神様に妻子の魂を人質に取られたおっさんは、地球の未来の為に並行世界を救う。

SHO

文字の大きさ
121 / 151
????

118話 それぞれのパワーアップ

しおりを挟む
「さて、中々面白いものを見せてもらったが……儂にも隠し玉はあるのかの?」

 他の三人のパワーアップを見て尚、飄々としているサラディンが傍らにしがみ付いているジハードに訊ねた。

「ん。ある事はある。でも、私とおじいちゃんの場合はこのまま手数で攻めた方が結果的に強いと思う」

 そんなジハードの言葉を聞いて、まあ、そうじゃろうなとサラディンは納得する。
 先の三人は、言うなればボクシングで言うファイタータイプ。正面から殴り合って敵を制する、所謂『強い』戦士達だ。だが自分は違う。そんな思いがある。
 サラディン自身は自分を技巧派だと思っている。一撃の強さよりも手数を掛けて相手にダメージを蓄積させていくアウトボクサータイプ。そう考えれば、自分とジハードが融合して戦うよりも、ジハードの本体である魔女と六匹の魔犬、さらに自分が別々に行動した方が自分らしいと思えた。

「ただ、このまま上乗せ無しで戦うのは面白くない」

 ジハードがそう言うと、六匹の内の一匹の犬が本来の姿である魔犬になった。仔犬サイズのそれは牛や馬に匹敵するほどの大きさになり、誰がどう見てももはや犬ではない。明らかに魔犬、いや、魔狼と言っていいかも知れない。
 さらに魔狼と化したその一匹が、サラディンへとすり寄ってくる。すり寄ると言っても目線の高さはほぼ同じだ。

「ん~、なんじゃ、撫でて欲しいのか。主に似て甘えん坊じゃのう――ッ!?」

 そう言いながら魔狼の頭に伸ばしたサラディンの手が、その艶やかな魔狼の体毛に触れた瞬間に魔狼の姿消えた。

「んほう!?」

 そしてサラディンが驚きの声をあげる。自らの体内に恐ろしい程のが入ってきたのだ。

(六匹の中のたった一匹でこれほどの……この娘、力の底が見えぬわい)

「では、私達も行きましょう、おじいさま?」

 ふとジハードを見れば、上半身が美しい女性の姿、下半身は犬というスキュラの姿に変わっていた。しかし、以前のスキュラとはその姿にいくつもの相違点がある。
 大人になった上半身の姿は、以前のような禍々しさは消えていた。あくまでも清楚で美しい。そして下半身に位置する犬達も、一匹数を減らしている事を除いても、かなり大型化している。さっきの魔狼のようにだ。
 口調までもが淑女のようになっているジハードを見て、サラディンが目を細めた。

「ほっほっほ。随分と様変わりしたのぅ?」
「ええ、おじいさまと触れ合って浄化されましたの。その分力も強くなりましてよ?」

 何をどう浄化したのか彼には全く心当たりがないが、ここに来てのパワーアップは願ってもない事である。サラディンはジハードに笑みを返すと、重力操作でふわりと空に舞い上がり、黒翼の天使を迎え撃った。

△▼△

 司令塔の中から空を見ているナイチンゲールとアスキー、そしてアダムとエヴァ。

「どうやら一体はこちらで相手をせねばならないようですね。ふぁむちゃん、頼りにしていますよ?」

 ナイチンゲールがふぁむちゃんにそう話しかけると、どんと胸を叩いて全力で任せろアピールをする。そして何事かパクパクと口を動かすと、対空兵器が起動し始めた。

「さて、マスター。我々もパワーアップするかね?キラーン

 前線での四人の姿を見ていたアスキーが、主であるナイチンゲールに伺いを立てた。

「その前に、どのようなメリットとデメリットがあるのか教えて下さいな」 

 確かにパワーアップは魅力的な話ではある。しかし自分達がアダムとエヴァを守る最後の砦である事を忘れてはいけないし、前線で戦う者達の為にも、自分が動けなくなる状況だけはなんとして避けなくてはならない。
 ナイチンゲールに関しては、勝つことよりも生き残る事の方が重要なのだ。だからこそ、特にデメリットは確認しておかなければならない。

「ふむ、そうだね……」

 アスキーが形のよい顎に手をやりながらしばし考えた。

「まずはメリットからだねキラーン

 そうしてアスキーがパワーアップのメリットを語り始めた。
 そのパワーアップとは、アスキーがナイチンゲールの持つ杖そのものと融合する事で得られるという。今までは杖を依り代として存在していたアスキーが、杖そのもになる。その事により、杖を扱うナイチンゲールにアスキーの全ての能力が委ねられるという。

「身体能力も、知識も技術も、すべてマスターの物だ。そしてデメリットだが……」

 やや間をおき、再びアスキーが口を開いた。

「私がこの姿でいられるのは今日で最後になるだろうねキラーン
「な!?」

 さすがのナイチンゲールもその発言には驚きを隠せない。

「私は杖そのものになるのだから、当たり前だろう? なに、この姿と二度と会えない他は、然したるデメリットはないよキラーン

 徹底的に現実を見るならば、この申し出は絶対に受け入れるべきだ。死者蘇生すら可能だというアスキーの能力があれば、アダムエヴァを守り切る事が出来る。そしてアスキーが杖になってしまっても、自分の感情を別にすれば大きな問題でもない。

「……できません」
「ん? なんだって?」
「そんな事できません! パワーアップなど必要ないでしょう? その姿のまま、見事私の期待に応えなさい!」

 涙を浮かべながらのナイチンゲールの訴えに、アスキーはやれやれと首を振る。

「なんて無茶を言うマスターだ。あの黒翼の天使がどれほどの強さか、実際その目で見たのだろう?」
「それでもです!」

 そんなナイチンゲールの叫びは、アスキーのイケメンスマイルを険しくさせる。しかし、嬉しくもあった。なんとも甘い主人である。しかしこの甘い主人を失う訳にはいかない。

「よろしい。ではこのアスキー、マスターの為に全力を尽くしましょう」

 胸に右手を当てながら、アスキーはナイチンゲールに向かって深く一礼した。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。 この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。 ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。 少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。 更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。 そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。 少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。 どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。 少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。 冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。 すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く… 果たして、その可能性とは⁉ HOTランキングは、最高は2位でした。 皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°. でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )

処理中です...