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第一部 オーシュー王国編 2章
174.押しつぶされそうな者と支えようとする者
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「セリカは自分も、自分と共に戦ってきた仲間も信じられないのか?」
俺は少し辛辣な言葉を投げかけた。正直、セリカがこんな調子では困る。俺達が政治顧問みたいな真似事をしなくちゃならない未来はちょっと想像したくないもんな。
「……そうですね。なぜでしょう?カズトが居なくなる事を考えると、まるで自分1人取り残された気持ちになるのです。こんな事ではいけませんね。」
「正直、今まで引っ張って来てくれたカズ君が居なくなるのはすごく心細いです。でも確かに私達は1人じゃないですもんね!」
「そうだな!私達にはカズさんが与えてくれた強さがある。いざとなれば腕力で…」
「マスター抜きでダンジョンに入りレベリングした時の事を思えば…」
サニーもグロリアもソアラも自らを奮い立たせるように拳を握る。
「そうそう、その意気だよ、みんな!」
(大丈夫、バンドーで悪い虫が付かないようにちゃんとガードするから!出来るだけ!)
(ちょっと!ライム!出来るだけってなんですか!?)
(そうですよ!そこはちゃんとして貰わないと!)
(だってカズにぃかっこいいでしょ?完全にガード出来るかどうかは…)
(むぅ…確かに… しかもカズさんは無自覚で美少女助けたりするし…)
(そうなんですよ。下手に下心が無いのが分かるので心を許しちゃうんですよね!)
【本人は100%善意で助けてますからね。見返りを期待せず。それであの見た目ですから好きになっても仕方ありませんね。】
【やはりサンタナもそう思うか!?マイ・マスターは敵であっても懐に入れる器の大きさもあるからのう。そこも魅力なのじゃ。】
【カズト様は…動物に優しいのですわ…】
なんか女子がコソコソ話してる所に眷属まで参加して何を話してるんだろう?
(なんだか長くなりそうだから外の空気でも吸ってくるか。)
街に出て通りを歩く。ここに来た時はランの鞍上だったので人の目線でこの街を見るのは新鮮だ。
屋台で飲み物や軽食を買いその辺の木陰に腰かけ街の様子を眺めている。夕暮れ時で人通りは多い。夕飯の食材の買い出しか。それとも仕事帰りか。行きかう人々の中で小さな子供達が元気に走り回っている。身なりは決して良くはない。でも笑顔は輝いている。
「黒いおにいちゃん!おにいちゃんってあの頭に黒猫乗せた竜を連れてたおにいちゃん?」
その子供達の中の1人が俺を見つけて話し掛けて来た。
「ああ。そうだよ。あの竜の名前は『スタリオン』って言うんだ。かっこよかっただろ?」
「うん!それから今日はもっと大きい竜もふたつ増えてたね!あれはとうちゃんとかあちゃんなの?」
「そうだな。とうちゃんは『リクオウ』、かあちゃんは『デボネア』って言うんだ。あの竜の家族はこれからこの国を守ってくれるんだぜ?」
「へえぇぇぇ…」
子供達の眼はキラキラ輝いている。
「でもな、なんでもかんでも竜の親子に助けて貰っちゃダメだ。大事なものは自分で守らなくちゃな!」
「うん!女王さまが来る前はね、こわい貴族のおじさんがひどい事してたんだ。でも女王さまがこわい貴族のおじさんを追い払ってくれたんでしょ?だから今度はぼくたちが女王さまを守るんだ!なあ、みんな!」
「おおー!」
この子供達の言葉を聞けばセリカ達も勇気付けられるだろうな。戻ったら教えてやるか。
あ、そうだ。
「なあ、お前ら。明日の朝、城門まで来れるか?近くで竜の親子見せてやるよ。」
「ほんと!?やったー!!!ぜったいだよ!?」
「ああ。約束だ。ほら、家に帰ってとうちゃんとかあちゃんにちゃんと言っとけ。」
「うわぁーい!じゃあおにいちゃん、またあしたねー!」
子供達は手を振りながら元気に駆けて行った。
「まったく…これから国を動かしていく大人たちより子供の方がしっかりしてるし。セリカに喝入れてやらねえとだな。」
のんびりと歩きながら城まで戻るとみんなが城門で待っていた。
「もう、どこに行ってたのさ。」
「ああ、ちょっとこの国の希望と触れ合って来た。」
「はぁ?なにそれ?」
「まあ、中に入ろうぜ?飯でも食いながら聞かせてやるから。」
「そうですか…。子供達がそんな事を…」
「年端もいかないガキんちょがお前を守るんだってな。」
街中での一連の出来事をセリカ達に話して聞かせた。
「これは…随分と情けない…。申し訳ありませんでした。争乱が一段落して少々腑抜けていたようですね。」
パアン!と両手で自分の頬を張り気合を入れ直すかの様なセリカ。
「これから先は下を向くのはやめました。前だけ見て進みます。皆さん、私に力を貸して下さい。」
サニー達側近に向けてセリカが頭を下げる。
これでセリカ達は大丈夫だろ。改めて絆を深める主従の姿に目を細める俺とライムだった。
俺は少し辛辣な言葉を投げかけた。正直、セリカがこんな調子では困る。俺達が政治顧問みたいな真似事をしなくちゃならない未来はちょっと想像したくないもんな。
「……そうですね。なぜでしょう?カズトが居なくなる事を考えると、まるで自分1人取り残された気持ちになるのです。こんな事ではいけませんね。」
「正直、今まで引っ張って来てくれたカズ君が居なくなるのはすごく心細いです。でも確かに私達は1人じゃないですもんね!」
「そうだな!私達にはカズさんが与えてくれた強さがある。いざとなれば腕力で…」
「マスター抜きでダンジョンに入りレベリングした時の事を思えば…」
サニーもグロリアもソアラも自らを奮い立たせるように拳を握る。
「そうそう、その意気だよ、みんな!」
(大丈夫、バンドーで悪い虫が付かないようにちゃんとガードするから!出来るだけ!)
(ちょっと!ライム!出来るだけってなんですか!?)
(そうですよ!そこはちゃんとして貰わないと!)
(だってカズにぃかっこいいでしょ?完全にガード出来るかどうかは…)
(むぅ…確かに… しかもカズさんは無自覚で美少女助けたりするし…)
(そうなんですよ。下手に下心が無いのが分かるので心を許しちゃうんですよね!)
【本人は100%善意で助けてますからね。見返りを期待せず。それであの見た目ですから好きになっても仕方ありませんね。】
【やはりサンタナもそう思うか!?マイ・マスターは敵であっても懐に入れる器の大きさもあるからのう。そこも魅力なのじゃ。】
【カズト様は…動物に優しいのですわ…】
なんか女子がコソコソ話してる所に眷属まで参加して何を話してるんだろう?
(なんだか長くなりそうだから外の空気でも吸ってくるか。)
街に出て通りを歩く。ここに来た時はランの鞍上だったので人の目線でこの街を見るのは新鮮だ。
屋台で飲み物や軽食を買いその辺の木陰に腰かけ街の様子を眺めている。夕暮れ時で人通りは多い。夕飯の食材の買い出しか。それとも仕事帰りか。行きかう人々の中で小さな子供達が元気に走り回っている。身なりは決して良くはない。でも笑顔は輝いている。
「黒いおにいちゃん!おにいちゃんってあの頭に黒猫乗せた竜を連れてたおにいちゃん?」
その子供達の中の1人が俺を見つけて話し掛けて来た。
「ああ。そうだよ。あの竜の名前は『スタリオン』って言うんだ。かっこよかっただろ?」
「うん!それから今日はもっと大きい竜もふたつ増えてたね!あれはとうちゃんとかあちゃんなの?」
「そうだな。とうちゃんは『リクオウ』、かあちゃんは『デボネア』って言うんだ。あの竜の家族はこれからこの国を守ってくれるんだぜ?」
「へえぇぇぇ…」
子供達の眼はキラキラ輝いている。
「でもな、なんでもかんでも竜の親子に助けて貰っちゃダメだ。大事なものは自分で守らなくちゃな!」
「うん!女王さまが来る前はね、こわい貴族のおじさんがひどい事してたんだ。でも女王さまがこわい貴族のおじさんを追い払ってくれたんでしょ?だから今度はぼくたちが女王さまを守るんだ!なあ、みんな!」
「おおー!」
この子供達の言葉を聞けばセリカ達も勇気付けられるだろうな。戻ったら教えてやるか。
あ、そうだ。
「なあ、お前ら。明日の朝、城門まで来れるか?近くで竜の親子見せてやるよ。」
「ほんと!?やったー!!!ぜったいだよ!?」
「ああ。約束だ。ほら、家に帰ってとうちゃんとかあちゃんにちゃんと言っとけ。」
「うわぁーい!じゃあおにいちゃん、またあしたねー!」
子供達は手を振りながら元気に駆けて行った。
「まったく…これから国を動かしていく大人たちより子供の方がしっかりしてるし。セリカに喝入れてやらねえとだな。」
のんびりと歩きながら城まで戻るとみんなが城門で待っていた。
「もう、どこに行ってたのさ。」
「ああ、ちょっとこの国の希望と触れ合って来た。」
「はぁ?なにそれ?」
「まあ、中に入ろうぜ?飯でも食いながら聞かせてやるから。」
「そうですか…。子供達がそんな事を…」
「年端もいかないガキんちょがお前を守るんだってな。」
街中での一連の出来事をセリカ達に話して聞かせた。
「これは…随分と情けない…。申し訳ありませんでした。争乱が一段落して少々腑抜けていたようですね。」
パアン!と両手で自分の頬を張り気合を入れ直すかの様なセリカ。
「これから先は下を向くのはやめました。前だけ見て進みます。皆さん、私に力を貸して下さい。」
サニー達側近に向けてセリカが頭を下げる。
これでセリカ達は大丈夫だろ。改めて絆を深める主従の姿に目を細める俺とライムだった。
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