ターンオーバー

TeX

文字の大きさ
43 / 48
その6

6−6

しおりを挟む
 最初の男選びは失敗に終わった。そうか、こういう世界って変態さんが混じってるのね。でもホテルに行く前に話してくれたのはありがとうって感じ。

 スタートからつまずいてしまったけれど、気分を新たにヴェラ・ドンナを起動する。
 出て来た男たちをブラウズしていると、サヤちゃんからラインが来た。


 先日、退院しました。家でこれからのことを両親と話し合って、今月中にお婆ちゃんの住む鳥取県に引っ越しすることになりました。それで引っ越す前に一度、会えませんか。ちゃんとお礼も言ってないし、お話ししたいこともあるし。


 退院おめでとう。鳥取県ですか、遠いわね。でもこの町を離れるのはいいことだよ。私も会いたいです。いつでもいいですよ。よかったら家に来ない?古くて小さな府営住宅だけど、いくらでもお話しできるからね。


 ありがとうございます。もしよかったら明日はどうですか?


 明日は一時まで仕事だから、二時過ぎならいつでも。


 では二時に。


 ということで翌日、昼に勤務が終わると、近くのケーキ店に寄ってから家に戻った。普段着に着替え、紅茶の用意をしていると、玄関のチャイムが鳴った。

 玄関を開けると、小さくて痩せた少女が立っていた。
「お久しぶりです。やっと退院しました」
 そう言うと、手土産を差し出してきた。

「何よ、気にしなくてよかったのに。でも折角だからいただくわね、ありがとう。それより立っているサヤちゃんて、初めて見たわ。さあ、どうぞ入って」

 サヤちゃんは私の後をついて、しなしなとキッチンまで来ると、私の引いた椅子にちょこんと座った。足音も座るときのノイズも私の耳には入らなかった。

 私はお茶の用意をしながら、チラチラと彼女を見た。私の記憶の中のサヤちゃんよりずっと華奢で、色が透き通るくらい白くて、それに顔立ちの美しいこと、私の胸はドキドキと高鳴ったわ。

「どうぞ」私はお茶とケーキを出して、
「鳥取にお婆ちゃんがいるのね。ってことはお母さんの実家?」

「はい。倉吉市という町です。森川さんはここでお独り暮らしですか」

「そうよ。この間、母親が亡くなったの。十年以上働かなかったから、社会に出るのが怖くてね。で、生きてくためにエッチな仕事をしてたのよ。あんなことになって、もうやめたけどさ」

「でも結果としては、あそこにおばさんが来なかったら、私は今もあそこで奴隷のままだったと思います」

「奴隷だなんて自分から言っちゃ駄目よ」

「あの人たちが私を奴隷だって言うから・・・」

「あいつらを人間だと思うのも駄目。私たちはケダモノの罠に引っ掛かっちゃっただけ。でもふたりともケダモノから逃げることが出来たの。それでお仕舞い。ジ・エンド」

 初めてサヤちゃんは微笑んだ。
 ドキッ。あら~、なんて可愛いの。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...