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その6

6−4

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 その日を含めて、沢田くんとは三日続けてくっつき合った。彼が身体を密着させると、私はいつも我を忘れたようになって、とろとろじんじん、とろけ落ちた。
 それでも私は沢田くんに恋心のような想いを抱くことはなかった。彼もまた、私を恋人のようには扱わなかった。
 それからひと月後、彼は社長の娘さんに手を出したことが発覚して本当にクビになったけれど、それは人づてに聞いたことで本人からは何の連絡もなかったし、特別なんの感情も沸かなかった。彼への想いなんてのより、彼以外の男性とはどうなんだろうというエゴスティックな妄想が先に立ってしまったわ。

 それにしても社長の娘とは。それって岡崎さんのお孫さんじゃないの。私は社長のお父さんと、沢田くんは社長の娘さんとオトナの関係になってるということか。人間て淫ら(みだら)だなあ、って他人事みたいに思っちゃ駄目ね。

 店の受付カウンターの前に座って暇に任せて出会い系アプリをインストールしていると、岡崎さんからメールが届いた。

 もう会わないと言ったのは私だけど、心のどこかで彼から返信が来るのを待っていたの。だってあの人こそ、私にとって特別な人のような気がするの。

 ・・・・・

 マキ様。
 時間がかかるとおっしゃるなら、僕はここで待ってます。僕には時間がたっぷりありますから。マキさんは僕の人生を豊かにしてくれる人です。あなたが仕事をしている時も、食事を摂っている時も、眠っている時も、僕はこの家であの日のマキさんを思い出しながら、時が満ちるのを待っています。

 ・・・・・

 七十ニ歳の男性からの熱いラブレターだ。何か返信しなくちゃ。でも沢田くんのことは書けない。とろとろじんじんを秘密にしたいんじゃないよ。万が一、集配スタッフだった沢田くんのことを知ってたなら、私も社員だってことがバレてしまう可能性があるからなのよ。

 そのうち書きたいことが出来るだろう。そう思って、私はメールアプリを閉じた。

 そうそう、と出会い系アプリ「ヴェラ・ドンナ」を開く。
 ビジネスを再開しようとしてるんじゃないの。今度はお客さん側になってみよう、と思ってのことね。

 お相手は男性。年齢は五十歳以上。大阪南部で絞り込んだけれど、それでも何十人もの顔写真がどどんと表示された。
 うーん。みな老けて疲れた顔ばかり。実際はもっと違ったイメージの人たちのような気がする。皆さん、もっとちゃんと写真を選ばなきゃ。加工するのもありだよ。男も女も見た目が九割らしいわよ。


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