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その5

5−4

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「森川さん、ブラしないんだ」

「こら、助平!あっち行って」

「さっき裸の背中がチラッと見えたんだよ。来て欲しいのかなって思ってさ。えへへ、ごめんな。でも俺、前から森川さんのこと、気になってたんだぜ」

「おばさんをからかうのはやめてね。工場の若い子と付き合ってるの、聞いてるわよ」

「あー?あいつとは別れたよ。やっぱ駄目だな。若い子は色っぽさがないんだ。いや、森川さんの背中、すっげぇセクシーじゃん」

「ホントに怒るわよ。あっち行かないと社長に言いつけるから」

「なんだよ、社長とデキてんのかよ」

 その時、店のドアが開いたらしく、チャイムが鳴った。沢田くんが店に顔を向けると、
「あ、社長・・・」

「んも~、馬鹿なことばっかし。お客さんでしょ」
 私はそう答えて、制服に乱れがないのを確かめてから表に顔を出した。

「おまたせしました!いらっしゃッ、あれ。社長さん?」

 社長の顔は面接の時しか見ていないけど、堂々としたその表情、それにその前で起立してる沢田くんの様子から、社長じゃないかと思ったのよ。

「君たち、今その裏で何をしてたんだ」
 社長は厳しい表情で私に言った。

「申しわけございません。ランドリーバックに添付する伝票を忘れてて、沢田さんにちょっとからかわれてたんです」
 私はそう嘘を付いた。本当のことを言うのは面倒臭いからね。

 社長はちらりとランドリーバッグを一瞥してから、次に沢田くんに顔を向けた。
「沢田、お前今度は歳上の女性を狙ってるのか」

「いやいや!そんなこと考えてもいないですって!」

「これ以上会社の女性スタッフに手を出したら辞めてもらうと言ったの、覚えてるよな!」

「はあ、すいません!」

 私は助け舟を出すことにした。
「社長、言い寄られたこととか、そんなのはないです。たまにエッチなこと言ってくるけど、私はそんなの気にする歳じゃありませんから」

 社長はうなずいて、ふたたび沢田さんをにらみつけた。
「沢田、森川さんに助けられたな。エッチなことを言うのもセクハラや。二度とするなよ」

「わかりました!それじゃ次がありますんで」

 沢田さんは社長に深々と頭を下げると集荷品のランドリーバッグを持って、そそくさと店を出ていった。

 私も社長に頭を下げた。
「 申し訳ございませんでした。私がボーッとしてたから、からかわれたんです」

「森川さん、いいんですか?あいつはセクハラの常習犯です。あいつのために優秀なスタッフをだいぶ失ってるんですから」

「今後注意いたします」

「そうですか。いや、今日は久しぶりにこの店の様子をと思ってね。森川さんとは面接以来でしたかね」


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