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19話 これからについて
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あの後、私たちは奥の会議室へと移動した。
エルナは現在、仕事中だったはずなのだが、数十分は大丈夫だと言っていた。
もし、エルメス国で受付嬢が数十分も休憩をすれば仕事が山ほどたまり、残業地獄に追われるだろう。これに関しては辺境の特権と言ったところか。
待合室のソファに座った私とエルナを見てサーシャは聞いてくる。
「二人とも落ち着きましたか?」
「「落ち着くわけないでしょ!?」」
私とエルナは同時にそんな叫び声を出す。
「エルナならまだしも、何故エリス様まで驚いてらっしゃるのですか?」
まるで当たり前でしょ、とでも言いたげな表情でサーシャは聞いてくる。
それはテスラも思っていたのだろう。テスラもため息をつく。
「はぁ、どう見てもサーシャの美形は俺譲りだろ」
「そ、そうね」
「ん? なんだその間は? 今確かに間があったよな!?」
私の苦笑いに対し、テスラは涙目で聞き返してくる。
仕事中であったため仕方がないにせよ、親に様なんて使うとは誰も思うはずもない。
「私と父が王都で、エルナと母がこのカーラ村で働いていたんです」
「まぁ稼がないといけなかったからな。あいつは……」
テスラは今までとのふざけたような態度ではなく、父親としての態度で私にこの家庭についてを説明してくれた。
もともと四人はこのカーラ村に住んでいたという。
何事もなければこの辺境で幸せに生きていたはずだ。
しかし、サーシャが六歳、エルナが三歳の時。母が病で寝込んでしまった。
回復魔法でも治癒ができない、不治の病だったという。
そのため、最後の手段として多額の金額を支払って最高の回復魔導士である王宮魔導士を雇うことしたのだ。
もちろん、辺境で地道に働いたところでそんな多額の金を稼ぐことはできない。
そこでサーシャとテスラが王都の冒険者ギルドで働き、エルナが母の面倒を見ながら冒険者ギルドで働く。こうして、三人は金を稼いでいたのだ。
そして今に至る。
「そのお金は貯まったの?」
「いいや、三割程度だ。あのまま働いていたら十年後ぐらいには貯まってただろうな」
私の問いにテスラは苦笑いしながら首を横に振った。
そんな態度に私はソファから立ち上がりながら口にする。
「ならなんでギルマスを辞めたのよ! あのまま続けていれば……」
しかし、そんな私の言葉を遮るようにサーシャは説明を添えた。
「それはエリス様のためですよ」
「お、おいサーシャ! それは言うなって!」
テスラは恥ずかしがるように頬を紅潮させた。
しかし、私はその真意を理解することが出来ない。
「私のため? 意味が分からないのだけれど」
首を傾げた私を見てサーシャは微笑を浮かべながら告げた。
「父は貴方を救いたかったんですよ。あれでもツンデレなんです。王族から追放されてひとり身になったエリス様を保護するっていう理由がここに来た理由にも入っているんです」
「そんな、見ず知らずの私を保護するなんて……」
サーシャの言葉を私はにわかに信じることが出来なかった。
今の私には王族の権威も金もないただの平民だ。
私に優しくしたところでテスラたちには何の得もなく、逆に損しかない。
すると、羞恥で縮こまっていたテスラがまだ頬を赤くしながらも口にする。
「俺たちがいなかったら嬢ちゃんは確実に死んでたか、孤独に耐えられなくて自殺しただろうな」
「……ッ!?」
私はテスラの言葉に何も言い返すことが出来なかった。
自殺なんてするはずがない、それは今の状況だからこそ言えるのだ。
父に捨てられ、マルクに振られ、ミーナに裏切られた。
その状態で立ち上がれたのはやはり冒険者という道があったからだ。
そして、それを支えてくれるサーシャとテスラがいたから。
もし、二人と出会ったいなければ、もし、冒険者になると決めていなかったら。
私は……私はどうなっていたのだろう。
「本当に、本当にありがとうございました」
だから私はこの感謝の気持ちを表すように三人に頭を下げた。
そして、それと同時に私の生きる意味を見いだせた気がしたのだった。
サーシャの母を救う……そんな目標を。
エルナは現在、仕事中だったはずなのだが、数十分は大丈夫だと言っていた。
もし、エルメス国で受付嬢が数十分も休憩をすれば仕事が山ほどたまり、残業地獄に追われるだろう。これに関しては辺境の特権と言ったところか。
待合室のソファに座った私とエルナを見てサーシャは聞いてくる。
「二人とも落ち着きましたか?」
「「落ち着くわけないでしょ!?」」
私とエルナは同時にそんな叫び声を出す。
「エルナならまだしも、何故エリス様まで驚いてらっしゃるのですか?」
まるで当たり前でしょ、とでも言いたげな表情でサーシャは聞いてくる。
それはテスラも思っていたのだろう。テスラもため息をつく。
「はぁ、どう見てもサーシャの美形は俺譲りだろ」
「そ、そうね」
「ん? なんだその間は? 今確かに間があったよな!?」
私の苦笑いに対し、テスラは涙目で聞き返してくる。
仕事中であったため仕方がないにせよ、親に様なんて使うとは誰も思うはずもない。
「私と父が王都で、エルナと母がこのカーラ村で働いていたんです」
「まぁ稼がないといけなかったからな。あいつは……」
テスラは今までとのふざけたような態度ではなく、父親としての態度で私にこの家庭についてを説明してくれた。
もともと四人はこのカーラ村に住んでいたという。
何事もなければこの辺境で幸せに生きていたはずだ。
しかし、サーシャが六歳、エルナが三歳の時。母が病で寝込んでしまった。
回復魔法でも治癒ができない、不治の病だったという。
そのため、最後の手段として多額の金額を支払って最高の回復魔導士である王宮魔導士を雇うことしたのだ。
もちろん、辺境で地道に働いたところでそんな多額の金を稼ぐことはできない。
そこでサーシャとテスラが王都の冒険者ギルドで働き、エルナが母の面倒を見ながら冒険者ギルドで働く。こうして、三人は金を稼いでいたのだ。
そして今に至る。
「そのお金は貯まったの?」
「いいや、三割程度だ。あのまま働いていたら十年後ぐらいには貯まってただろうな」
私の問いにテスラは苦笑いしながら首を横に振った。
そんな態度に私はソファから立ち上がりながら口にする。
「ならなんでギルマスを辞めたのよ! あのまま続けていれば……」
しかし、そんな私の言葉を遮るようにサーシャは説明を添えた。
「それはエリス様のためですよ」
「お、おいサーシャ! それは言うなって!」
テスラは恥ずかしがるように頬を紅潮させた。
しかし、私はその真意を理解することが出来ない。
「私のため? 意味が分からないのだけれど」
首を傾げた私を見てサーシャは微笑を浮かべながら告げた。
「父は貴方を救いたかったんですよ。あれでもツンデレなんです。王族から追放されてひとり身になったエリス様を保護するっていう理由がここに来た理由にも入っているんです」
「そんな、見ず知らずの私を保護するなんて……」
サーシャの言葉を私はにわかに信じることが出来なかった。
今の私には王族の権威も金もないただの平民だ。
私に優しくしたところでテスラたちには何の得もなく、逆に損しかない。
すると、羞恥で縮こまっていたテスラがまだ頬を赤くしながらも口にする。
「俺たちがいなかったら嬢ちゃんは確実に死んでたか、孤独に耐えられなくて自殺しただろうな」
「……ッ!?」
私はテスラの言葉に何も言い返すことが出来なかった。
自殺なんてするはずがない、それは今の状況だからこそ言えるのだ。
父に捨てられ、マルクに振られ、ミーナに裏切られた。
その状態で立ち上がれたのはやはり冒険者という道があったからだ。
そして、それを支えてくれるサーシャとテスラがいたから。
もし、二人と出会ったいなければ、もし、冒険者になると決めていなかったら。
私は……私はどうなっていたのだろう。
「本当に、本当にありがとうございました」
だから私はこの感謝の気持ちを表すように三人に頭を下げた。
そして、それと同時に私の生きる意味を見いだせた気がしたのだった。
サーシャの母を救う……そんな目標を。
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