ターンオーバー

TeX

文字の大きさ
上 下
33 / 48
その5

5−3

しおりを挟む
 つまり誰かとエッチしたくなると、その日の気分で四人の中から一人を選ぶんだって。それで呼ばれた男の人は必ず来てくれるとか。

「必ず来るなんて。洋子さん、凄いサービスしてあげてるんでしょ」

「シニアの連中はね、アソコだけ刺激してあげても駄目なのよ。真知子さんもわかってるんじゃない?あちこちを触ってあげるのよ。首でも太ももでも、とにかくいつもどこかをタッチしてあげるの。それで安心するのね。子どもみたいなもんよ」

「うらやましいです。私もそんな人、見つけなきゃ」

「あなたは美人だし、きだてって言うの?品がいいからきっと見つかるわよ。それで仕事はどう?みんなと仲良くやってる?」

「私には合ってるかな」

「それは良かった!あたしね、お母さんと暮らしてた頃の真知子さんて、世間知らずでコミュ症だって思ってたんだけど、ずいぶん変わったわねえ。あんなこともあって、あたしなりに反省してたんだけど、なんかホッとした」

「洋子さんが気にかけてくれたからです。洋子さんが会いに来てくれなかったら、今でも独りで家の中に籠っていると思います」

 ファミレスを出ると、それじゃまたメールするから!と言って洋子さんは帰っていった。
 むかし感じた、洋子さんへの淡い恋心は甦らなかった。あれは信夫さんとショウちゃんから、さんざん肉茄子の扱い方を勉強してた頃だったから、その裏返しで洋子さんの豊満な肉体を求めたのかも知れなかった。

 翌日は午後からの勤務。夕方まで一人で店番だ。
「 おはようございます」
 と顔を出すと、受付にいた二人はすでに私服に着替えて私が来るのを待ち構えていた。え?っと壁の時計を見るとまだ十分前。

「ごめん、森川さんが遅刻したんじゃないのよ。今日はこれから二人でご飯食べに行くの。予約してあるから、それじゃね!」
 バタバタと帰ってしまった。

 私はパーテーションの裏に隠れて制服に着替えようとシャツを脱いだ。そこに、
「毎度ぉ!」
 チャイムとともに男の声。

 顔を覗かせると沢田くんだ。仕上がり品の入ったカゴを抱えている。

「ご苦労さまです~。ごめんなさい、今来たばかりでまだ用意してないんです。ちょっと待っててください、すぐに用意しますね」
  私はそう言うと、ロッカーをガチャンと開けて、制服を取り出した。

「そう。今日は暇だから、ゆっくりやってくれていいですよ」

 沢田くんはカウンターのこちら側に入ってきたらしく、カゴを下ろす音が聞こえた。

 ふと気になって振り向くと、
「え?」
 身体を傾けて沢田くん、こっちを覗いているじゃないの!


しおりを挟む

処理中です...