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118話 それぞれのパワーアップ
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「さて、中々面白いものを見せてもらったが……儂にも隠し玉はあるのかの?」
他の三人のパワーアップを見て尚、飄々としているサラディンが傍らにしがみ付いているジハードに訊ねた。
「ん。ある事はある。でも、私とおじいちゃんの場合はこのまま手数で攻めた方が結果的に強いと思う」
そんなジハードの言葉を聞いて、まあ、そうじゃろうなとサラディンは納得する。
先の三人は、言うなればボクシングで言うファイタータイプ。正面から殴り合って敵を制する、所謂『強い』戦士達だ。だが自分は違う。そんな思いがある。
サラディン自身は自分を技巧派だと思っている。一撃の強さよりも手数を掛けて相手にダメージを蓄積させていくアウトボクサータイプ。そう考えれば、自分とジハードが融合して戦うよりも、ジハードの本体である魔女と六匹の魔犬、さらに自分が別々に行動した方が自分らしいと思えた。
「ただ、このまま上乗せ無しで戦うのは面白くない」
ジハードがそう言うと、六匹の内の一匹の犬が本来の姿である魔犬になった。仔犬サイズのそれは牛や馬に匹敵するほどの大きさになり、誰がどう見てももはや犬ではない。明らかに魔犬、いや、魔狼と言っていいかも知れない。
さらに魔狼と化したその一匹が、サラディンへとすり寄ってくる。すり寄ると言っても目線の高さはほぼ同じだ。
「ん~、なんじゃ、撫でて欲しいのか。主に似て甘えん坊じゃのう――ッ!?」
そう言いながら魔狼の頭に伸ばしたサラディンの手が、その艶やかな魔狼の体毛に触れた瞬間に魔狼の姿消えた。
「んほう!?」
そしてサラディンが驚きの声をあげる。自らの体内に恐ろしい程の力が入ってきたのだ。
(六匹の中のたった一匹でこれほどの……この娘、力の底が見えぬわい)
「では、私達も行きましょう、おじいさま?」
ふとジハードを見れば、上半身が美しい女性の姿、下半身は犬というスキュラの姿に変わっていた。しかし、以前のスキュラとはその姿にいくつもの相違点がある。
大人になった上半身の姿は、以前のような禍々しさは消えていた。あくまでも清楚で美しい。そして下半身に位置する犬達も、一匹数を減らしている事を除いても、かなり大型化している。さっきの魔狼のようにだ。
口調までもが淑女のようになっているジハードを見て、サラディンが目を細めた。
「ほっほっほ。随分と様変わりしたのぅ?」
「ええ、おじいさまと触れ合って浄化されましたの。その分力も強くなりましてよ?」
何をどう浄化したのか彼には全く心当たりがないが、ここに来てのパワーアップは願ってもない事である。サラディンはジハードに笑みを返すと、重力操作でふわりと空に舞い上がり、黒翼の天使を迎え撃った。
△▼△
司令塔の中から空を見ているナイチンゲールとアスキー、そしてアダムとエヴァ。
「どうやら一体はこちらで相手をせねばならないようですね。ふぁむちゃん、頼りにしていますよ?」
ナイチンゲールがふぁむちゃんにそう話しかけると、どんと胸を叩いて全力で任せろアピールをする。そして何事かパクパクと口を動かすと、対空兵器が起動し始めた。
「さて、マスター。我々もパワーアップするかね?☆」
前線での四人の姿を見ていたアスキーが、主であるナイチンゲールに伺いを立てた。
「その前に、どのようなメリットとデメリットがあるのか教えて下さいな」
確かにパワーアップは魅力的な話ではある。しかし自分達がアダムとエヴァを守る最後の砦である事を忘れてはいけないし、前線で戦う者達の為にも、自分が動けなくなる状況だけはなんとして避けなくてはならない。
ナイチンゲールに関しては、勝つことよりも生き残る事の方が重要なのだ。だからこそ、特にデメリットは確認しておかなければならない。
「ふむ、そうだね……」
アスキーが形のよい顎に手をやりながらしばし考えた。
「まずはメリットからだね☆」
そうしてアスキーがパワーアップのメリットを語り始めた。
そのパワーアップとは、アスキーがナイチンゲールの持つ杖そのものと融合する事で得られるという。今までは杖を依り代として存在していたアスキーが、杖そのもになる。その事により、杖を扱うナイチンゲールにアスキーの全ての能力が委ねられるという。
「身体能力も、知識も技術も、すべてマスターの物だ。そしてデメリットだが……」
やや間をおき、再びアスキーが口を開いた。
「私がこの姿でいられるのは今日で最後になるだろうね☆」
「な!?」
さすがのナイチンゲールもその発言には驚きを隠せない。
「私は杖そのものになるのだから、当たり前だろう? なに、この姿と二度と会えない他は、然したるデメリットはないよ☆」
徹底的に現実を見るならば、この申し出は絶対に受け入れるべきだ。死者蘇生すら可能だというアスキーの能力があれば、アダムエヴァを守り切る事が出来る。そしてアスキーが杖になってしまっても、自分の感情を別にすれば大きな問題でもない。
「……できません」
「ん? なんだって?」
「そんな事できません! パワーアップなど必要ないでしょう? その姿のまま、見事私の期待に応えなさい!」
涙を浮かべながらのナイチンゲールの訴えに、アスキーはやれやれと首を振る。
「なんて無茶を言うマスターだ。あの黒翼の天使がどれほどの強さか、実際その目で見たのだろう?」
「それでもです!」
そんなナイチンゲールの叫びは、アスキーのイケメンスマイルを険しくさせる。しかし、嬉しくもあった。なんとも甘い主人である。しかしこの甘い主人を失う訳にはいかない。
「よろしい。ではこのアスキー、マスターの為に全力を尽くしましょう」
胸に右手を当てながら、アスキーはナイチンゲールに向かって深く一礼した。
他の三人のパワーアップを見て尚、飄々としているサラディンが傍らにしがみ付いているジハードに訊ねた。
「ん。ある事はある。でも、私とおじいちゃんの場合はこのまま手数で攻めた方が結果的に強いと思う」
そんなジハードの言葉を聞いて、まあ、そうじゃろうなとサラディンは納得する。
先の三人は、言うなればボクシングで言うファイタータイプ。正面から殴り合って敵を制する、所謂『強い』戦士達だ。だが自分は違う。そんな思いがある。
サラディン自身は自分を技巧派だと思っている。一撃の強さよりも手数を掛けて相手にダメージを蓄積させていくアウトボクサータイプ。そう考えれば、自分とジハードが融合して戦うよりも、ジハードの本体である魔女と六匹の魔犬、さらに自分が別々に行動した方が自分らしいと思えた。
「ただ、このまま上乗せ無しで戦うのは面白くない」
ジハードがそう言うと、六匹の内の一匹の犬が本来の姿である魔犬になった。仔犬サイズのそれは牛や馬に匹敵するほどの大きさになり、誰がどう見てももはや犬ではない。明らかに魔犬、いや、魔狼と言っていいかも知れない。
さらに魔狼と化したその一匹が、サラディンへとすり寄ってくる。すり寄ると言っても目線の高さはほぼ同じだ。
「ん~、なんじゃ、撫でて欲しいのか。主に似て甘えん坊じゃのう――ッ!?」
そう言いながら魔狼の頭に伸ばしたサラディンの手が、その艶やかな魔狼の体毛に触れた瞬間に魔狼の姿消えた。
「んほう!?」
そしてサラディンが驚きの声をあげる。自らの体内に恐ろしい程の力が入ってきたのだ。
(六匹の中のたった一匹でこれほどの……この娘、力の底が見えぬわい)
「では、私達も行きましょう、おじいさま?」
ふとジハードを見れば、上半身が美しい女性の姿、下半身は犬というスキュラの姿に変わっていた。しかし、以前のスキュラとはその姿にいくつもの相違点がある。
大人になった上半身の姿は、以前のような禍々しさは消えていた。あくまでも清楚で美しい。そして下半身に位置する犬達も、一匹数を減らしている事を除いても、かなり大型化している。さっきの魔狼のようにだ。
口調までもが淑女のようになっているジハードを見て、サラディンが目を細めた。
「ほっほっほ。随分と様変わりしたのぅ?」
「ええ、おじいさまと触れ合って浄化されましたの。その分力も強くなりましてよ?」
何をどう浄化したのか彼には全く心当たりがないが、ここに来てのパワーアップは願ってもない事である。サラディンはジハードに笑みを返すと、重力操作でふわりと空に舞い上がり、黒翼の天使を迎え撃った。
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司令塔の中から空を見ているナイチンゲールとアスキー、そしてアダムとエヴァ。
「どうやら一体はこちらで相手をせねばならないようですね。ふぁむちゃん、頼りにしていますよ?」
ナイチンゲールがふぁむちゃんにそう話しかけると、どんと胸を叩いて全力で任せろアピールをする。そして何事かパクパクと口を動かすと、対空兵器が起動し始めた。
「さて、マスター。我々もパワーアップするかね?☆」
前線での四人の姿を見ていたアスキーが、主であるナイチンゲールに伺いを立てた。
「その前に、どのようなメリットとデメリットがあるのか教えて下さいな」
確かにパワーアップは魅力的な話ではある。しかし自分達がアダムとエヴァを守る最後の砦である事を忘れてはいけないし、前線で戦う者達の為にも、自分が動けなくなる状況だけはなんとして避けなくてはならない。
ナイチンゲールに関しては、勝つことよりも生き残る事の方が重要なのだ。だからこそ、特にデメリットは確認しておかなければならない。
「ふむ、そうだね……」
アスキーが形のよい顎に手をやりながらしばし考えた。
「まずはメリットからだね☆」
そうしてアスキーがパワーアップのメリットを語り始めた。
そのパワーアップとは、アスキーがナイチンゲールの持つ杖そのものと融合する事で得られるという。今までは杖を依り代として存在していたアスキーが、杖そのもになる。その事により、杖を扱うナイチンゲールにアスキーの全ての能力が委ねられるという。
「身体能力も、知識も技術も、すべてマスターの物だ。そしてデメリットだが……」
やや間をおき、再びアスキーが口を開いた。
「私がこの姿でいられるのは今日で最後になるだろうね☆」
「な!?」
さすがのナイチンゲールもその発言には驚きを隠せない。
「私は杖そのものになるのだから、当たり前だろう? なに、この姿と二度と会えない他は、然したるデメリットはないよ☆」
徹底的に現実を見るならば、この申し出は絶対に受け入れるべきだ。死者蘇生すら可能だというアスキーの能力があれば、アダムエヴァを守り切る事が出来る。そしてアスキーが杖になってしまっても、自分の感情を別にすれば大きな問題でもない。
「……できません」
「ん? なんだって?」
「そんな事できません! パワーアップなど必要ないでしょう? その姿のまま、見事私の期待に応えなさい!」
涙を浮かべながらのナイチンゲールの訴えに、アスキーはやれやれと首を振る。
「なんて無茶を言うマスターだ。あの黒翼の天使がどれほどの強さか、実際その目で見たのだろう?」
「それでもです!」
そんなナイチンゲールの叫びは、アスキーのイケメンスマイルを険しくさせる。しかし、嬉しくもあった。なんとも甘い主人である。しかしこの甘い主人を失う訳にはいかない。
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