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その6

6−5

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 夜になってサヤちゃんからラインが来た。



 斉藤寛治が逮捕されました。それと私は今週中にも退院です。

 私はすぐに返信する。

≫ 
 ワォ、良かったね。これで家に戻っても安心だね。ご両親がいいと言ってくれるなら、もう一度会いたいな。元気になったサヤちゃんに会いたいよ。


 私も会いたいです。斉藤寛治が捕まっても、私は世の中が怖いままです。学校にも行けないし、不安なことだらけ。


 そうだね、学校には行けないよね。そんなことも含めて、ご両親が考えてくださってるわよ。とにかく退院したら知らせてください。私でよければいくらでも相談に乗るからね。


 サヤちゃんのことを心配した十分後には「ヴェラ・ドンナ」で連絡を取り合っていた服田幸男と最終的に落ち合う時間と場所を確認していた。このあたりが長く生きた人間のたくましさというか、いい加減さというか。私も昔はこんなんじゃなかったんだけど。

 待ち合わせ場所は駅前のドトールコーヒー。私は先に店にいて、彼が来るのを密かに待つことにする。服田さんが想像通りの人だったら声をかけ、怖そうな感じだったら知らん顔して店を出る、そういう計画だ。

 さて、その日。
 ドトールの店内で、服田さんのルックスに合格点を付けた私は、テーブルから離れて彼に声をかけた。年齢は六十歳ちょうどだと聞いていたけれど、髪はふさふさだし、シミのない肌、輝く目、私より若いくらいよ。スタイルも悪くないわ。ふくよかだけど太り過ぎとまではいかない立派な体格だしね。
 お互い自己紹介すると、彼は早速ですがと前置きして、性癖とか性的嗜好を聞いておきたいのですが、と聞いてきた。

「性的嗜好。そうですね、ここでは言いにくいんですが、私はこの歳でやっと花が咲いたといいますか、その、喜びを知ったと言いますか、ですので特に変わったものはないと思いますけどね。服田さんは何かあるんですか?変態みたいなことが好きとか?」

「 いえ、そんなことはありません。でもひとつお願いがありましてね。私、野外の写真が好きなんですよ」

「はあ。でも私、撮られるのはちょっと」

「いえ、そちらさんを撮るつもりはありません。そのう、出来たらですね、私を撮って欲しいんです。野外で」

 そんなこと自己紹介に書いてなかったぞ!と私は思ったけれど、素知らぬ顔で、
「あのう、それは裸になってる感じですか?」と聞いた。

「もちろん!いや、そちらさんは着てて結構です。私が裸になりますから。それでね、出来たら拘束して欲しいんですよ、紐とか縄でね。そうそう、目隠しもしてください。それで、高速道路のガードレールに括り付けてもらって、そちらさんは向こう側のレーンからカメラをですね、そうだなあ、ズームしてもらおうかなあ」

 私は腰を上げると、そっとテーブルを離れた。


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