婚約破棄された第一王女～婚約者を奪ったくせに今頃、帰ってきてくれ？ ごめんなさい、魔王に溺愛されてるので難しそうです～

20話 ダンジョン

「はぁ……疲れたぁ」

　私はベッドに顔からダイブしてそんな言葉を漏らす。

　私が三人に感謝を伝えた後は、どことなくぎこちない会話になってしまった。
　まぁあの場で感謝を伝えないのもどうかと思うので私は後悔していない。

　そして、明日からの方針も決まり、お開きとなったわけだ。
　ちなみに今、私は冒険者ギルドの臨時用のベッドを使わせてもらっている。
　この部屋は何処の冒険者ギルドにも設置されており、残業が多い受付嬢を過労死させないためらしい。
　
　カーラ村ではそこまで残業というほど仕事もなく、今まで誰も使っていなかったので私が使ってもいいということになったのだ。
　この冒険者ギルドのマスターはテスラの後輩らしく、いろいろ待遇してもらえるとテスラは悪い笑みを浮かべていた。
　この部屋が使えているのもそれの一環である。

「ダンジョンねぇ……」

　私は今日の会話を思い出すように呟いた。

　明日から私たちはダンジョンという迷宮を探索するらしい。
　もちろん、村の外に出る魔物を倒して金を稼ぐという方法が一番安全的で主な冒険者の役目である。
　しかし、カーラ村の近くにはダンジョンというものが存在するのだ。

　ダンジョンとは世界に幾つもある道の工作物である。
　中には大量のトラップや魔物が住み着いているため、魔王が作ったのでは、そんな噂が今のところ一番可能性が高いようだ。
　ダンジョンは人を殺すために作られたような場所である。誰がそんな場所に行きたいと思うだろうか。

　しかし、人間は未知に惹かれるものだ。
　どのダンジョンも誰も完全攻略をしたことがないため、最奥には何が眠っているのか皆が知りたい。

　そして、最奥でなくても稀に遺物リークが見つかることがある。
　遺物リークとはその名の通り先人が使っていた魔道具だ。
　太古の時代に起きた『人魔世界大戦』の当時の遺物リークであればかなり殺傷力も高いので高額で売れる。

　そう。私たちは遺物リークを探すためにダンジョンに潜るのだ。

「【統率者リーダー】……私も強くならないと」

　私のスキルである【統率者リーダー】の効果は不明である。
　しかし、テスラの見解では仲間と認識したものが多ければ多いほど個人の能力を向上させ、仲間にも力を分け与える。そんな能力らしい。
　今の王族から追放された私にとっては天敵のようなスキルであるが、カスでないだけまだましというもの。

　今の私は最弱。今のままでは私の補助で二人の命を危険にさらしてしまうかもしれない。
　
　私は強くなりたい。
　
　私を捨てた奴らを見返すために。そして、テスラたちの恩に報いるために。

　そのために今の私に必要なことは経験である。
　知識を深め、才能を塗りつぶせるほどの経験が必要なのだ。

「そういえばサーシャって冒険はできるの？」

　サーシャは今日まで受付嬢をしていたのだ。
　確かにテスラは強い。勇者のスキルを獲得した少年に会わなければ最強だと錯覚していたレベルである。
　だが、もし未経験者二人を抱えてダンジョンを潜るとなるとテスラでも一筋縄ではいかないはずだ。

「まぁ明日は早いし今日はもう寝ようかしら」

　明日は私の人生の中で大きな第一歩になる。
　そんな高揚感に包まれながら私はゆっくりと目を閉じた。