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その6
6−6
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最初の男選びは失敗に終わった。そうか、こういう世界って変態さんが混じってるのね。でもホテルに行く前に話してくれたのはありがとうって感じ。
スタートからつまずいてしまったけれど、気分を新たにヴェラ・ドンナを起動する。
出て来た男たちをブラウズしていると、サヤちゃんからラインが来た。
<
先日、退院しました。家でこれからのことを両親と話し合って、今月中にお婆ちゃんの住む鳥取県に引っ越しすることになりました。それで引っ越す前に一度、会えませんか。ちゃんとお礼も言ってないし、お話ししたいこともあるし。
≫
退院おめでとう。鳥取県ですか、遠いわね。でもこの町を離れるのはいいことだよ。私も会いたいです。いつでもいいですよ。よかったら家に来ない?古くて小さな府営住宅だけど、いくらでもお話しできるからね。
<
ありがとうございます。もしよかったら明日はどうですか?
≫
明日は一時まで仕事だから、二時過ぎならいつでも。
<
では二時に。
ということで翌日、昼に勤務が終わると、近くのケーキ店に寄ってから家に戻った。普段着に着替え、紅茶の用意をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
玄関を開けると、小さくて痩せた少女が立っていた。
「お久しぶりです。やっと退院しました」
そう言うと、手土産を差し出してきた。
「何よ、気にしなくてよかったのに。でも折角だからいただくわね、ありがとう。それより立っているサヤちゃんて、初めて見たわ。さあ、どうぞ入って」
サヤちゃんは私の後をついて、しなしなとキッチンまで来ると、私の引いた椅子にちょこんと座った。足音も座るときのノイズも私の耳には入らなかった。
私はお茶の用意をしながら、チラチラと彼女を見た。私の記憶の中のサヤちゃんよりずっと華奢で、色が透き通るくらい白くて、それに顔立ちの美しいこと、私の胸はドキドキと高鳴ったわ。
「どうぞ」私はお茶とケーキを出して、
「鳥取にお婆ちゃんがいるのね。ってことはお母さんの実家?」
「はい。倉吉市という町です。森川さんはここでお独り暮らしですか」
「そうよ。この間、母親が亡くなったの。十年以上働かなかったから、社会に出るのが怖くてね。で、生きてくためにエッチな仕事をしてたのよ。あんなことになって、もうやめたけどさ」
「でも結果としては、あそこにおばさんが来なかったら、私は今もあそこで奴隷のままだったと思います」
「奴隷だなんて自分から言っちゃ駄目よ」
「あの人たちが私を奴隷だって言うから・・・」
「あいつらを人間だと思うのも駄目。私たちはケダモノの罠に引っ掛かっちゃっただけ。でもふたりともケダモノから逃げることが出来たの。それでお仕舞い。ジ・エンド」
初めてサヤちゃんは微笑んだ。
ドキッ。あら~、なんて可愛いの。
スタートからつまずいてしまったけれど、気分を新たにヴェラ・ドンナを起動する。
出て来た男たちをブラウズしていると、サヤちゃんからラインが来た。
<
先日、退院しました。家でこれからのことを両親と話し合って、今月中にお婆ちゃんの住む鳥取県に引っ越しすることになりました。それで引っ越す前に一度、会えませんか。ちゃんとお礼も言ってないし、お話ししたいこともあるし。
≫
退院おめでとう。鳥取県ですか、遠いわね。でもこの町を離れるのはいいことだよ。私も会いたいです。いつでもいいですよ。よかったら家に来ない?古くて小さな府営住宅だけど、いくらでもお話しできるからね。
<
ありがとうございます。もしよかったら明日はどうですか?
≫
明日は一時まで仕事だから、二時過ぎならいつでも。
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では二時に。
ということで翌日、昼に勤務が終わると、近くのケーキ店に寄ってから家に戻った。普段着に着替え、紅茶の用意をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
玄関を開けると、小さくて痩せた少女が立っていた。
「お久しぶりです。やっと退院しました」
そう言うと、手土産を差し出してきた。
「何よ、気にしなくてよかったのに。でも折角だからいただくわね、ありがとう。それより立っているサヤちゃんて、初めて見たわ。さあ、どうぞ入って」
サヤちゃんは私の後をついて、しなしなとキッチンまで来ると、私の引いた椅子にちょこんと座った。足音も座るときのノイズも私の耳には入らなかった。
私はお茶の用意をしながら、チラチラと彼女を見た。私の記憶の中のサヤちゃんよりずっと華奢で、色が透き通るくらい白くて、それに顔立ちの美しいこと、私の胸はドキドキと高鳴ったわ。
「どうぞ」私はお茶とケーキを出して、
「鳥取にお婆ちゃんがいるのね。ってことはお母さんの実家?」
「はい。倉吉市という町です。森川さんはここでお独り暮らしですか」
「そうよ。この間、母親が亡くなったの。十年以上働かなかったから、社会に出るのが怖くてね。で、生きてくためにエッチな仕事をしてたのよ。あんなことになって、もうやめたけどさ」
「でも結果としては、あそこにおばさんが来なかったら、私は今もあそこで奴隷のままだったと思います」
「奴隷だなんて自分から言っちゃ駄目よ」
「あの人たちが私を奴隷だって言うから・・・」
「あいつらを人間だと思うのも駄目。私たちはケダモノの罠に引っ掛かっちゃっただけ。でもふたりともケダモノから逃げることが出来たの。それでお仕舞い。ジ・エンド」
初めてサヤちゃんは微笑んだ。
ドキッ。あら~、なんて可愛いの。
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