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7話 戦闘
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「い、いや。私はもうただの平民で……」
「俺が良いって言ってんだからいいんだよ。サーシャ。隣の部屋の結界張り直しとけ」
ギルマスはゆっくりと席から立ち上がり、屈伸などの準備運動を始めた。
しかし、サーシャと呼ばれた受付嬢は首を激しく横に振る。
「絶対に嫌です! 今ここで行ってください!」
「おいサーシャ。俺に指図すんな」
「……ッ! わ、分かりました」
猛烈に反対していたサーシャだがギルマスの一言でしおらしくなった。
殺気と言うのだろうか。確かに私の肌をピリつかせるものがあった。
サーシャは急ぎ足でこの場から去っていく。
その間に準備運動をしていたギルマスは私に手を差し出してくる。
「よし、お前のランク付けを担当してやるテスラだ。まぁ名前は覚えなくていいぞ。どうせすぐにお別れになるしな」
「エリスよ。まぁ王女の底力、見せつけてあげるわ」
私は浮き上がりそうになる血管を抑えようとぴくぴくさせながら頭を下げる。
最初から私の嫌いな雰囲気を漂わせていたが、やはり私とは相性が悪そうだ。
そんな私を見て更にテスラは口角を上げる。
「おぉ! やっぱり嬢ちゃんは面白れぇな! そこらの腐った豚どもとは違うわ」
「ぶ、豚ども……」
「お? キレるか? キレちゃうか?」
本当に何なのだろうか。このおっさんは。
見た目は貫禄のあるおじさんであったにもかかわらず、中身はガキか! とツッコみたくなる。
うん。私の大嫌いなタイプだ。
しかし、今の言葉には共感できるものがあった。
私は少し興奮気味にテスラに向かって答える。
「よく理解してるわね! やっぱり貴族どもは豚よ!」
「……ふぅん?」
そんな私の問題発言をテスラは軽くあしらった。
先ほどまであれほど煽ってきたに、今度はすぐに退く。
やはりこの男はそこらの人間と違って何も掴めない。
それは中身が子供だからか。それとも本当の大人だからなのか。
そんなやり取りをしていると結界を張り直していたサーシャがこの場に戻ってきた。
サーシャは深刻そうな表情でテスラに言い寄る。
「上級結界を張りました…………先に言っておきますギルマス。一人の少女の夢を奪わないでください」
「そんな俺に壊されるほどの夢なんて叶えられるわけねぇだろ。さっさとサーシャは回復魔導士の職員を呼んどけ」
しかし、テスラは先ほど同様に軽くあしらった。
だが、今回はどことなくサテラの言葉に信憑性がある。
まるで、そんな過去を自分が辿ってきたと言わんばかりに。
しかし、ここで私はあることに気づく。
「え? 回復魔導士?」
私はテスラと近くでランク付けををしている人たちに視線を移す。
回復魔導士が必要ということは回復魔法を行使するということ。それは怪我をするということになる。
そして、私が見る限り怪我をするような試験ではないはずだ。
そもそも、私自身も怪我をするほどの戦闘力を所持していない。
私がそんなことを考えているとテスラは隣の部屋に移動していく。
私もその後ろをついていくが、途中でテスラは止まり、ゆっくりと私の方を振り返って言ってきた。
「あぁ! 今から嬢ちゃんは俺に嬲られるんだ! 覚悟しとけよ?」
こうして私の初めての冒険が始まろうとしていたのだった。
「俺が良いって言ってんだからいいんだよ。サーシャ。隣の部屋の結界張り直しとけ」
ギルマスはゆっくりと席から立ち上がり、屈伸などの準備運動を始めた。
しかし、サーシャと呼ばれた受付嬢は首を激しく横に振る。
「絶対に嫌です! 今ここで行ってください!」
「おいサーシャ。俺に指図すんな」
「……ッ! わ、分かりました」
猛烈に反対していたサーシャだがギルマスの一言でしおらしくなった。
殺気と言うのだろうか。確かに私の肌をピリつかせるものがあった。
サーシャは急ぎ足でこの場から去っていく。
その間に準備運動をしていたギルマスは私に手を差し出してくる。
「よし、お前のランク付けを担当してやるテスラだ。まぁ名前は覚えなくていいぞ。どうせすぐにお別れになるしな」
「エリスよ。まぁ王女の底力、見せつけてあげるわ」
私は浮き上がりそうになる血管を抑えようとぴくぴくさせながら頭を下げる。
最初から私の嫌いな雰囲気を漂わせていたが、やはり私とは相性が悪そうだ。
そんな私を見て更にテスラは口角を上げる。
「おぉ! やっぱり嬢ちゃんは面白れぇな! そこらの腐った豚どもとは違うわ」
「ぶ、豚ども……」
「お? キレるか? キレちゃうか?」
本当に何なのだろうか。このおっさんは。
見た目は貫禄のあるおじさんであったにもかかわらず、中身はガキか! とツッコみたくなる。
うん。私の大嫌いなタイプだ。
しかし、今の言葉には共感できるものがあった。
私は少し興奮気味にテスラに向かって答える。
「よく理解してるわね! やっぱり貴族どもは豚よ!」
「……ふぅん?」
そんな私の問題発言をテスラは軽くあしらった。
先ほどまであれほど煽ってきたに、今度はすぐに退く。
やはりこの男はそこらの人間と違って何も掴めない。
それは中身が子供だからか。それとも本当の大人だからなのか。
そんなやり取りをしていると結界を張り直していたサーシャがこの場に戻ってきた。
サーシャは深刻そうな表情でテスラに言い寄る。
「上級結界を張りました…………先に言っておきますギルマス。一人の少女の夢を奪わないでください」
「そんな俺に壊されるほどの夢なんて叶えられるわけねぇだろ。さっさとサーシャは回復魔導士の職員を呼んどけ」
しかし、テスラは先ほど同様に軽くあしらった。
だが、今回はどことなくサテラの言葉に信憑性がある。
まるで、そんな過去を自分が辿ってきたと言わんばかりに。
しかし、ここで私はあることに気づく。
「え? 回復魔導士?」
私はテスラと近くでランク付けををしている人たちに視線を移す。
回復魔導士が必要ということは回復魔法を行使するということ。それは怪我をするということになる。
そして、私が見る限り怪我をするような試験ではないはずだ。
そもそも、私自身も怪我をするほどの戦闘力を所持していない。
私がそんなことを考えているとテスラは隣の部屋に移動していく。
私もその後ろをついていくが、途中でテスラは止まり、ゆっくりと私の方を振り返って言ってきた。
「あぁ! 今から嬢ちゃんは俺に嬲られるんだ! 覚悟しとけよ?」
こうして私の初めての冒険が始まろうとしていたのだった。
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