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ダンジョン

楽園

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「ねぇ~魔王。私のスキルゴミだったのよ?」

 私がダンジョンに入ってから一週間が経った。
 ちなみにこの時の私も魔王という男を理解していなかった。

 巨大な屋敷に住む引きこもりと思っていたのだ。
 そして、その引きこもりの従者に四人のおっさんたち。
 カイセル。アギ。ハデス。バロン。魔王は四天王と呼んでいたので私は従者のすごい人たちだと考えていた。

 そのうちのカイセルに冒険者登録をしてみろと言われたのでしてきたというわけだ。
 ダンジョンに入るのに顔パスはダメだったらしい。
 身分証明書として冒険者カードは必要なようだ。

「どんなスキルだ?」

 魔王と私は一週間で距離が縮まっていた。
 まぁ魔王が親身になってくれていたからだろう。

 ちなみに家出は一日で終わった。
 この場を開放する代わりに家出はするなという魔王の提案だ。
 学園に通っていなかった私にとって日中は暇で暇で仕方がなかった。
 そんな時間をここで過ごせるとなると帰った方が得策だと考えたのだ。

 こうして今日もダンジョンの最奥である100層に足を運んでいた。

「【鉄鍋フライパン】。ただ、こうしてフライパンを出すだけよ」

 私は魔王にただのフライパンを見せた。
 そう。私に与えられた恩恵はただのフライ
 そこらに売っているただのフライパンを発現させることだった。

「あっはっは! なんだそのスキル! そんなスキルじゃ俺たちを殺せないぞ?」

 魔物を殺すのが冒険者。私はそう理解していた。
 そして、その魔物とやらを生んでいるのが魔王であるということも知っていた。
 しかし、脳内では魔王が作ったゲームのようにでも考えていたのだと思う。

「ねぇ! 魔王は強いんでしょ? なんか力くれない?」
「「「「……………………ぷっ! あっはっは!」」」」

 四天王はいつも私を見て笑っていた。
 常識がないとか何とか。
 まぁこの時の私には常識などどうでもよかったので気にしていなかったが。

「我に力をよこせと? 我を殺すための? あっはっは! やはりエリスは面白いな!」
 
 そう。この時の私は世間体など気にすることなく、笑って時間を過ごすことをできることが嬉しかったのだ。
 今までのように密閉された空間に閉じ込められることなくのびのびと生きることが出来る。
 
 私はこれからもこの時間を大切にしていきたいと思っていた。


 だから泣いた。だから悔やんだ。
 私に力がないことに…………
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