にした。
「我は魔王だ! よろしくなエリス!」
これが私とあいつ…………魔王との出会いだった。
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