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その6

6−1

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 三日後。店でひとり留守番していると、入り口のチャイムが鳴って、
「おはようございますぅ~」
 沢田くんが私服姿でやってきた。

「あら、どうしたの?あ、今日は日曜でお休みなんですね」

 照れながら沢田くんは、うんとうなずいた。

「私一瞬、とうとうクビになったのかって思っちゃいましたよ」

「やめてください。あの日、帰り際にまた呼び出されて、こっぴどく絞られたんですからね。でもすいませんでした。覗きは駄目ですよね」

「あれ?今日はやけに神妙だね。まあいいや。背中だったからいいですけど、前向いてたら沢田くん、鼻血ブーだったわよ。若い子とはボリュームが違うんだからね」と笑って言った。

「そう返してくるのがおばさんのおおらかさだな~。でも森川さんが気になってたのはホントですから」

「おばさんをからかっちゃ駄目って言ったでしょ。あなたのお母さんと変わらないくらいなんだからね」

「うーん。でも現役っぽいんだなあ。独身でしょ?複数の恋人がいたりして」
 沢田くんは探るような目つきをして聞いてきた。ここは軽く受け流さなくちゃ。

「よく知ってるわね。私はカプセル怪獣、いっぱい持ってるのよ。知ってる?カプセル怪獣」

「ウルトラセブンか。子どもの頃見ましたよ。もちろん再放送だけど。それで男が欲しくなるとカプセルをひとつ放り投げるってこと?」

「そのつもりよ。今のところは持ってるだけですけどね」

「俺もカプセル怪獣になろうかな。森川さんの胸のポケットにでも入れてもらってさ」

「セクハラ!・・でもないか。ところで何しに来たんですか」

「誤りに来たんじゃないですか。すいませんでした!ってさっき言ったろ」

「あらそうだった?忘れちゃった」
 今日の沢田くんは本当に感じのいい青年でいてくれる。少しだけ見直したわ。

「それでね。言葉だけじゃなんだから、昼飯どうかと思って。一時までですよね」

「さすがね。そのくらい下準備とかして仕事したら、セクハラくらいで社長さんに怒られたりしないのに」

「今日はバシバシ来ますね。で、どう?OK?」

 こんな感じの沢田くんならいつまでもお喋りしていたい。そんな気になったのは休日独特ののんびりした街の空気が、入り口の向こうに流れているからかも知れない。

 店の駐車場じゃ交代スタッフに見られるかも、近くにある大型薬局の駐車場で待ってるから、と言って店を出ていった。


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