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26話 攻略
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私たちがカーラ村のダンジョンを攻略し始めて三週間ほどが経った。
「エリス! 右だ!」
「分かったわ……はああぁぁ!」
「サーシャ! やれ!」
「了解です! 【ファイアーボール】!」
『ギャアアアアアアァァァァ!』
私たちのダンジョン攻略は順調に進んでいた。
「いやぁ! がっぽりだなぁ!」
テスラは先ほど倒したゴブリンロードの死体を解体し、回収している。
実際、このダンジョンには遺物はなかった。あったのは魔物の群れだけである。
当初は悲しみに暮れたものの、日にちが経つにつれ、魔物倒しでも十分いけるのでは? という考え になり、今に至るというわけだ。
「しっかし、まさか嬢ちゃんがここまでやれるとはなぁ」
初めの頃と比べれば私たちの戦闘力は大幅に向上している。
特に私は呑み込みが早いらしく、すぐに戦闘に慣れることが出来た。
しかし、一番の理由は私のスキルである【統率者】であろう。
テスラ曰く、私がいるといないとでは何倍も効率が変わるそうだ。
また、私自身もレベルのように日々二人との絆が深まる分、戦闘力も向上している。
「そうですね! 最初はただの王族かと思っていましたが……これなら受付嬢を辞めてきて正解でした!」
サーシャは嬉しそうに口にする。
金銭感覚が異なる私にお金を持たせては、自分たちの貯金は一瞬で終わるとサーシャに言われ、見せてもらっていないが冒険業の方が何倍も稼げているようだ。
テスラは冒険業が危険を伴うためそこまで乗る気ではないものの、サーシャは心底嬉しそうだった。
ちなみにこのパーティーが上手くいっているのはサーシャの尽力も大きい。
サーシャは魔法で私たちを補助してくれるのだ。
それこそ、補助者は必要ないなどと聞いたことがあるが、そいつの目は節穴か? とでも言ってやりたい。
「今日はまだ攻略するのかしら?」
「いや、もう必要ないみたいだぞ」
「「必要ない?」」
予想もしなかった言葉に私とサーシャは首を傾げる。
するとテスラはゴブリンロードの後方、私たちの奥を指さした。
そこに視線を移すと特に何かある様子はない。
奥が見えないほど距離があり、一本道になっているだけである。
「サーシャ。地図を見せてくれ」
「分かりました」
テスラの言う通りサーシャは三週間で記し続けてきた地図魔法を行使する。
すると、
「あ、あれ? 埋まってる?」
「で、ですね……あとはこの道だけになってます」
なんと最初はほぼ全ての靄がかかっていた地図がこの前方の未知以外、鮮明に記されていたのだ。
残りの靄はこの直線状だけなのである。
「そう――あとここだけで最後なんだ」
「「…………」」
私とサーシャはその結果に息をのむ。
世界中に幾つもあるダンジョンがあるにもかかわらず、誰も攻略したことがないダンジョン。
私たちはそのダンジョンの根本を目の前にしているのだ。
「今日は帰るぞ。準備は万端にしておかないといけない」
テスラは本気でダンジョンを攻略するつもりらしい。
それは妻のためか。それとも自分の探求心を満たすためか。
だが、テスラもサーシャも私も、明日が待ち遠しいという答えは変わらない。
「分かりました!」
「さっさと帰って今日は晩餐を食べましょ!」
今の私には復讐心などという負の感情は持ち合わせていない。
あるのはこの毎日の充実感だけ。
この時が一生続いてほしいなと願いながら私は二人の背中を追ったのだった。
「エリス! 右だ!」
「分かったわ……はああぁぁ!」
「サーシャ! やれ!」
「了解です! 【ファイアーボール】!」
『ギャアアアアアアァァァァ!』
私たちのダンジョン攻略は順調に進んでいた。
「いやぁ! がっぽりだなぁ!」
テスラは先ほど倒したゴブリンロードの死体を解体し、回収している。
実際、このダンジョンには遺物はなかった。あったのは魔物の群れだけである。
当初は悲しみに暮れたものの、日にちが経つにつれ、魔物倒しでも十分いけるのでは? という考え になり、今に至るというわけだ。
「しっかし、まさか嬢ちゃんがここまでやれるとはなぁ」
初めの頃と比べれば私たちの戦闘力は大幅に向上している。
特に私は呑み込みが早いらしく、すぐに戦闘に慣れることが出来た。
しかし、一番の理由は私のスキルである【統率者】であろう。
テスラ曰く、私がいるといないとでは何倍も効率が変わるそうだ。
また、私自身もレベルのように日々二人との絆が深まる分、戦闘力も向上している。
「そうですね! 最初はただの王族かと思っていましたが……これなら受付嬢を辞めてきて正解でした!」
サーシャは嬉しそうに口にする。
金銭感覚が異なる私にお金を持たせては、自分たちの貯金は一瞬で終わるとサーシャに言われ、見せてもらっていないが冒険業の方が何倍も稼げているようだ。
テスラは冒険業が危険を伴うためそこまで乗る気ではないものの、サーシャは心底嬉しそうだった。
ちなみにこのパーティーが上手くいっているのはサーシャの尽力も大きい。
サーシャは魔法で私たちを補助してくれるのだ。
それこそ、補助者は必要ないなどと聞いたことがあるが、そいつの目は節穴か? とでも言ってやりたい。
「今日はまだ攻略するのかしら?」
「いや、もう必要ないみたいだぞ」
「「必要ない?」」
予想もしなかった言葉に私とサーシャは首を傾げる。
するとテスラはゴブリンロードの後方、私たちの奥を指さした。
そこに視線を移すと特に何かある様子はない。
奥が見えないほど距離があり、一本道になっているだけである。
「サーシャ。地図を見せてくれ」
「分かりました」
テスラの言う通りサーシャは三週間で記し続けてきた地図魔法を行使する。
すると、
「あ、あれ? 埋まってる?」
「で、ですね……あとはこの道だけになってます」
なんと最初はほぼ全ての靄がかかっていた地図がこの前方の未知以外、鮮明に記されていたのだ。
残りの靄はこの直線状だけなのである。
「そう――あとここだけで最後なんだ」
「「…………」」
私とサーシャはその結果に息をのむ。
世界中に幾つもあるダンジョンがあるにもかかわらず、誰も攻略したことがないダンジョン。
私たちはそのダンジョンの根本を目の前にしているのだ。
「今日は帰るぞ。準備は万端にしておかないといけない」
テスラは本気でダンジョンを攻略するつもりらしい。
それは妻のためか。それとも自分の探求心を満たすためか。
だが、テスラもサーシャも私も、明日が待ち遠しいという答えは変わらない。
「分かりました!」
「さっさと帰って今日は晩餐を食べましょ!」
今の私には復讐心などという負の感情は持ち合わせていない。
あるのはこの毎日の充実感だけ。
この時が一生続いてほしいなと願いながら私は二人の背中を追ったのだった。
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